手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

如月勇十

第十一話 思わぬ収穫……?

「——テメェが勇者かコラァ!!」


 勇者らしき人物がこっちを振り向く前に、俺は奴を文字通り吹き飛ばすことに成功した。
 5mは少なくとも飛んだだろう。
 身体強化と加速の能力が付与された俺の拳によって。


「っく!?!?」


 奇襲により、ナンパ中だった奴は完全に油断をしていたのか、防御もできないままにもろに攻撃を食らってくれた。
 だが、さすがは勇者を自称するだけはあって、すぐに体制を立て直して戦闘準備に入っていやがる。
 あんなバケモンみたいな拳を食らってもう立ち上がれんのか……。


「誰だお前?」
「テメェに名乗る名なんざねぇよ。腐れ勇者が」
「なぜ俺が勇者だと知っている? まぁいい。お前はここで殺すし、名前なんか聞いてもしょうがないな」


 俺を嘲笑うようにして殺害宣言をしてみせた自称勇者は、ニヤニヤと俺を見つめながら剣を握っているその両手を握りしめ、俺との間合いを半歩ほど詰めてきた。
 一方、人生で初めて人を殴った俺は、その衝撃と、自分の予想以上に威力を増していた”力”に内心動揺をしながらも、ナンパされていた女の前に出て、自称勇者に対峙する。


 互いに視線を交わす二人。
 俺は両腕を低い位置で構え、自称勇者は剣を構え、今か今かと攻撃するタイミングを窺っている。


「死ね!!」


 憎しみのこもった声でそう叫び、自称勇者が先に攻撃を仕掛けてきた。
 人間には認識できないほどのスピードで俺に飛び込んでくる。その剣撃をまともに受ければ死は免れないだろう。俺の体を二つに両断した後に、そのまま後ろの壁も切り刻みそうな勢いだ。
 しかしそれは、まともに受ければ・・・・・・・・の話でしかない。




火炎砲弾ファイヤー・シェル


 俺の眼前三歩手前ほどに自称勇者が迫った時、俺の手から人の頭くらいの大きさはある火炎玉が一瞬にして生成され、まるで爆発に押し出されたかのような勢いで自称勇者に向かって飛びだしていった。それはまさに砲撃のようだったと言える。


「っくそ! 魔術師か!!」


 火炎玉が着弾するすんでのところで自称勇者は横に飛び、そのまま壁を蹴って元のいたあたりまで下がった。
 自称勇者の体を貫くはずだった火炎玉はそのまましばらく直進して、少し先の地面に大きなクレーターを作っている。
 そんな背後のクレーターを一瞥して、勇者は苦虫を噛み潰したかのような顔をした。


火炎散弾ファイヤー・ショット


 勇者に追撃をさせる暇を与えないために、こちらから連続で攻撃を放つ。
 先ほどの火炎球と比べると1/5位の大きになるが、毎秒20発もの火炎玉をいくつもの場所から発射できる魔法だ。


 勇者はその魔法が発動された瞬間にバリアのようなものを貼ることで、まるで雨のように降りつける火炎球を防いでいる。だが、爆発の隙間からたまに見えるその表情に余裕はない。


(この攻撃も防ぐとは……。腐っても勇者は勇者か。それにしてもこの火炎球の威力といい、勇者のスピードにもついてこられるほどの認識強化といい、ほんと凄まじいな。魔術指輪マジック・リングの力ってのは)


 止むことを知らない火炎散弾ファイヤー・ショットが辺りを火の海に変えている中、自分の放った攻撃に自分で感心しながらも、俺は今日の昼に行った魔道具屋のことを思い出していた。


 なぜ、数時間前まではただの無能・・だった俺が、今や魔法を使って勇者とやりあえているか。それは俺が今朝手にした俺の唯一の能力・・・・・・・に関係している——。






      ◇◇◇




 魔術指輪マジック・リングに触れた時、そこに秘められた効果を能力として保存する能力。


 今朝、俺を牢獄から仮釈放するための続きを役人がやってくれていた間、俺は自分が唯一持つ能力について考えていた。
 それは女神曰く、『指輪の効果を能力として保存することで持ち運びを楽にする』というなんともどうでもいい用途に使うための能力らしいが、これを有効利用することはできないのか。俺は、すがるような思いで自分の能力のまだ見ぬ可能性を探していたわけだが、そもそも、指輪がないと何も実証できないことから例の看守に魔道具が手に入るところを聞いた。すると、この街ではあまり魔道具の需要はないらしいが、1店舗だけあるということなので牢屋を出てその足でそこへ向かうことにした。


「ごめんくださ〜い」


 俺の魔道具屋のイメージとは違って、怪しい雰囲気など微塵に感じさせない明るい店内に整理整頓された商品。
 アニメ好きとして若干失望しながらも俺は目的の指輪を探して店員さんを呼んだ。


