は・み・る・な日常

リーズン

~~白亜の日常5~~

 保健室から屋上まで見事に誰にも見付からず移動した私を、段ボールマスター又はスネークさんと読んで欲しい物だ。うんうん。


 そんな事を考えつつ私は何時もの様に出入り口の部分に在る梯子を登って行く。


 何時も思うが屋上立ち入り禁止にするくらいならこの梯子も何とかすりゃ良いのに?この学校は何故か貯水槽が屋上に並んでんだから。普通一個か二個じゃね?六個は多いと思うよ?まあ、知らんけど。


 梯子を登り終えるとそこには私の専用スペースが・・・・・金髪ロン毛の猿に占領されていた。


「ふぅ、どけ」


「グハッ!て、てめえ・・・寝てる人間の腹の上に乗るとかなに考えてやがる!」


「チッ!死ななかったか。生きてるならさっさとどけ。そこは私の場所だ金髪!」


「これでも一応先輩だぞこら!」


「ハッ、そんな風に扱って欲しいなら尊敬出来る所でも見せてみろ。つか、早くどけ」


 くそ~。と、文句を言いつつも私の言葉に従い場所を開けるこの男。名前はまだ無い!では無く知らない。と、言うか知る気もないのが本音である。


 知っているのは不良、金髪、三年、サボり魔で在ると言う事、そして、後一つこれが私がこんな見るからに危なそうなのと普通に話している理由。それは、この男こんな成りをしていながら重度のゲーマーなのだ。


 しかも、私と同じかそれ以上の重課金組だよ?信じられる?マジなんだぜ?頭おかしいよね?


 そんな訳で私がこれの事を呼ぶ時は金髪かクレインと呼ぶ。クレインと言うのはアカの名前らしい。名前をもじってるとか何とか?


 こんな見るからに頭の悪そうな不良が、何故そこまでのゲーマーなのか?それは何とも漫画的な理由からだった。


 こいつ目付きがすこぶる悪い。しかも昔から夜更かししてはゲームをやりまくり、寝不足のまま学校に来なく行くの繰り返しだったそうだ。


 そんな目付きが悪い子供が寝不足で人相悪く歩いていれば色んな人間に絡まれたそうだ。最初はただただイジメられるだけだったが、幸か不幸かこいつのちちおやと母親もやんちゃだったらしい。


 そして、イジメを知るや否や人を圧倒する喧嘩の仕方を、自分達の経験に基づいて色々と仕込まれたそうだ。


 そこからは簡単だった。


 イジメっ子を倒す→イジメっ子の兄登場→やっぱり倒す→ロクデモない仲間登場→やっぱり倒す→名前が売れ顔が割れ喧嘩を吹っ掛けられるの繰り返し。


 正に泥沼!しかも当人はそれに嫌気が差して二次元やゲームに逃避するとかね。オタ道まっしぐらの不良少年とかマジ笑けるわ~。wwww草生えますわ。ワロス。


 因みにこれはゲームの対戦に勝って、恥ずかしい過去と言う罰ゲームで聞いたのだ。正直漫画見たいと爆笑したら割りと本気で止めて下さいとお願いされた。まあ、恥ずかしいよね?


 出逢いに付いては割愛する事にしよう。その内気が向いたらね?


 そんな訳で金髪を退かした私は寝転がりスマホゲーを始める。


「たくっ、良い身分だよな。相変わらず見た目はこんな時間にこんな所に居るような感じじゃねぇーくせに」


「そうゆうお前は見た目道理だろ?それに私は立派に青空教室で、現代社会におけるデジタルコンテンツを学んでいる最中だ。あっ、クソ!ラグりが、これだからスマホ回線は、この時代になっても未だにこんなにラグるとは弱小コンテンツめ」


「滅茶苦茶言ってるな。まあ、いいや。これから回すけど見るか?」


「マジか!この前のガチャで盛大に墓建てて死んだくせに!」


「うるせぇよ!お前だって思わず目ぇそむけたくなるくらいの爆死具合だったじゃねぇか!」


「それこそうるせぇよ。あれ?でも、この前ので使いきったとか言って無かったっけ?」


「あぁ、えぇと、だな。喧嘩吹っ掛けて来たのをのしたら置いてった」


「お前・・・」


「言いたいことは解る。解るけど使わねぇのも勿体な・・」


「そう言うのは一人で楽しまず私にも還元しろよ!どうせあぶく銭だろ!」


「・・・おい。自分で言うのは何だがここは普通諌める場面じゃないか?」


「はっ?何で?金は使うもんだよ?」


 訳わからんはコイツ?


