手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

如月勇十

第十九話 アミラの想い

「私は早くに両親を亡くして、行くあてもなく、唯一得意だった魔法だけを持ってすぐに軍隊に入ったわ。まぁそれなりに努力のした私は帝国の国定魔術師までに上り詰めたのよ」
「国定!? あまりこの世界の国のことや魔法については知らないけど、つまりは凄腕の魔法使いってことだろう?」


 思わぬ告白に声を上げてしまった。
 ラノベ好きなら国定魔術師がいかに凄いかくらいは知っていて、この世界にどれだけチート的に強い奴がいるかは知らないがそれでもアミラが世界の上位に名を連ねるほどの実力を持っていてもおかしくない。
 まさかそんな人と親身になれたとは……


「まぁ一応、帝国では三本の指に入る魔術師とも言われていたわ。昔の話だけどね」
「どんだけ強いの!? アミラさん、そんな強い方が俺みたいなへなちょこに容赦なく魔法を打たないでくださいよ」
「手加減してるわよ!」


 一旦乱れた空気を吹き払うためにアミラが咳払いを一つする。


「ゴホンッ! ……とにかく、私は国定魔術師としてのとある任務中に運命を変える出来事に遭ったの」


 国定魔術師であることをあんなにも簡単に流されたのだから、これから話されることはそれ以上に凄まじい内容なのだろうと、期待を寄せて唾を飲み込んだ。


「あれは2年前のちょうど今頃、私が属していたエリア帝国と隣のラルストニア公国との戦争が終焉を迎えることになった日。
私は最前線で敵魔導部隊を遠距離から迎撃してたんだけど、もう少しで我が軍が戦術的勝利を収められるっていうちょうどその時、やつは突然現れたの。
自らを神と名乗り、服従しなければ皆を殺すと言って我ら帝国軍を攻撃してきたわ。自分が神であることを証明するかのように強力な未知の魔法を連発して、あっという間に帝国軍の前線は崩壊。それどころか終わりが見えないほどに広範囲な魔法によって、後方の隊も壊滅したわ。
たまたまその時、周囲に国定魔術師は私しかいなかったし、このままだとその戦場が大きく傾くには目に見えていた。それで初めて見る圧倒的な力に焦ったのか、私は上の指示も聞かずに飛び出したのよ。今思うと無謀すぎたわ」


「そんなに自称神ってやつは強かったのか」


 俺が数百万で習得した上級魔法をあっさりと、そしてそれよりも火力を増して連発していたアミラでさえも狼狽える相手。
 チートという反則的にまで強いものたちを画面越しから日頃見ていた俺は『異世界なんてそんなもんだろう』とその話を受け入れていた。


「強いってレベルの話じゃないわ。やつが腕を一振りするだけで数十万もの人が死に、口を少し動かせば本当なら詠唱に数時間かかる最上位魔法の更に上位互換が発動される。あんなの神としか考えられなかったわ」


「まさにチートだな……」
「チート……?」


 自称神の話に、チートという言葉が出てきた。
 おそらく神というのは本当なのだろう。


 聞きなれない言葉にアミラが疑問を浮かべていたので詳説する。


「チートっていうのは俺が元いた世界で、規格外の強さって意味だよ」
「規格外ね……えぇ、まさにその通りだわ。これでも私は国定魔術師になれるほどの実力も知識もあったはずなのに、神の所業全てが見たことも聞いたこともない桁外れな魔法だったもの。まぁ、そんな相手に真っ向から挑んで勝てるわけもなく、私はものの数秒で敗退。そして、ある呪いをかけられた挙句に『我が逸話を持ち帰れ』と私を殺されずに生かされたのよ」


 過去の悲惨な情景を思い出したためか、口調にいつもの覇気を感じられなかったアミラだったが、途中からは吹っ切れた様子で、まるで他人の失態を嘲笑うかのように自分を誹謗していた。


「そんなことがあったのか…………。でも、生きて帰ってこられたんだから、まだ復讐するチャンスはあるぞ!」
「まぁその時まで生きていられればね」


 俺はアミラのが弱っているところに、というよりも人が弱っているところになんと声をかけていいかなんて直ぐにはわからず、とりあえず希望があることを提示したが、どうやらそれは地雷だったのかもしれない。
 彼女のその言葉になぜか現実味を感じられなかったが、おそらくそれは事実なのだろう。


 そうして俺はまたしてもなんと返せばいいか苦悩していた。


「……」
「あぁ、でも気にしないでよ。これからも生きて抜いて、そしてあいつをぶっ飛ばすために今も頑張ってるんだから!」
「っえ?」


 俺の沈黙に、自分の発言に原因があると見出したアミラが、復調した様子を振舞って俺をフォローしてくれた。


「さっき話した〝神にかけられた呪い〟ってのは、魔力量を半永久的に増幅させるものなの。魔術師の私としては万々歳だと思っていたんだけど、人の許容量を超えてまで永続的に増え続けるとなると、体にも支障をきたしてね。
具体的には発熱とそれに伴う各種病。あの戦闘後、病院でしばらく休養をとっていたんだけど、魔法を一切使うことなく数日間寝たきりだったせいで、魔力が許容量の約5倍にまで貯蓄されて、そのせいでしばらく生死をさまよったわ」


