手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

如月勇十

第三十七話 栄一の意思

 ——一つ。
 3つの火炎球が螺旋を描き一直線に進む。着弾と同時に炎の勢いがまして、周りの人間共々、その体を覆い隠す。


 ——二つ。
 指輪が体に触れた瞬間、まるで氷が溶ける現象の高速逆再生を見ているかのようなスピードで、その体を凍らせる。


 ——三つ。
 指輪に当たってしまった人間が、まるで自らが求めるように、味方であるはずの人間に吸い寄せられるような動作で突進し、そのまま、その人間を押しつぶす。そして、二人で一つとなったそれは、次の肉体を求めて再び動き出す。


 ——四つ。
 火炎弾の要領で飛来した指輪が、ターゲットへの着弾の刹那手前で、重力魔法によって同時に全方向に引力をかけられ、そして破裂する。


 ——五つ。
 指輪から伸びた雷光がターゲットの体を貫き、永続的に高圧な電流を流し続けることで、体を焼き焦がす。


 ——六つ。
 指輪によって出現した刃物のような四つの金属板が、縦横無尽に飛び回り、ターゲットの体を切り刻む。


 ——七つ。
 気配隠蔽魔法による光の操作を応用して生み出された高密度の光線を持って、ターゲットを炎上させる。


 ——八つ。
 指輪に触れたターゲットの中心より半径1メートルを球体の水で満たす。重力操作によって自力で脱出することは不可能。


 これら八つの魔法を持って、後続の連中を含め、19人を俺は一瞬で始末した。
 その場に残るのは、燃える死体や凍った死体。二人の人間が文字通り、無理やり合わさったもの・・・・・・・や、身体中から血を噴き出しているものなんてのもいる。だが、これらはまだ原型がわかるだけましで、塵と化したものや、体がバラバラになっているものまであった。


 それらは言うまでもなく、かなりグロテスクなわけだが、幸いなことに、中学生のとある時期には毎日、暇さえあればそういった画像や動画をネットで漁っていたものだから、今となっては大して何も感じない。まぁ、あの時は病んでいたからな……。
 そして、人を殺すということに関しても、アミラが帝国のスパイを殺した時には動揺してしまったが、今では、それは生き残るためには必要なことで、こっちがやらなければ逆に殺されてしまうということもわかっている。
 ここはそういう世界なのだ。


 だがしかし、いや、だからこそ、俺は『殺し』を〝ゲームや遊び〟ではなく、〝人から全てを奪うこと〟と認識している。きっとゲーム感覚で人を殺せば、そいつの人生や残されたもののことなんかに気を使わなくて済むし、楽なんだろうが、ここ——俺が今生きているこの世界——は紛れも無い現実なので、俺はそれらに真っ正面から向き合っていくことにした。
 なぜならば——


「——勝手に抜け駆けしてんじゃ無いわよ! 私の魔力のことも考えてよね! 全くもう」


 なぜならば、俺はこの先、アミラの仲間として共に戦うためには、『殺し』は必要なことだと判断したからだ。


 あの夜、俺がアミラの過去を知ったあの時に、俺は誓った。
 俺がアミラを守ると。


 普段は強がって、ほとんど弱みを見せない彼女が唯一、俺に見せた弱みなみだが俺は忘れられないでいる。
 それは、普段とのギャップ故ではなく、単純にアミラを守りたいという気持ちもあるが、きっとどこかでアミラの境遇に共感している自分がいたからなんじゃ無いかと考えた。
 アミラほど悲惨では無いが、俺も友達は少なかったし、親も俺のことは放任状態。本当に心から頼れる人がいなかったのだ。
 だが、今の俺には、出会ったばかりだがアミラもいるし、ヤユにフィオーネだっているわけで、アミラにも同じく、頼って欲しい。
 そう、これは全て俺のわがままで欲望でしかないが、アミラのためになると信じているし、俺はそうしたいのだ。


 ……幼少期から人殺しをせざるを得ない状況にずっと一人でいたアミラに、せめて俺だけでも、俺だけが、アミラを守ってやりたい。
 今の俺は、そう思っている。




「ば、化け物だ!!」「ひぇええ!」


 後から追いついてきた戦闘員ら約十名は、戦前じごくへと一歩踏み入れることすらせず、ある者は尻餅をつき、ある者は屈強な男らしからぬ悲鳴をあげ、その場を離脱しようと試みた。


「今度は私に任せなさいよ! それと、これが終わったら、転移の使用について話があるから。あんただけに良い思いはさせないわ」
「えええ。アミラだってやろうと思えばやれるじゃねーか」
「あんたが先駆けしてきたら追いつけないでしょう?!」


 俺の愚痴に、今にでも針を飛ばそうとしていたアミラが動きを止めて俺のほうに振り向いて来た。
 早くしないと敵が逃げて行くというのに。


「じゃあ、先に行きたいなら勝手にやればいいだろ?」
「何それ!? あんた、本当に紳士とは真逆の生き物よね! ほら、あんたが無駄口叩いてる間に逃げられちゃったじゃない!」
「俺のせいかよ……」
「あんたのせいよ!」


 ここまで責任転換してくるとは、もはや清々しいくらいだな。
 全く、俺だってまだ魔法の実験が終わってないというのに。さっきの魔法だって、レーザービームの出力を調整して、もっと有効範囲を広げたり——って、こいつは?


「おうおうおう! てめぇら、面白いマネしてくれんじゃねーか!」


「栄一!」
「あぁ」


 全員逃げたと思っていたが、どうやら話に夢中になって、1人見逃していたらしい。
 ……いや、違う。
 こいつからは気配が感じられない。


 透明感のある金髪は刈り上げて、眉毛は薄め。〝尋常じゃない〟とまではいかないが、かなりの筋肉質である。だが、ここがオークション会場だからか、タキシードのようなものを着ていて、上品さも持ち合わせていた。
 このように、見た目だけで言えば、そこらへんのチンピラの内の強者くらいで、別に特段目立っているわけではないのだが、この状況であの態度を取れるほどの度胸と、どこか測りきれない妖しい雰囲気をそいつは感じさせている。


 その物腰から、アミラは警戒心を高めた。
 俺も念のため、奴には見えないように背後に転移用の指輪を飛ばしておく。


「あぁ? 俺様の気配が感じられなくてびびっちゃってんのか? あんなド派手な魔法を使ってたくせに、ビビリちゃんかよ。いや、だからビビリなのかな」
「殺すぞ?」


 おっと危ない。
 つい本音が出てしまった。紳士である俺は、本来ならそんなこと言わないのに。
 だが、これまた幸いにも、奴には聞こえなかったようだ。


 そして、何が面白いのか、ゲラゲラと腹を抱えて笑うそいつに、俺は今すぐにでも最大出力の魔法を放ちたかったが、気配が感じられなかったのは事実としてあり、俺はその謎を聞き出すために、今は奴を殺すのは控えた。
 もし、自称勇者や他の連中が同じく気配を消すことができたら、さすがに危険だからな。
 それに、こいつには後で試してみたい魔法があるし……。

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