ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
……笑顔の圧が強い
「あの〜、毎度の事ながら、なんで私はこんなことになっているのでしょうか?」
はい。現在の私は木の幹に括り付けられている状態であります。しかも括り付けてる物品の鎖、どう見ても普通のものではなく、封印系の術式が込められている呪具という念の入れようだ。
普通封印か呪具かどっちかだと思うの……いやいや、普通はロープでもなくてこんなことしないんだよ!?
そんな私の言葉を聞いたおばあちゃんは、あらあらうふふといつもの淑女感が滲み出ている。
そしておばあちゃんの前にはアトゥイやレリウスを初めとした、新規修行参加組が私を半円状に取り囲むように配置されている。
イジメ感が半端ない配置と構図だ。
ちなみに他の皆はそれを少し離れた位置で見ている。
いや、見てないで助けて。そしてテアとソウは楽しそうね!
「おばあちゃんもね必死に考えたの」
薄情な奴らに恨みがましい視線を送っていると、おばあちゃんが頬に手を当てて、困ったわポーズで語り始める。
「えっと、何をでしょう?」
きっと私にとっては地獄の扉でしかないものに手をかける。
だってやらないと進まないから!
「今までハクアちゃんを鍛えてきたけど、正直そろそろやることが少なくなってきたのよ」
「なんと!?」
僥倖、僥倖である!
やることが少なくなってきたという事は、今までのものを継続していくしかなく、新規のものは増えないとみていいだろう。
私にこんな幸運が訪れるとは!?
「そっ、そっかぁ。それは残念だね。うん、残念残念」
嘘である。めっちゃ嬉しい。
しかしそうなると一つだけ分からないことがある。
「で、それがどうしてここに繋がりますの?」
そう、それは今の私の現状だ。
「ええ、そこでおばあちゃん、テア様達と色々と話し合ったのよ」
見る。
満足そうに頷く二人が居る。
「ハクアちゃんは種族としての肉体的スペックはもう既に、この世界でもかなり上位の位置に居るの」
納得は出来ないが確かにそうだろう。
物理面で最強種に近い鬼の身体、魔法面で最強種に近く、物理面でも優秀な竜の身体。
その二つが同居する私という存在は、存在だけならチート級と言っても過言ではない。
敵として出逢えば災害級の生物だ。
まあ、私個人としてはなんか知んないけど、防御面がすぐに頭打ちになるから、結局そんなに強くないんだけど。
皆に言わせれば、ここまでの肉体スペックがあって、このステータスというのが、悪い意味でバグキャラになっているくらいだ。
「それでね。今までは防御面を補いつつ、得意な攻撃方面と力の制御に力を入れてたけど、肉体も成熟してきたし、遂に防御面にも力を入れることにしたの」
うん。この時点で死の予感しかしない。
見る。
すごくいい笑顔でサムズアップしながら頷く二人。
安心しろと言わんばかりだが、どこにも安心要素などない。
「でもハクアちゃんは元から上がりにくいのに、加護や特性で特に防御のステータスは上がりにくいじゃない?」
「……はい」
それ私のせいじゃないけどね。でも、そうしないともうとっくに死んでるんだよなぁ。
「そこでおばあちゃん達は、防御力を鍛えるんじゃなくて、ハクアちゃんの得意な【結界】を強化すれば良いと考えたの」
確かに、私の防御力を鍛えるくらいなら【結界】の強度を上げる訓練をした方が遥かに効果は良さそうだ。
「そして【結界】に必要なのはそれを維持する出力と集中力、何よりも攻撃を受ける精神力が必要なのよ」
わぁ〜、もうダメだぁ。
「と、言うわけでこれからアトゥイ達に攻撃をしてもらうから、ハクアちゃんは【結界】を使ってそれを防いでちょうだい」
「待って、ちょっと待ってそれ全員でボコるってことだよね!? そういうイジメみたいの良くない。ダメ絶対!」
「大丈夫よハクアちゃん。イジメじゃなくて修行だから」
「その一言で全てが許されるわけじゃないんだよ!? もう構図がイジメの構図なんだからやめるべきですよ。ほら、皆もそう思ってるよ」
私がアトゥイ達に目を向けると一斉に逸らされた。
こんなところだけ覚えが早い!?
