ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

やっぱり手前のせぇかクソ駄神がぁ!!

 最悪だ。コイツ本当に最悪だ。
 ある意味今まで一番嫌なフラグ建ててきやがった。しかも若干の言ってやったぜ感がすげー腹立つ。

「落ち着いた所で続き良いか?」

「くっ、神という奴はどうしてこうも私をイラつかせるのか……まあいいや」

 この野郎と思いながらも、これ以上この話を広げられて本当にフラグになったら困るので、話に乗っかる事にする。

「せっかくの話す機会、聞きたい事があれば答えられる範囲で答えてやるぞ」

「ムッ……」

 これは美味しい提案ではある。

 ならばと私は気になっていた事、ここは何処なのか? 今私はどうなっているのか? ここに呼んだ理由、何故このタイミングだったのかの四点に付いてとりあえず聞いてみる。

「まずここが何処なのかという疑問だな。ここは幽世かくりよと呼ばれる世界だ」

「……あれ? 私本当に死んでる?」

「い、いや、ギリギリ生きてる」

「あの状況でギリギリってダメじゃね!?」

「だ、大丈夫だ。きっとなんとかなる」

 鬼神の答えに、直前の記憶を辿ってみるが、生き残る出目が見えずに思わず叫ぶ。
 そんな私に若干の動揺を見せつつ、鬼神が根拠の無い希望的観測を述べ指をパチンッと鳴らす。

 するとまたしても世界が歪み、その一瞬後にはつい先程まで私が戦っていたボス部屋の光景に変わった。

 そしてそこには壁にもたれ掛かり気絶する私と、その目の前で刀を上段に振りかぶり止まる鎧武者の姿。

「……な、大丈夫だろ?」

「こっち向いて言えや」

 明らかなほどクライマックスな光景から、目を逸らしつつそんな事をのたまう鬼神にツッコミを入れる。
 しかして鬼神様は決してこちらを見ようとしない。強い。

「はぁ……まあ、後の事は後の私に任せよう」

「前から思っていたがその考え方でどうにかなるのが凄いな」

「そりゃどうも」

 今ごちゃごちゃと考えた所でしょうがない。その場の流れに身を任すのが一番良いだろう。
 下手に決め打ちすると、逆に選択の幅が少なくなると言うものだ。

「それで次はここに呼んだ理由だが、第一に危なそうだったからだな」

「あー、それは普通に感謝」

 気絶してるからね。呼ばれてなければそのまま切り捨てられていただろう。

「そして第二に己がずっと貴様と話してみたかったからだ」

「ふむ。だったらこのタイミングじゃなくても良かったのでは?」

「いや、むしろこのタイミングでなければ貴様とは話せなかった」

「何故に?」

「さきほども言ったが己は封印されている身だ。だから他の神ほど自在に呼び寄せられる訳ではない」

「ほほう」

 そんな頻繁に呼び出されてない。とか言いたいけど実際呼び出されてるからなぁ。

「そもそも召喚された勇者や転生者でも、貴様ほど交流を持つ事は普通有り得ない」

「マジかよ。アイツらガッツリ関わってくんだけど?」

 そういや他の奴からは駄女神達の事あんまり聞いた覚えないな。まあどうでも良いが……。

「それだけ貴様が特殊な立ち位置だということだ」

 特殊な立ち位置……ね。確かにテア達とも元の世界から知り合いってだけでも特殊ではあるか。
 なんか他にも隠れてそうな気がするが、まあそれは聞いても答えは帰ってこないだろうな。

「じゃあなんで今回は呼べたんだ?」

「ああ、それも今回の呼んだ理由の一つだ。最初に話したが己は力を奪われ、ここ、幽世に封印された」

「そしてその奪われ……もとい抜け出した力が憤怒の邪神って話しだったよね?」

「そうだ。他の神により完全に封印された己だが、力ある同じ鬼族の怒りに共鳴して封印が緩んだ」

「なるほど。そして力だけが抜け出して、その力を共鳴した鬼が取り込んだ事で、神の力を手に入れた鬼。憤怒の邪神が誕生したのか」

「その通りだ。そして今の己はほとんど残りカスに近い状態。抱き続けていたこの身を焦がし尽くすような怒りも、力と一緒に抜け出た」

 それもその鬼が邪神として覚醒した理由の一つか。

「それでだな。その後の数百年暇を持て余した己は、様々な暇潰しをしたが、その中の一つが趣味になった」

 おや? 話の流れが急激に変わらなかったか?

