ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
なんでハクアはアレで会話が成立してるんっすか?
さーて、どうすっぺ。
現在私は大いにお悩み中なのである。
そう、ハクアさんは悩めるお年頃なのだ! ……なんか違う。でも悩んでいるのは本当なのである。
それというのもここのモンスターが悪い。
HP、防御力が低い代わりに高火力でリポップが早い、オマケに一匹いると馬鹿みたいに沢山寄ってきて乱戦必至とか馬鹿じゃないの?
前を行くドラゴン共ならまだしも、私やユエ(特に私)の防御力では一撃でも危ない。
そんな奴らをまともに相手していられるかと言えばNOである。
そんなこんなで寄り付かれる前に本当の意味でサーチアンドデストロイな、見敵必殺を地で行っている訳だが、これ私合格出来るのだろうか?
この試練のコンセプトは恐らく集団戦だ。
多対多の戦い。それに置ける自分の立ち位置と役割りを明確に理解出来るか、そしてそれを素早く理解し行動に移せるか、それがコンセプトと言っても良いだろう。
そんな中私はどうかと言えば、乱戦になるのを避けその前に叩いている。これではコンセプトをまるっと無視しているのと変わらない。
しかも前の集団とは明らかに協調する気もないという……。
いや、だって、ほぼほぼ友好的じゃないとわかってて手を組むメリットはないんだよ? むしろ後ろから撃たれる可能性の方が高いんだから逃げますよ?
しかし、それで合格出来るのか? と言われれば悩んでしまうのである。
前を見れば休憩中のドラゴン共は、声こそ聞こえないものの、熱い議論的なものを交わしてアオハル的なことをしてポイントを稼いでいる。
だってこの程度のダンジョンをドラゴンが手こずる訳がないんだよ?
焼け石に水程度でも協調性を見せようと、アオハルの邪魔にならないよう、休憩中はあいつらの分のモンスターも間引いているが、これくらいでは評価されないだろう。
くそう。あいつら上手くやりやがって。
私と違い、最初から苦戦するフリをして乱戦に持ち込んでいたドラゴン達のやり口、その巧妙なやり口に嫉妬中なハクアさんです。
ドラゴンがこの程度で苦戦する訳がない。考えられるのは乱戦に持ち込む事で、奴らは評価を上げようとしているのだ!
今更私が真似しても更に手を抜いてるようにしか見えないだろう。何より同じ事をしたら特に私が無事に済む保証がないから出来ない。
くそう、ドラゴンってやり方が汚い……。
この難問をどうしたものか。
私の悩みはまだまだ続く。
▼▼▼▼▼▼▼
「と、今頃白亜さんは考えている頃ですね」
「いやいや、あれってそうじゃないっすよね? 普通に苦戦して普通に乱戦になってるだけっすよね?」
「そうだねー。でもハクちゃんからしたら、自分よりも優秀で強い竜達が、集団戦になるとあんなに苦戦するなんて微塵も思ってないんだよ。まあ、私も想像以上に酷くて驚いてるけど……」
「……なんか、グサッときたの」
「確かにっす」
自分の事ではないとはいえ、自分達の時も似たり寄ったりだった事を思い出し、聡子の言葉にダメージを食らう二人。
「しかし実際どうなんじゃ? 確かに協調性という一点に於いては劣っているようにも見えるが?」
「確かにミコト様の言う通りっすね」
「なんだ? お前達、気が付いていないのか?」
「何がなの? 火龍王様」
「よく思い出せ。あの者達が戦闘中、一度として横からの奇襲は成功していなかったはずだ」
地龍王が引き継いだ言葉に確かにと頷く。
言われてみれば敵の増援はほとんどが前からのみ、横穴からの増援は偶に来るくらいだったはずだ。
「そう、ハクアちゃんは見えない部分ではちゃんと協調していたわよ。前から来る敵は手を出さなかったけど、横穴からの奇襲はあの子達に余裕がある時しか流していなかったのよ」
「そんな事までしてたんっすか」
「それに、ハクアのやっている事がわかった今、あそこまで余裕があるハクアを不合格とは誰も言わない」
まとめるようにそう言って映像に視線を移す風龍王。そこにはもう少し休憩が長くなると思ったハクアが、美味しそうな料理を作っている光景が映り込んでいる。
ダンジョン攻略の途中だと言うのに、レジャーシートまで敷いて本格的に作っている姿は、さながらキャンプ中の一場面。とてもじゃないがダンジョン攻略中とは思えない。
そしてその映像はまさに毒、ハクアのせいで料理の味に目覚めてしまったドラゴン達には刺激が強すぎる猛毒だ。
しかも何やら映像のアングルが、何故かテレビのグルメ番組さながらのカメラワークなものだから、観客達にとってはたまったものではない。