「やっぱりダメだと思うの! その内メディアミックスとかされたら、結局コンプラに引っかかって表現変えるんだから、そういうのはやらない方向で行く方が後々絶対楽になるんだよー!?」
「おばあちゃん。時々ハクアちゃんの言ってること分からなくなるのよね?」
「大丈夫ですよ白亜さん」
「何がだよ!?」
私の魂の叫びにテアが優しい微笑を浮かべて諭しにかかる。
「そんな日は来ませんから」
「ド畜生!」
「あ、あのっ、水龍王様!」
「何かしらアトゥイ?」
「えっ、えーと、私達としてもこの状況でハクアを攻撃するのはなんというか、やりにくいと言いますかその……」
いいぞ! 頑張れアトゥイ!
「そう。他もそうかしら?」
アトゥイ程ではないが、それぞれが多少難色を示す。
おお、流れがこっちに来た。
「うーん。困ったわね。じゃあ、代わりにそっちの───」
「ギャース!?」
「チッ!」
おばあちゃんが少し離れたミコト達に声を掛けた瞬間、その言葉を待ってましたと言わんばかりに攻撃が飛んできた。
なんとか防御に成功するが、あと少し遅かったら防ぎ切れなかった。
多分、話の流れ的に自分達に振られると思って、私に気が付かれないように準備していたであろう速さだ。
「何しやがんでいトリス!」
そう、攻撃してきたのはなんと、と言うほど意外でもなんでもないトリスだった。
「何をするだと? 貴様はこの里に来てからどれほど妾に迷惑を掛けたと思っている?」
「……知らんな。ってギャース!?」
「ふっ、妾が特別にちゃんと貴様の修行とやらに付き合ってやるから安心しろ。ちゃんと殺ってやる」
「今絶対字が違ったろう!?」
「問答無用」
「ギャース!? 後で絶対仕返しするからなこのブラコンドラゴンがァァァーーー!」
こうして私の【結界】強化訓練が始まったのだった。
「まあ、なんて言うか、最後まで挑発するところがハクアらしいっすよね?」
「なの」
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「はぁはぁはぁ、あー……し、死ぬ。死ぬかと思った……」
流石に修行という体を崩さない範囲、ギリギリの攻撃だったので、なんとか防ぎきれたが半日以上ぶっ続けだとは思わなかった。
「いや、なんだかんだとその一言で終わるあたり、やはりハクアは凄いと思うのじゃ」
「確かにっす」
「くっ、はぁはぁ、まさか全て防ぎ切られるとは……」
「トリスもお疲れ様なの。威力そこそこでもあそこまで、連続で撃ち込み続ければ疲れて当然なの」
「二人とも頑張ったわね。特にハクアちゃんの【結界】は最初より格段にレベルが上がって良かったわ。やっぱり良い修行方法だったわね」
もう否定すらしまいて……。
「さて、でもこれで最低限の準備は整ったわね」
「なんて?」
えっ、最低限? 毎日死にかけてるんですが?
「ハクアちゃん。明日は休養日にするわね?」
首筋をゾワリと悪寒が走る。
あっ、これさっきよりもヤバい奴だ。
「そして明後日、ハクアちゃんとミコト様には双龍の儀を受けてもらいます」
「な、なんだってぇー!」
「ハクア。絶対忘れてたじゃろ?」
「そ、そんな事ないよ?」
うん、あれだ。なんかあったよねそんな話も。覚えてる覚えてる。
「ふふふ、忘れてるとは頼もしいわねハクアちゃん」
……笑顔の圧が強い。
双龍の儀と呼ばれるものが如何なるものか全く知らないけど、結局はそれもいつも通りの展開だと思い直して、明日はゆったり寝てよう。そう心に決める私であった。
はい。現在の私は木の幹に括り付けられている状態であります。しかも括り付けてる物品の鎖、どう見ても普通のものではなく、封印系の術式が込められている呪具という念の入れようだ。
普通封印か呪具かどっちかだと思うの……いやいや、普通はロープでもなくてこんなことしないんだよ!?