「そうだったのか! でも元気になった今は別にいい話じゃないの?」


「それが、この魔力増強の勢いは日に日に高まっていて、毎日えげつない量の魔力を使わないといけないのよ。今はまだなんとかなってるけど、すぐにダメになるのは目に見えてる。魔法を行使するのにも、魔力以外に体力も使われるから、早々に解決しなきゃいけない。ということで、奴が使ったであろう神代遺物アーティファクトを研究して呪いをどうにかしようってわけ」


「なるほど。そりゃ自分の命が関わってるなら法を犯してまでどうにかしようってのも頷ける」
「そうね」


 とりあえず、彼女が自分の人生を諦めているわけではなく、むしろ生きようと必死に足掻いていたことに安堵する。
 話もひと段落ついて、再びその部屋を静寂が覆った時、ふと、自分の重大な失態が思い浮かんだ。


「そんな大事な時に俺は邪魔してしまったのか……」


 俺は、アミラが勇者と友好的になろうと接触していた時のことを思い出す。
 俺の勝手なわがままでアミラの計画を潰してしまったと思うととても申し訳なく感じた。


「もう過ぎたことだしいいのよ! ……そ、それに……あの時、栄一は私を庇ってくれたでしょ? 」
「でも……!!」


 あまりにも情けなくて、どうにか自分を責めて欲しくて、自然と俺はアミラの方を振り向いた。




「「っあ……!」」


 見ると、アミラは赤く火照った顔をシーツで隠しながら俺の方を見て座っている。




 混じり合う視線。


 カーテンの隙間から入るわずかな明かりに照らされて、キラキラと輝く白髪の少女——アミラは幻想的な雰囲気を纏っていた。
 それは彼女と出会った時を彷彿させるもので、俺も思わず目を奪われる。


 ——あぁ、そうか。いくら元国定魔術師で、強力な魔法が使えるといっても、アミラはただの一人の女の子なんだ。
 美味しいものを食べて喜び、悲しい過去を思い出して落ち込む、普通の女の子だ。
 まだ出会って間もないが、いつも強気な彼女だからこそ、抱えてる悩みも人一倍多いのだろう。
 そりゃあ、一人で得体の知れない奴相手に戦ってれば当たり前だよな。


 そんな困ってる女の子を目の前に、俺はなんて情けないことを言おうとしていたんだ。
 俺は俺のために生きてきたし、これからもそのつもりだが、それが叶う範囲でなら人助けはするつもりである。
 ましてや、命の恩人であるアミラを助けるのは当たり前のことだ。
 ならば、俺が今するべきことはなんなのか。


 その答えはもうすでに決まっていた。


「……」
「…………俺も!!」
「え?」


 気持ちが先行して最初の言葉だけが出た。
 そんな俺に首を傾げて聞き返すアミラ。


「俺も!! 神をぶっ倒すのは最初から決めてたから! だから……とにかく、今は魔術の練習を頑張るよ! そして一緒にあいつらをぶん殴ってやろう!! 俺はアミラのパートナーなんだから!!」


 今まで人と関わるのを避けてきた俺のやれる限りの心の叫び。
 とにかく俺の気持ちを知ってもらいたくていっぱいいっぱいだったから纏まらない言葉になったが、彼女に、アミラに、俺の気持ちは届いただろうか。


 俺は怖くて下げていた視線をゆっくりと上げ、アミラを見据える。


「……うぅ…………」


 するとそこには瞳に大粒の涙を浮かべているアミラがいた。


「えっ!? ごめん、また俺なんか失言した!? そんなつもりじゃ無くて俺はただ——」
「——嬉しがっだから! パートナーっで言っでもらえて、一緒に頑張るって言ってくれたから!!」
「……」


 思わぬ言葉に俺は動揺して言葉が出てこない。
 そんな俺には御構い無しに、泣きじゃくりながらアミラは必死に言葉を紡いでいく。


「私、今まで一人だったの! 軍でも周りは大人の男ばっかりで女の子供だった私なんて仲間とも思われなかった! それに私がどんどん出世して行くもんだからみんな私を避けていって!! 軍から抜けて神代遺物アーティファクトを研究する旅に出てからも、神を相手にしてる変人なんて誰も相手にしてくれなくて……。だから嬉しかったの!! 初めて仲間ができて、仲間だと認めてくれて嬉しかったの!!」


 しっかりと俺の目を見て、アミラはその全てを俺に伝えてくれた。
 普段強気で、弱音なんて一切吐かないであろうアミラの告白。
 きっとアミラが強気なのも、気を緩められない状況にずっと立たされていたからなのだろう。


 そんなアミラの想いを聞いて、気づけば俺の目にも涙が溜まっていた。
 もともと俺はアニメでも感情移入しやすいのだからしょがない。
 だが、人にそれを見られるのは小っ恥ずかしいので、すぐにそれを拭う。


「アミラ! 俺はお前の仲間だ!! だからいつでも俺を頼っていいんだからな!」


 少しキザだったかもしれないがこんなこともう言う機会なんてないかもしれないんだから、と自分を鼓舞してアミラにそう告げた。
 それを聞くとアミラは『ありがど〜〜』と鼻水混じりのなんとも情けない声をあげる。




 それからしばらくしてアミラが泣き止むと、調子に乗った俺はアミラを撫でてやろうと柄にもないことを思って近付こうとしてところ、アミラはこれまで以上に慌てた後に、


「い、今はダメ〜!!」
 と言って俺を得意の魔法で吹き飛ばした。


 仲良くなれたかと思ったが、それは俺の勘違いなのかもしれない。

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