「いや、確かにそうだが。手に入れた経緯とか在るじゃん?」


「何で疑問系よ?まあ、確かに真っ当に手に入れた金じゃないけどさ。言っちゃえば相手の自業自得でしょ?自分から喧嘩吹っ掛けて見逃して貰う変わりに金を差し出した。ただそれだけでしょ?仮にお前が奪ったんだとしてもそれはそれで自業自得。相手を害する行為を自分から望んでやったんだったら、それくらいは覚悟して当たり前。むしろそれすら覚悟して無いなら初めから道の隅で縮こまれば良い。まぁ、逆に言えばあんたがやられた時も自業自得にはなるだろうけどね?」


「厳しいね~。こっちは被害者だぜ?」


「世間はそうやって見てくれない。結局は当人達以外からは同じ穴の狢だからね。まあ、精々何もしなくても絡まれるなら、寄ってくるATM変わりにでもしとけば?」


「・・・お前、俺よりよっぽど悪党だよな?」


「そう?好きに生きるんだからその過程で他人に迷惑掛けたら、自分にも同じかそれ以上の報いは何時か受ける物だよ。それに巻き込まれたとしても、火中に居れば当事者で周りが捲き込まれた側になるからね変わらんよ」


「ご高説どうも。さて、なら気を取り直して引くか」


「外れろ!爆死しろ!泣け!崩れ落ちろ!」


「お前本当に最低だな!」


 うるさい。他人のガチャは外れるのが見たいんだ!


 私の目の前でクレインがガチャのボタンをポチっと押す。


 因みにだが、このゲームは今空前の大ブームになっているVRゲームである。何年か前に発売されたVRゲーム機は、当初こそゲーム機として開発された。だが、バーチャル空間で疑似体験が出来るVRは、当初は医療現場に導入された。


 限りなくリアルに近い感覚で擬似的な疾患やトラブル等を、データベース上で体験できる事で執刀に置ける事故やトラブル、症例の少ない病気の手術の練習等が出来るVRは、正に医者のスキルアップにはもってこいの品物だったのだ。


 そこから更に様々な分野で使われ出したVR機器はここ数年で急激な進化を遂げ、発売当初こそ高値だったが今では学生でも手が出るほどの値段になり、かつては空想だと言われていたゲームの中に入り、自在に動き、五感で体感できる世界が現実の物となった。


 その中で生まれたのがこのゲーム、ニューワールドだ。ニューワールドにクリアは無く、もう一つの生きる世界。と、言う触れ込みで広がった。


 その世界ではモンスターとの戦闘も在るが、店を開くのも、国を一からプレイヤーだけで作るのも自由と言うゲームだった。


 更に大きかったのが、このゲームの開発費用を出している企業が開くイベントでは、現実で使えるクーポン等の発行もあり、VRゲーム機だけでなく、スマホ、全ての据え置き機、パソコン等からもプレイ出来るマルチな展開を見せた事が大きいだろう。


 まあ、VRゲーム機としのゲームだから、それ以外の機器だと色々な制限が在るけどね?


 そんな訳で、特定の場所じゃないと出来ないゲームでは無く。何時でも何処でも気軽に出来る。と、人気が出ているので有った。


 そして今回のガチャは、何と限定激レア装備には特性のレアスキルが付いていると言うのだ。当たり確率はかなり低く今ネットでもかなり話題になっている物だ。


 正直私も欲しいのだよ!


 そんなガチャを今目の前でこの男は引いている。


 ニューワールドは神が新たに創造した世界。と、言う事になっているなのでガチャページでは、女神像が出現してその像が祝福を与える様な演出で実行される。


 何とコイツがやったのは三万円の百連ガチャだった。いきなり金の女神像が出現すると、その上から光が降り注ぎ銅の宝箱が出現する。銅の宝箱はレアの物が入っている。ニューワールドの連続ガチャは、レア度の低い物から順に出てくるのだ。


 連続で出現する銅の宝箱。百連は金の宝が十一個確定なので焦るのは間だ早い。


 半分に差し掛かる頃銀の宝箱に変わる。


「良いんじゃね?これ結構良いんじゃね?」


 ヤバい。コイツが限定当てたら私はコイツに喧嘩を挑んでフルボッコにしなければ気が済まなくなる。


 次々と出現する銀の宝箱。


 残りは十三個と言う所で金に変わる。


「ぐわぁ、途中までは良かったのに!」


「良いぞ!こい!このまま金でつっぱしれ!」


 残りは・・・八個。・・・七個。・・・六個。・・・五個。・・・四個。


「クソ!ダメか!駄目なのか!」


 次々に減っていく残りの宝箱の数に、だんだんと希望の光が宿っていた瞳が沈んでいく。


 それでも、金箱から出て来ている物も決して悪いものでは無い。ただこのガチャに限っては最上級レアの装備を狙う為の物なんだよね!?


「一人だけ勝ち組になられてたまるかそのまま行け!」


 三個目の宝箱が出現しその中身が開封される。そして、いきなり金の女神像が震え出す。


「マジか!」


「なん・・・だと!?」


 ビキっ!ピキっ!バキバキ!と、音を立てた女神像の金の部分が剥がれ落ち中から虹色の光りを放つ女神像が現れる。


「キター!」


「ガッテム!」


 そして、何とこの男。限定の激レアスキル付きの装備を二つとも手に入れやがりました。


 私は余りの悲しみに崩れ落ちたのだった。


 完。


「大勝利!」


「あぁぁあぁ、クソが!世の中なんて大嫌いだ~」


 二人だけの屋上に真逆の二人がそれぞれの感情を表していたのだった。



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