そして何より理由はもう一つ。
「はあ〜、ハクアの料理は相変わらず美味そうっすね」
「本当なの」
「ああ、あれも食ってみたいものだ」
「「「確かに」」」
その映像を観ながら、龍王一行はテアの作って来た弁当に舌鼓を打っている最中だったりする。
本来なら香りのそう強くない弁当だが、目の前の映像では美味しそうな料理が作られ、今まさに食事が始まっている。
そして自分達の近くでも美味しそう弁当を食べてる龍王一行。上位者故に何も言えず、空腹を訴える腹にはドラゴンとしての嗅覚が匂いを鋭敏に伝えてくる。
長丁場になる事がわかっていたから自分達でもツマミは持ってきた。だが、目の前で、自分達の近くで、あんなものを食べられたら、自分達の用意した物などなんとみすぼらしい。
この時、会場の心は一つになった。
つまり……超食いてぇ。
そして屋台が無くなった原因であるアカルフェルへの恨みも人知れず膨れ上がるのだった。
そんな空気になっている事など露知らず、ハクア達の食事も終盤に差し掛かる。
一応ダンジョン内な事に配慮して、短時間で作れ、短時間で食べられる物にしたようだ。
完全に配慮の方向は間違っている。
『くぅーん』
『ガウーウ』
『キューン』
『いやいやお前達、そんな声出すなよ。野性どこいったよ?』
『しょうがない。あるじのご飯美味しい』
どうやら早々に食べ終わったケルベロスが、無くなってしまったご飯を前に嘆いているようだ。
そこにはつい少し前まで、立派にダンジョンの中ボスを務めていた面影など何処にもない三つ首のワンコがいた。
『しょうがないなぁ。ほら、多めに作ってあるからお土産に持ってきな。喧嘩しないで食べろよ』
『『『ワン!』』』
ハクアに持たせてもらったお土産を受け取り、嬉しそうに尻尾をブンブンと振り回すケルベロスを見て、本当にただのワンコだが、番犬として役に立つか心配になっきたハクアだった。
『ガウガウ』
『へっ? お礼?』
『ワウーン』
『ほうほう、地獄の炎。なんそれ、少し心躍るワードなんだが』
『ガウ、ワウ、ワフンフ、が〜う』
『ふむふむ。性能は私の【黒炎】と同じ、いや、完全な上位互換かぁ。しかも呪いの代償も無くなって威力が上がると……ほほう』
『ワッフ、ワッフ』
『マジか! 炎の威力だけじゃなくて、相手が受ける呪いの効果も段違いと。いいねいいね』
『わふー』
『OK。まずは【黒炎】出せばいいのね』
「……あの、なんでハクアはアレで会話が成立してるんっすか?」
映像の向こうで繰り広げられる不可思議なやり取りに、我慢が出来なくなったシーナが遂にツッコミを入れる。
「わふわふしか聞こえないの」
「まあ、白亜さんですから」
「ですねー」
「ああ……ツッコミ入れたいのに納得しとる自分がおるのじゃ」
テア達の言葉がおかしいと思うのに、心の底から納得している自分に愕然としながらミコトは映像に視線を戻す。
そこではハクアが黒い炎を出し、ケルベロスがその炎に自分の口から小さく、より黒い漆黒に輝く炎を吹き掛けている。
『ムム、結構難しい?』
『ガウガウガウ』
『わふわふ』
『なるほどなるほど』
真ん中頭が炎を出し、両側の頭が何やらハクアに吠えては、ハクアがうんうん頷いている。
そして数秒後。
一際大きく炎が上がると、ケルベロスが炎を吐くのを止め、満足そうに三つの頭がうんうんと頷いている。
『おお、本当に覚えられた。これで次からは使えるの?』
『ガウ』
『わふ』
『ワン』
『ありがとね』
「で、本当に覚えると……なんというか、ハクアは予想外な事ばかりじゃな」
ケルベロスを送還して見送るハクアを観ながら、ミコトは思わずと言ったふうにそう呟く。
地獄の炎などそんなもの、自分達のような龍であっても扱えるものではない。それをこんな簡単に短時間で手に入れたハクアに、呆れるやら、感心するやらといったよう。
「ハクちゃんの行動は私達にも分からないからね」
「そうですね。神ならばその気になれば天地創造も出来ますが、白亜さんの行動予測は想像も出来ないですからね。神などと言っても所詮はその程度と思い知りますよ」
「比べるスケールがデカすぎないか?」
「むしろ、そのレベルの方達でも予測不能なハクアってどうなんじゃ?」
ミコトの言葉はこの場のテアと聡子以外全員の代弁のようだった。
現在私は大いにお悩み中なのである。
そう、ハクアさんは悩めるお年頃なのだ! ……なんか違う。でも悩んでいるのは本当なのである。
それというのもここのモンスターが悪い。
HP、防御力が低い代わりに高火力でリポップが早い、オマケに一匹いると馬鹿みたいに沢山寄ってきて乱戦必至とか馬鹿じゃないの?