そんな私の言葉を聞いたおばあちゃんは、あらあらうふふといつもの淑女感が滲み出ている。
そしておばあちゃんの前にはアトゥイやレリウスを初めとした、新規修行参加組が私を半円状に取り囲むように配置されている。
イジメ感が半端ない配置と構図だ。
ちなみに他の皆はそれを少し離れた位置で見ている。
いや、見てないで助けて。そしてテアとソウは楽しそうね!
「おばあちゃんもね必死に考えたの」
薄情な奴らに恨みがましい視線を送っていると、おばあちゃんが頬に手を当てて、困ったわポーズで語り始める。
「えっと、何をでしょう?」
きっと私にとっては地獄の扉でしかないものに手をかける。
だってやらないと進まないから!
「今までハクアちゃんを鍛えてきたけど、正直そろそろやることが少なくなってきたのよ」
「なんと!?」
僥倖、僥倖である!
やることが少なくなってきたという事は、今までのものを継続していくしかなく、新規のものは増えないとみていいだろう。
私にこんな幸運が訪れるとは!?
「そっ、そっかぁ。それは残念だね。うん、残念残念」
嘘である。めっちゃ嬉しい。
しかしそうなると一つだけ分からないことがある。
「で、それがどうしてここに繋がりますの?」
そう、それは今の私の現状だ。
「ええ、そこでおばあちゃん、テア様達と色々と話し合ったのよ」
見る。
満足そうに頷く二人が居る。
「ハクアちゃんは種族としての肉体的スペックはもう既に、この世界でもかなり上位の位置に居るの」
納得は出来ないが確かにそうだろう。
物理面で最強種に近い鬼の身体、魔法面で最強種に近く、物理面でも優秀な竜の身体。
その二つが同居する私という存在は、存在だけならチート級と言っても過言ではない。
敵として出逢えば災害級の生物だ。
まあ、私個人としてはなんか知んないけど、防御面がすぐに頭打ちになるから、結局そんなに強くないんだけど。
皆に言わせれば、ここまでの肉体スペックがあって、このステータスというのが、悪い意味でバグキャラになっているくらいだ。
「それでね。今までは防御面を補いつつ、得意な攻撃方面と力の制御に力を入れてたけど、肉体も成熟してきたし、遂に防御面にも力を入れることにしたの」
うん。この時点で死の予感しかしない。
見る。
すごくいい笑顔でサムズアップしながら頷く二人。
安心しろと言わんばかりだが、どこにも安心要素などない。
「でもハクアちゃんは元から上がりにくいのに、加護や特性で特に防御のステータスは上がりにくいじゃない?」
「……はい」
それ私のせいじゃないけどね。でも、そうしないともうとっくに死んでるんだよなぁ。
「そこでおばあちゃん達は、防御力を鍛えるんじゃなくて、ハクアちゃんの得意な【結界】を強化すれば良いと考えたの」
確かに、私の防御力を鍛えるくらいなら【結界】の強度を上げる訓練をした方が遥かに効果は良さそうだ。
「そして【結界】に必要なのはそれを維持する出力と集中力、何よりも攻撃を受ける精神力が必要なのよ」
わぁ〜、もうダメだぁ。
「と、言うわけでこれからアトゥイ達に攻撃をしてもらうから、ハクアちゃんは【結界】を使ってそれを防いでちょうだい」
「待って、ちょっと待ってそれ全員でボコるってことだよね!? そういうイジメみたいの良くない。ダメ絶対!」
「大丈夫よハクアちゃん。イジメじゃなくて修行だから」
「その一言で全てが許されるわけじゃないんだよ!? もう構図がイジメの構図なんだからやめるべきですよ。ほら、皆もそう思ってるよ」
私がアトゥイ達に目を向けると一斉に逸らされた。
こんなところだけ覚えが早い!?
