手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

如月勇十

第二十五話 神の思惑

「やつは帝国の諜報部所属の戦闘員だったわ。そしてやつらは絶対に口を破らない。いや、破れないの。なぜなら国の不利となる発言をしたら死ぬように呪いをかけられているから。なら生かしておく価値はないわ。やつを人質にしたところで——」
「——いやちょっと待ってくれ。そう言う話じゃなくて、別に殺す必要はなかったんじゃないか? それこそ呪いとか魔法とかなんかで記憶を消したり俺たちの不利になることを言わせないようにしたり——」
「何それ? そんなことしたってなんのメリットもないわ。自爆する可能性もあるし、なんらかの手段で私たちの情報が漏らされるかもしれない。魔術師は捕虜にも人質にもせずにその場で殺すのがセオリーなの。それに、やつは栄一を殺そうとしたのよ?」
「でもそれはっ……」


「どうしたのよ栄一。これは遊びじゃなくて殺し合いなのよ? 殺さなければ逆に私たちが殺される。私だって死ぬときは死ぬし、それは栄一も同じ。というか、昨日だって勇者一行を相手に、致死率の高い魔法を使ってたじゃない? 栄一もおそらく何人かは殺してるはずだわ」


 俺がすでに何人も殺した……?
 あぁ、確かに思えばそれくらいの魔法を使ったのか。
 あれなら人が死んでてもおかしくない。


「わかってる……。でもなんか心がモヤモヤするんだ。俺は死を、殺しを恐れていたのか……?」


 いや、違う。
 今までは全く恐れていなかった。
 その証拠に昨日は初めから奴らに全力で攻撃していた。
 ならば、なぜ今は恐れているのか?
 そしてなぜ今までは全く恐れていなかったのか?


「それはきっと、君がゲーム?やアニメ?といったものと現実を混同していたからじゃないかい? だが、実際に自分が死にそうな目に遭ってようやくこれが現実だと実感した。違うかな?」
「師匠!?」


 あたかもこの店の惨状を元々把握していたように変わり果てた自分の店には目もくれず、師匠と呼ばれるその女性は、元は出入り口だった大きな穴を通って姿を現した。


「フィイ。ちゃんと留守番をしてろとあれほど言ったでしょう? 私の結界がなければこの店ごと吹き飛ばされてたよ?」
「すいませんでした! 師匠!! これからは気をつけます!!」
「本当にわかってるのかね……」


 彼女は悠々とこちらへ歩いてきて、フィオーナと普通に会話を始めた。
 こんな状況で呑気にそんなことができるとは、さすがはフィオーネを弟子としているだけはある。


 だが今はそんなことを考えている場合ではなく、俺にとってよく聞き慣れた、この世界にはないはずの言葉が彼女の口から発せられたことに俺は驚愕していた。


「なんでヤユさんがゲームやアニメを知ってるんですか!? まさかこの世界にも——」
「ないない。ここにはコンピュータとやらは存在しないからね。私がそれを知ってるのは、昔、栄一くんと似て黄色の肌と黒い髪、そして平べったい顔をした男から聞いたからだよ。神代遺物アーティファクトを持ってるのにその真価も知らないようだったし、昨日から君のことを疑ってたんだけど、さっきの戦闘を見て確信した。彼と同じく、君も異世界から女神に転生させられてここにきたんだろう?」


「えぇ、まぁそうですけど……。それより、そいつってまさか——」
「あぁ、最近ここいらで悪さを働いてる奴とは違うと思うよ。私が彼と会ったのはもう2年も前になるし、彼はそんなことをする人ではないから。ちなみに彼も『勇者としてこの世界を救う宿命がある』とか言ってたけどね」
「そうですか……」


 例のチャラ男勇者と俺が同時にいる時点で、可能性はあるだろうとは考えていたがやっぱりこの世界には勇者は複数いるらしい。
 それにしても、日本人率が高いのはなぜだろうか。
 あまり気が向かないが、一度、あのクソ女神ことルーナに色々と聞かないといけないようだ。


「彼も君と同じ悩みを抱えていてね。彼はその原因を、魔法という——元の世界では非現実的だったものやこの世界の価値観のせいで、ゲーム感覚で人を殺してしまっていると帰結してたよ。だから君もそうなんじゃないかなってね」
「確かにそうなのかもしれません」


 ゲーム感覚で人殺し。
 元の世界のとある国では、空軍所属のパイロットに航空機を使ったゲームをやらせて人殺しの抵抗をなくしていると聞いたことがあるが、それと同じ話なのかしれないな。
 俺は俺の知らないうちに、ゲームやアニメに毒されていたということか。