前を行くドラゴン共ならまだしも、私やユエ(特に私)の防御力では一撃でも危ない。
そんな奴らをまともに相手していられるかと言えばNOである。
そんなこんなで寄り付かれる前に本当の意味でサーチアンドデストロイな、見敵必殺を地で行っている訳だが、これ私合格出来るのだろうか?
この試練のコンセプトは恐らく集団戦だ。
多対多の戦い。それに置ける自分の立ち位置と役割りを明確に理解出来るか、そしてそれを素早く理解し行動に移せるか、それがコンセプトと言っても良いだろう。
そんな中私はどうかと言えば、乱戦になるのを避けその前に叩いている。これではコンセプトをまるっと無視しているのと変わらない。
しかも前の集団とは明らかに協調する気もないという……。
いや、だって、ほぼほぼ友好的じゃないとわかってて手を組むメリットはないんだよ? むしろ後ろから撃たれる可能性の方が高いんだから逃げますよ?
しかし、それで合格出来るのか? と言われれば悩んでしまうのである。
前を見れば休憩中のドラゴン共は、声こそ聞こえないものの、熱い議論的なものを交わしてアオハル的なことをしてポイントを稼いでいる。
だってこの程度のダンジョンをドラゴンが手こずる訳がないんだよ?
焼け石に水程度でも協調性を見せようと、アオハルの邪魔にならないよう、休憩中はあいつらの分のモンスターも間引いているが、これくらいでは評価されないだろう。
くそう。あいつら上手くやりやがって。
私と違い、最初から苦戦するフリをして乱戦に持ち込んでいたドラゴン達のやり口、その巧妙なやり口に嫉妬中なハクアさんです。
ドラゴンがこの程度で苦戦する訳がない。考えられるのは乱戦に持ち込む事で、奴らは評価を上げようとしているのだ!
今更私が真似しても更に手を抜いてるようにしか見えないだろう。何より同じ事をしたら特に私が無事に済む保証がないから出来ない。
くそう、ドラゴンってやり方が汚い……。
この難問をどうしたものか。
私の悩みはまだまだ続く。
▼▼▼▼▼▼▼
「と、今頃白亜さんは考えている頃ですね」
「いやいや、あれってそうじゃないっすよね? 普通に苦戦して普通に乱戦になってるだけっすよね?」
「そうだねー。でもハクちゃんからしたら、自分よりも優秀で強い竜達が、集団戦になるとあんなに苦戦するなんて微塵も思ってないんだよ。まあ、私も想像以上に酷くて驚いてるけど……」
「……なんか、グサッときたの」
「確かにっす」
自分の事ではないとはいえ、自分達の時も似たり寄ったりだった事を思い出し、聡子の言葉にダメージを食らう二人。
「しかし実際どうなんじゃ? 確かに協調性という一点に於いては劣っているようにも見えるが?」
「確かにミコト様の言う通りっすね」
「なんだ? お前達、気が付いていないのか?」
「何がなの? 火龍王様」
「よく思い出せ。あの者達が戦闘中、一度として横からの奇襲は成功していなかったはずだ」
地龍王が引き継いだ言葉に確かにと頷く。
言われてみれば敵の増援はほとんどが前からのみ、横穴からの増援は偶に来るくらいだったはずだ。
「そう、ハクアちゃんは見えない部分ではちゃんと協調していたわよ。前から来る敵は手を出さなかったけど、横穴からの奇襲はあの子達に余裕がある時しか流していなかったのよ」
「そんな事までしてたんっすか」
「それに、ハクアのやっている事がわかった今、あそこまで余裕があるハクアを不合格とは誰も言わない」
まとめるようにそう言って映像に視線を移す風龍王。そこにはもう少し休憩が長くなると思ったハクアが、美味しそうな料理を作っている光景が映り込んでいる。
ダンジョン攻略の途中だと言うのに、レジャーシートまで敷いて本格的に作っている姿は、さながらキャンプ中の一場面。とてもじゃないがダンジョン攻略中とは思えない。
そしてその映像はまさに毒、ハクアのせいで料理の味に目覚めてしまったドラゴン達には刺激が強すぎる猛毒だ。
しかも何やら映像のアングルが、何故かテレビのグルメ番組さながらのカメラワークなものだから、観客達にとってはたまったものではない。
そして何より理由はもう一つ。
「はあ〜、ハクアの料理は相変わらず美味そうっすね」
「本当なの」
「ああ、あれも食ってみたいものだ」
