ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

口調忘れてんぞ?

「おぉ!」

 更に奥に進んだ先、ドーム状になった広い空間は確かにトリス達が言っていた通り、瓦礫と無数の傷痕が残る散々な状況だった。

「はぁ〜、本当に瓦礫ばっかっすね」

「ハクアが行きたいって言うから何かあるかもって期待したけど、今回はハズレだったみたいなの」

「いや、ハクアは嬉しそうじゃぞ?」

 視線の先、全員より先んじて広間に入ったハクアは、感嘆の声を最初に上げたかと思いきや、キラキラとした目で辺りを見回し、今は何やら真剣な目でブツブツと呟いている。

「いや、でも、トリスの言った通り瓦礫だけっぽいっすけど? ここにもさっきみたいのがあるんすか?」

 シーナの問いかける先に居るのは当然テア達二人だ。しかしその二人もハクアを視界に入れながら、真剣に辺りを眺めていた。

「ああ、すみません。そうですね、先程のようなモノはありませんが、ここにはそれと同等のお宝……価値はあるでしょう」

「そう……なのか?」

 ハッとしたように答えたテアに、トリスは周りを見回して首を傾げる。

 だがどれほど目を凝らそうと、トリスの目に映るのは瓦礫や傷痕ぐらいで、とてもテアが言うような価値が思えなかったからだ。

 そうこうしている内に、ハクアは何かの動きを真似するように少し動いては、首を傾げてまた同じ動きを繰り返してた。

 それは先程とは違い何かを探すと言うよりも、何かハクアにしか見えないモノの姿を追うような動き。

 だがその動きも、手掛かりになるものが少ないのか、時折空中を見つめナニカを確かめてまた同じ事を繰り返す。


 繰り返し、繰り返し。

「……あれ?」

 最初に気が付いたのはシフィーだ。

 一歩踏み出しては首を傾げていた動きは、次第に姿勢、重心、下半身、上半身と増える。

 呆れるほどに繰り返す度に、その動きは徐々に輪郭を帯び始め、少しづつ一歩づつ最適化されていく。

「あれは……」

「まさか……」

 徐々に組み上がる形に、動きにミコトと水龍王の二人が絶句する。

「うん。こうだな」

 そして───。

「フッ!」

 ドンッと踏み出した足で大きな音を響かせながら、腰溜めに放たれた一撃は、最初から壁にあった大きなクレーターの横に、ソックリな痕を刻み付けた。

「うむ。こんなもんかな?」

「こんなもんかな? じゃなーい!」

「どわう」

 一人満足そうにそう言ったハクアにミコトの叫びお見舞いされた。
 ▼▼▼▼▼▼▼
 いやはやこんなモノがあるのに何もないとは人が悪い。

 ドーム状の最奥で見付けた宝を前に私は静かにそう思う。

 いや、これに気が付けるかどうかを試されているのだろうか?

 散乱した瓦礫に今なお残る生々しい傷痕。

 それら全ては宝───いや、情報という名の価値だ。

 ここは龍神がかつて修行に使った場所と言っていたが、それがこんな形で綺麗に保存されている。

 例えばこのすぐ側にある足跡。

 深く沈む足跡は、それだけで震脚のように足を強く地面に叩き付けるような動作だと分かる。

 更に目の前の壁にある大きな放射線状に拡がるクレーター。

 その中央にある痕から、それは拳の一撃だと推察することが出来る。

 ふむふむ。やっぱりこれが一番真似しやすそうだな。

 数多ある痕跡の中で、一番わかりやすいモノをチョイスして、痕跡から動きと術理を推察する。

 一歩踏み出しては違うと何度もやり直し、矯正と修正を加えながら、頭の中でその痕を作った龍神の姿を創り出しまたトレースする。

 ここから脚に連動させるとなると……うん。やっぱり後ろ脚の部分はこう……と、なるの上半身はこうやって連動する。

 少しの間真似るとやっとスッキリと来る形に組み上がる。

 だが───。

 これで合ってそうだけど、それにしては結果となる威力がデカ過ぎる。他にも何か隠されてそうだな?