 少し頭の中でその理論を整理していると、不満そうな顔をしたアミラが話しかけてきた。


「ところで栄一、この人は誰なの?」


 俺たちだけで盛り上がっていて、またもやアミラのことをすっかり忘れていた。
 申し訳ないと思ってすぐにユアの説明をする。


「彼女はここの店の店主であり、フィオーネの師匠で、名前は——」
「——ヤユ・オリスナベル。よろしくね」
「え、えぇ。私はアミラン・ロマスよ。よろしく」


 弟子は師匠に似るということだろうか。
 とてつもなく既視感の強い展開にデジャブを覚えながら、俺はアミラと共に苦笑いをしていた。


 ヤユ・オリスナベル。
 昨日少し話した程度だが、それだけでも十分伝わってくる強烈なお姉さんキャラの持ち主。
 艶のある黒色の長髪はフィオーネと違って真っ直ぐ整っていて、綺麗に肩を少し過ぎたあたりで切り揃えられている。
 きつめなシャツによって明瞭化された凹凸の激しい体と、その凛々しい顔立ちから、淫乱な雰囲気を常に纏っていて、性格もおそらくそんな感じだろう。


 そんなヤユと、ある意味正反対な体をしたアミラが、空いている胸元から覗かせる豊満なそれに、さらに不満が溜まっていたようで、俺もアミラにつられてヤユのそれに視線が奪われていた。


「おやおや? さっきまであんな深刻そうな趣で苦悩していたようだったのに、今は私の体に釘付けかい? 血気盛んでいいねぇ〜。ほら、もっと見せてあげてもいいんだよ?」


 ヤユは俺を揶揄やゆするように、すでにギリギリまで開いていた胸元のボタンをさらに外して、俺にそれを見せつけてきた。
 見せつけて来たんだから見ないのも失礼だと俺は思うので、しっかりと見させてもらう。
 やはりこれはFくらいはあるみたいだ。


「……ちょっと、栄一?」


 そこでアミラからの殺意を感じて思わず視線を逸らした。
 ご馳走さまです。


「それより師匠。さっき、ここで栄一さんの戦闘を見ていたというようなことを言ってましたけど、どういうことですか?」
「これを話したら、きっとフィイはしばらくうるさくなるだろうから、詳しい話はまた後で。とりあえず、ここに迫ってきている気配がいくつかあるし、場所を移しましょう。例の研究室に行くわよ」
「でも師匠! あの部屋は師匠とフィイ以外には秘密なんじゃ——」
「ここまで巻き込まれたならもうしょうがないわ。それにこの二人には、聞きたいことやしてもらいたいことが山ほどあるし……」
「……師匠がそう言うのなら…………」


 まるで俺たちの全てを暴こうと言うような鋭い眼差しをユヤ向けられ、俺とアミラは体を震わせた。
 だが、アミラには思うとことがあったようで、すぐに真剣な顔に変える。


「ありがたい提案をしてくれたところで申し訳ないけど、私の事情にこれ以上あなたたちを巻き込むわけにはいかないわ」
「どうせ既に私たちもそいつらに目をつけられたわよ。なら一緒に行動して対処した方がいいんじゃないかな?」


 ヤユの視線の先には上半身の服や装備を剥がされて横たわっている帝国軍のやつがいた。
 確かに二人の女性を、あんな凄腕の奴らに狙われてる状態で放置するのは危険すぎる。
 もし、その研究室とやらが安全なら俺たちとしても助かるし、いい話だと思う。
 だが、アミラは彼女の言葉通り、否定的なようだ。


「だけど、奴らは帝国の使いで、あなたたちには危険すぎると思うし、それに——」
「アミラ。なら余計に俺たちが一緒にいてフィイたちを助けるべきじゃないか? 俺としても店を壊してしまった償いとしてやれることはしたいし、フィイたちを放っておくわけにはいかない。だから頼む。どうか彼女たちに同行させてくれ。その研究室が安全なら俺たちも助かるだろう?」


 俺の必死の説得に、アミラはしばらく考え込んだ後、肩を大きく落として息を吐いた。


「……わかったわ。栄一がそこまで言うのなら、今回だけは・・・・・そうさせてもらうわ。でも別にヤユたちの助けがなくてもあいつらくらいなら余裕で——」
「アミラくんは素直じゃないな。しかしそれもまた可愛い!」
「——っな!? うっさいわ!!」


 ヤユのおっさんのような発言に、当然の如くアミラが怒る。
 俺はフィオーネと一緒に、そんな二人を笑いながら、ひとまず安堵感を抱いていた。

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