「「「確かに」」」
その映像を観ながら、龍王一行はテアの作って来た弁当に舌鼓を打っている最中だったりする。
本来なら香りのそう強くない弁当だが、目の前の映像では美味しそうな料理が作られ、今まさに食事が始まっている。
そして自分達の近くでも美味しそう弁当を食べてる龍王一行。上位者故に何も言えず、空腹を訴える腹にはドラゴンとしての嗅覚が匂いを鋭敏に伝えてくる。
長丁場になる事がわかっていたから自分達でもツマミは持ってきた。だが、目の前で、自分達の近くで、あんなものを食べられたら、自分達の用意した物などなんとみすぼらしい。
この時、会場の心は一つになった。
つまり……超食いてぇ。
そして屋台が無くなった原因であるアカルフェルへの恨みも人知れず膨れ上がるのだった。
そんな空気になっている事など露知らず、ハクア達の食事も終盤に差し掛かる。
一応ダンジョン内な事に配慮して、短時間で作れ、短時間で食べられる物にしたようだ。
完全に配慮の方向は間違っている。
『くぅーん』
『ガウーウ』
『キューン』
『いやいやお前達、そんな声出すなよ。野性どこいったよ?』
『しょうがない。あるじのご飯美味しい』
どうやら早々に食べ終わったケルベロスが、無くなってしまったご飯を前に嘆いているようだ。
そこにはつい少し前まで、立派にダンジョンの中ボスを務めていた面影など何処にもない三つ首のワンコがいた。
『しょうがないなぁ。ほら、多めに作ってあるからお土産に持ってきな。喧嘩しないで食べろよ』
『『『ワン!』』』
ハクアに持たせてもらったお土産を受け取り、嬉しそうに尻尾をブンブンと振り回すケルベロスを見て、本当にただのワンコだが、番犬として役に立つか心配になっきたハクアだった。
『ガウガウ』
『へっ? お礼?』
『ワウーン』
『ほうほう、地獄の炎。なんそれ、少し心躍るワードなんだが』
『ガウ、ワウ、ワフンフ、が〜う』
『ふむふむ。性能は私の【黒炎】と同じ、いや、完全な上位互換かぁ。しかも呪いの代償も無くなって威力が上がると……ほほう』
『ワッフ、ワッフ』
『マジか! 炎の威力だけじゃなくて、相手が受ける呪いの効果も段違いと。いいねいいね』
『わふー』
『OK。まずは【黒炎】出せばいいのね』
「……あの、なんでハクアはアレで会話が成立してるんっすか?」
映像の向こうで繰り広げられる不可思議なやり取りに、我慢が出来なくなったシーナが遂にツッコミを入れる。
「わふわふしか聞こえないの」
「まあ、白亜さんですから」
「ですねー」
「ああ……ツッコミ入れたいのに納得しとる自分がおるのじゃ」
テア達の言葉がおかしいと思うのに、心の底から納得している自分に愕然としながらミコトは映像に視線を戻す。
そこではハクアが黒い炎を出し、ケルベロスがその炎に自分の口から小さく、より黒い漆黒に輝く炎を吹き掛けている。
『ムム、結構難しい?』
『ガウガウガウ』
『わふわふ』
『なるほどなるほど』
真ん中頭が炎を出し、両側の頭が何やらハクアに吠えては、ハクアがうんうん頷いている。
そして数秒後。
一際大きく炎が上がると、ケルベロスが炎を吐くのを止め、満足そうに三つの頭がうんうんと頷いている。
『おお、本当に覚えられた。これで次からは使えるの?』
『ガウ』
『わふ』
『ワン』
『ありがとね』
「で、本当に覚えると……なんというか、ハクアは予想外な事ばかりじゃな」
ケルベロスを送還して見送るハクアを観ながら、ミコトは思わずと言ったふうにそう呟く。
地獄の炎などそんなもの、自分達のような龍であっても扱えるものではない。それをこんな簡単に短時間で手に入れたハクアに、呆れるやら、感心するやらといったよう。
「ハクちゃんの行動は私達にも分からないからね」
「そうですね。神ならばその気になれば天地創造も出来ますが、白亜さんの行動予測は想像も出来ないですからね。神などと言っても所詮はその程度と思い知りますよ」
「比べるスケールがデカすぎないか?」
「むしろ、そのレベルの方達でも予測不能なハクアってどうなんじゃ?」
ミコトの言葉はこの場のテアと聡子以外全員の代弁のようだった。
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