 こうして頭の中で創り出した龍神の動きをトレースしつつ、自分の形に落とし込むと、やはりと言うべきか疑問と足りない何かを感じる。

 そう考えた私はもう少し痕を良く観察する。

 ああ、なるほど重要なのは捻転……捻りか。

 着目したのは龍神の残した足跡。

 深さと向きにしか目がいかなかったが、どうやら私の目が節穴だったようだ。

 それは良く見れば足跡として少しおかしなことに気がつく。

 足跡と言う割には形が少しおかしいのだ。

 真上から見れば普通の足跡だが、中に足を入れると底の部分は少しだけ広くなっている。

 それこそが捻転の証拠。

 そして更にこの地で霊力を知った今なら分かる。

 多分……龍神はこの足跡を残す程の震脚を用いて、大地と繋がり力を吸い上げたんだ。

 不自然な力の残滓、普通では生まれないそれを感じ取った私はそう推察した。

 やっぱり霊力とか便利だな。前よりも更に色んな事が頭の中に情報として叩き込まれるような気がする。

 霊力の便利さとその力の一端を感じながら調査を進める。

 大地から吸い上げる力と肉体の力を混ぜ合わせ、それを全体の捻転で拳の一点に集中する感じかな?

 似たような事は他の武術でやったことがあるが、それは体のエネルギーだけを使った発勁のようなモノ。この技は更にそれを昇華させたものなのだろう。

 何度か動きを繰り返し、何度目かの挑戦でしっくり来た。

「うん。こうだな」

 推察と練習を終えた私は本番に挑む。

 大地から吸い上げる力は自分の力を呼び水に、感覚としては力を通す感覚で……。

「フッ!」

 ドンッと踏み出した足で大きな音を響かせながら、自身の力を呼び水に大地の力を吸い上げ、その力を逆らうことなく受け入れ体を通す。

 それと同時に体と力に捻転を加えながら、足、腰、上半身そして右の拳へと力を一気に集約する。

 結果、腰溜めに放たれた一撃は、最初から壁にあった大きなクレーターの横に、ソックリな痕を刻み付けた。

「うむ。こんなもんかな?」

 初めてにしては十分なのではないだろうか? いや、力の練り上げ足らんし、ソックリな痕とか言いながら、威力は雲泥の差だしで全然だめだけどね!

 形を真似るという当初の目的は果たしてるんだからとりあえずOKという事で。

 一人で誰に向かってかわからない言い訳をしつつ、まあまあだろうと結論付ける。

「こんなもんかな? じゃなーい!」

「どわう」

 そんな私にミコトの叫びが襲い掛かる。

 いや、耳痛っ!?

「どうしたのミコト?」

「どうしたのじゃないよ! なんでハクアがあの技を使えるのさ!?」

 いやいや、まじでどうした? 口調忘れてんぞ?

「ハクアちゃんが今使った技は龍神様だけが使えるものなのよ」

「へー、そうなん?」

「そうなんって軽いなぁ。結構重大な事なんだけど……それで、どうしてハクアが使えたの?」

「いや、普通にここから盗み取っただけだが?」

「ここから?」

 私の言葉にミコトは首を傾げ、辺りを見回す。

 ふむ。わかってなさげ?

 そう思った私は、ミコトに今ここにある痕から読み取った事、その全てを説明しながら教える。

「───と、言うこと、それで足らない部分は知識と経験、想像で穴埋めした結果がコレです」

 ババーンと壁の痕を見せるが、ミコト達の視線は足跡の方に集中力していた。悲しい……。

「そう……そういうこと……それでハクアちゃんはここに反応したのね……それなら……」

 そんな中でおばあちゃんだけが一人、何かミコト達とは違う反応をする。

 何故だろう。その姿にとてつもない嫌な予感がする。

「うふふ。ハクアちゃんは本当に面白いわね。これならもっと面白くなりそうだわ」

 おばあちゃんのとても良い笑顔に私の体は、蛇に睨まれた蛙のように固まった。

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