「はーい! 行っらしゃいませ〜」


 店の奥から出てきたのは透き通った笑顔が印象的な碧眼金髪の美少女だった。
 年は15といったところだろうか。髪を折り返すように後ろで結んで、前髪はショートのデコ出し、というヘアースタイルのせいで若く見えているかもしれないが。
 そんな彼女は汚れの多い作業着のようなつなぎを着ていることから、どうやら奥で何かしていたらしい。


「こんにちは。実は”魔法のような効果を持つ特殊な指輪”ってのを探してるんですけど、ここで取り扱ってますか?」
「あぁ、魔術指輪マジック・リングのことね。それならうちにもあるよ!」


 ハキハキと喋るその女の子に案内されて、田舎のコンビニの3倍くらいの大きさの店内のレジの方へと進む。


「どうだい!? うちは品揃えがいいだろ〜?」


 そうやって彼女に見せられた先には、20あまりの色とりどりな指輪がガラス張りのショーケースに並んでいた。
 どれも大事そうに展示されていて、高級だということがが窺える。


(意外と少ないな……。でも一つ一つに凄まじい能力が宿っているんだろう)


「とりあえずお試しで使ってみることってできます?」
「ごめんね〜。試用はできない決まりなんだ。ほら、魔術指輪マジック・リングって一回使ったらしばらく使えないものが多いでしょ? でも、リングの持つ効果は説明欄に書いてあるからそこで判断してね。うちにあるもんは全部証書付きだよ!」
「あぁそうなのか……」


 俺が今朝考えた俺の能力の活用法。それは片っ端から効果が付与されてる指輪に触りまくることだ。
 指に嵌めないと能力がコピーされないのかどうかは、まだ検証してないがわからないが、触るだけで能力をコピーできるとしたらちょっとしたチート能力だと思う。
 まぁ、効果持ちの指輪——魔術指輪マジック・リングがそもそもこの世界では貴重で、滅多に手に入らないことも考えていた俺からしたら、試用できないにしてもこの状況はかなりありがたい。それに試用できないなら全て買えばいいし。
 なんせ今の俺は、国を一つ買えるレベルの価値があると言われたものを持っているからな。


「じゃあ、ここにある全ての指輪を買わせていただこう」
「えぇぇ!?」


(あぁ、この台詞も一度は言ってみたかったんだよなぁ)
 鏡がないからわからないが、きっと今の俺は超絶ドヤ顔を決められているだろう。


「現金は持っていないんだが、その代わりにこれで足りるかね?」
「全部って500万バルはしますよ!? それがこんな指輪一つで……って、なんですかこれ!?!?」


 俺が指からとって例の言語理解能力の効果を持ってる魔術指輪マジック・リングを店員に渡したら、店員は訝しげに指輪をあらゆる角度からみて、そして大興奮し始めた。


「あぁ、それは言語理解能力が付与されている指輪だ。疑うなら検証してみるといい」
「そんな高度な技術を有する魔道具なんて……。神様くらいにしか作れませんよ! あははは。バカにしないでくださ〜い。それで本当はなんなんですかこれ?」
「いや、本当にそうだって」


 俺の説得をなかなか信じてくれない店員は「なら試してみます」と言って店の奥へと消えていった。


(それにしても本当にすごい価値がありそうだな。既に言語理解能力はコピーされてるし、金になるならさっさと換金したいところだ)
 そんな感じで今後の生活費などを心配していると、奥の方から『ふぇええええ!?!?!?!?』という叫び声が聞こえたと思ったら、ドタンバタンと何かが倒れる音とともに全速力で例の店員が俺の元へ戻ってきた。


「ほ、本当に言語理解能力じゃないですか!!」
「だからそうだと言っただろう」


 店員は俺のことなど御構い無しに『きゃあきゃあ』と、まるで婚約指輪を受け取った女の子のように騒いでいる。
(全く。これがすごいのはもうわかったから早く仕事をしてくれよ。俺も忙しいんだよ)


「それで、これは一体いくらになるんだ?」
「——いやぁ〜。ここに見える模様からするにやっぱりこれは神代遺物アーティファクトなのかなぁー。ぐふふ。もしそうだとすれば中の構造は一体どうなっているんだ……?」


 人の話も聞かず、今にも俺の指輪を分解しそうな様子だったので軽く頭にチョップを食らわしてやる。


「っぐへ!?」
「いい加減、仕事をしろ。いくらで買い取ってくれるんだ?」
「痛いですよ〜。……買取ですか? あぁ、申し訳ないですけど、うちでは買取できませんよ。そんな大金、うちにはないので」
「はぁ?」


 しばらく涙目で俺に叩かれた頭を押さえていた店員のその言葉に、俺は思わずまたチョップしてしまった。


「っふぎゃ!?」



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