獣少女と共同生活!?

【夕立】

第四十五話 再び、あの山へ

動物の世界での滞在時間は、約1時間程ととても短いものとなってしまった。
その理由が、今まで華さんと言っていた少女──蕾ちゃんは、現在動物の世界は居ないらしい。
一方、意識だけとなってしまった華ちゃんの方なのだが、驚くことにいつでも念話が出来るとの事。しかし、世界を超えての会話はほぼ不可能らしく、それで今まで俺に念話が出来なかったらしい。
そして、今から行く場所は蕾ちゃんが向かったであろう場所。そして、都合良く念話も通じる場所の様だ。
そして、その場所なのだが……。

「……懐かしいな。ここに来るのも」

なんと、みぞれと初めて会った山だった。
ここら辺で、一番この世界と動物の世界が繋がりやすい場所で、世界を繋ぐゲートが出てくるのも近場だとここだけ。俺達の住んでる所は、巫狐さんが特別に繋いでいるから例外だが。
巫狐さんから話を聞く限りでは、この山全体が繋がりやすい訳ではなく、頂上に登るにつれて力が強まっていくらしい。
携帯で軽く調べたのだが、頂上は近くの街を上から見下ろせるらしく、ちょっとした隠れ人気スポットらしい。
しかし、流石に夜遅くまでここにいる観光客や地元の人は居ないらしく、頂上に人がいるのは21時頃までらしい。
そして、現時刻は22時過ぎ。二つの世界が繋がりやすいのは夜らしく、俺達はそれまで家で待機していた。
家で待機している間、俺はみぞれや秋風さん、風華やルナさんに事情を説明した。
以前から少しだけ話していたみぞれと秋風さんは、新事実に驚いている様子。一方、何も知らない風華とルナさんは凄く驚いていた。
そりゃ、この世界以外の世界があって、そこには動物達が人の姿をしたりして暮らしています〜なんて信じられないだろう。俺も、みぞれと会っていなければ信じられなかっただろうし……。
全ての事情を4人に話した俺は、この後蕾ちゃんと会って話してくる事も話した。俺が止めてあげないといけない。華ちゃんからも頼まれているからな。
すると、4人は一緒に行ってもいいか?と聞いてきた。
俺としては、あまり危険な目に合わせる訳にはいかない。格好悪いが、自分の身すら守れる自信がないからな……。
しかし、俺の考えを伝える事を考えると人数は居てくれた方がいいのも確かだ。彼女達も、彼女達なりに考えて出した答えだ。否定するのは良くない。
……と、言う事で合計6人のメンバーで登山。そこまで険しい道ではなく、山もそれほど大きくないのですぐに山頂に着く事が出来た。
そして、そこには華ちゃんの言った通り華ちゃんの姿をした少女が立っていた。

──俺は、蕾ちゃんを暗闇から救ってみせる!

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