「やっぱりダメだと思うの! その内メディアミックスとかされたら、結局コンプラに引っかかって表現変えるんだから、そういうのはやらない方向で行く方が後々絶対楽になるんだよー!?」
「おばあちゃん。時々ハクアちゃんの言ってること分からなくなるのよね?」
「大丈夫ですよ白亜さん」
「何がだよ!?」
私の魂の叫びにテアが優しい微笑を浮かべて諭しにかかる。
「そんな日は来ませんから」
「ド畜生!」
「あ、あのっ、水龍王様!」
「何かしらアトゥイ?」
「えっ、えーと、私達としてもこの状況でハクアを攻撃するのはなんというか、やりにくいと言いますかその……」
いいぞ! 頑張れアトゥイ!
「そう。他もそうかしら?」
アトゥイ程ではないが、それぞれが多少難色を示す。
おお、流れがこっちに来た。
「うーん。困ったわね。じゃあ、代わりにそっちの───」
「ギャース!?」
「チッ!」
おばあちゃんが少し離れたミコト達に声を掛けた瞬間、その言葉を待ってましたと言わんばかりに攻撃が飛んできた。
なんとか防御に成功するが、あと少し遅かったら防ぎ切れなかった。
多分、話の流れ的に自分達に振られると思って、私に気が付かれないように準備していたであろう速さだ。
「何しやがんでいトリス!」
そう、攻撃してきたのはなんと、と言うほど意外でもなんでもないトリスだった。
「何をするだと? 貴様はこの里に来てからどれほど妾に迷惑を掛けたと思っている?」
「……知らんな。ってギャース!?」
「ふっ、妾が特別にちゃんと貴様の修行とやらに付き合ってやるから安心しろ。ちゃんと殺ってやる」
「今絶対字が違ったろう!?」
「問答無用」
「ギャース!? 後で絶対仕返しするからなこのブラコンドラゴンがァァァーーー!」
こうして私の【結界】強化訓練が始まったのだった。
「まあ、なんて言うか、最後まで挑発するところがハクアらしいっすよね?」
「なの」
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「はぁはぁはぁ、あー……し、死ぬ。死ぬかと思った……」
流石に修行という体を崩さない範囲、ギリギリの攻撃だったので、なんとか防ぎきれたが半日以上ぶっ続けだとは思わなかった。
「いや、なんだかんだとその一言で終わるあたり、やはりハクアは凄いと思うのじゃ」
「確かにっす」
「くっ、はぁはぁ、まさか全て防ぎ切られるとは……」
「トリスもお疲れ様なの。威力そこそこでもあそこまで、連続で撃ち込み続ければ疲れて当然なの」
「二人とも頑張ったわね。特にハクアちゃんの【結界】は最初より格段にレベルが上がって良かったわ。やっぱり良い修行方法だったわね」
もう否定すらしまいて……。
「さて、でもこれで最低限の準備は整ったわね」
「なんて?」
えっ、最低限? 毎日死にかけてるんですが?
「ハクアちゃん。明日は休養日にするわね?」
首筋をゾワリと悪寒が走る。
あっ、これさっきよりもヤバい奴だ。
「そして明後日、ハクアちゃんとミコト様には双龍の儀を受けてもらいます」
「な、なんだってぇー!」
「ハクア。絶対忘れてたじゃろ?」
「そ、そんな事ないよ?」
うん、あれだ。なんかあったよねそんな話も。覚えてる覚えてる。
「ふふふ、忘れてるとは頼もしいわねハクアちゃん」
……笑顔の圧が強い。
双龍の儀と呼ばれるものが如何なるものか全く知らないけど、結局はそれもいつも通りの展開だと思い直して、明日はゆったり寝てよう。そう心に決める私であった。
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