「その趣味と言うのが装備の作製でな。その中でも己の最高傑作が、貴様の手に入れた地獄門シリーズだ」

 その言葉に自分の腕に装備している籠手を見下ろす。

 そうかこれコイツの作品なのか。

「貴様の仲間にも鍛治職人が居るからわかると思うが、装備の性能、スキルは製作者もある程度は方向性を決められるが、ほとんどは使った素材が決め手となる」

 うむ。確かにその辺は前コロに習った。
 まあ、そこに腕や道具の善し悪しが加わるから、確実にその素材を使えばスキルが付く訳でもないらしいけど。
 そんな中、私産の素材はほぼ確定で、狙ったスキルが付くから最近一部の目が怖いんだろうけど。

「それでだな。何度も失敗を繰り返しほぼ全て死蔵したが、その中で唯一現世に出せたのが貴様の持つそれなんだが、その……地獄門は素材として優秀なんだが、一つ困った性質が付くらしくてな」

「困った性質?」

「そうだ。あー……素材が素材だけに確定で必ず呪い系統のスキルが付くのと、素材同士の結び付きが強くて引き合う性質がある」

「おい……」

「装着者を守る為に、呪いを抑えようとしたが上手くいかず、それならばと呪いの方向性を決めて強化したら上手く行ってな」

 話の流れが読めてきた私は、ちょっとストレッチを始める。別に他意はない。

「それで呪いと引き合う性質を高めた結果、シリーズ装備を一つでも手に入れると、ダンジョンに入った際、確率で地獄門装備が獄門鬼として現れるようになっ──」

「やっぱり手前のせぇかクソ駄神がぁ!!」

「ぐはぁ!?」

 案の定の着地地点に思わず手が出る私。
 思い切り頬に突き刺さった拳の勢いに、空中を錐もみしながら吹っ飛ぶ鬼神は、めちゃくちゃな回転のまま顔面から地面に着地してピクピクしてる。
 どうやらほぼ全ての力を失っていると言うのは本当のようだ。

 しかし私は何も悪くないと思う。

「お、己は一応貴様の種族の神なのだから、もう少し敬意を持っても良いと──」

「やかましいわ駄神が! とっとと続き話せ」

「まあいい、結論から言えばここに呼べたのはダンジョンが幽世に近しい性質を持ち、己が制作した地獄門装備があった事、獄門鬼出現の条件が揃った事、貴様が己の眷属であった事、そしてあの場で気絶した。それら全てが折り重なったからだ」

 ふむ。確かにここまで要素が噛み合わないと繋がれないと言う事は、封印はかなり強力に作用しているのだろう。

「じゃああの鎧武者はその獄門鬼ってので、地獄門の鎧を纏ってる鬼神の力が宿った敵って事か?」

「そうなるな」

 クソ、力を失ってる癖にちゃっかり道具には鬼神の力が作用してるって狡くね。

「しかし、なんでお前が作った装備がダンジョンなんかにあったんだ?」

「ああ、それはだな──」

 そこから先の鬼神の話はなかなか面白い内容だった。

 この世界に存在する装備は幾つかの種類に分けられる。
 一つはもちろんこの世界に暮らす人々が作った物。もう一つはダンジョンが生み出す物だ。
 この世界の住人が作った物は、当然ながらこの世界の素材で作られている。対してダンジョンが生み出した物の中には、よく分からない素材の物が含まれている。

「そういった物の中のひと握りの物が己のように神が作った作品だ。趣味で作った物もあれば、仕事として、贖罪の一環というのもあるな」

「つまり、お前ら神が作った物がダンジョンを通して、世界に配られてるって事か?」

「その認識でも間違っていないが、ダンジョンは世界そのものと密接な関わりがある。そしてそれを管理している神の領域で作られた物品が、ダンジョンの格に応じて宝として勝手に配置される仕組みになっている」

「……選ばれる物はランダム。とはいえそれがシステムとして成り立ってるって事は、ダンジョンは世界を維持する機構の一つって事か?」

「驚いた。今の話しだけでそこまで理解するか……」

 続きを聞こうとしたがそれ以上は話してくれそうになかった。
 だがそれが本当だとすれば、ダンジョンに宝がある事自体が、人を誘き寄せる餌なのかもしれない。
 大局的に見れば何人かの人の死よりも、世界の存続、管理の方が重要度は上。
 ダンジョンが維持機構の一つだとすれば、ダンジョンの中に人を入れるのが目的なのか、それとも……外で生まれたモンスターとは少し異なる、ダンジョンのモンスターを退治させるのが目的なのか。
 それは分からないが、どうやらダンジョンというものは、私が思っている以上の役割があるようだ。

 まあ、宝さえくれれば私はどうでも良いのだが。

 ちなみに装備の中には、力ある存在が武器や防具の形になった物というのも含まれるらしく、特に聖剣では精霊が多く、魔剣では悪魔なんかが多いらしい。

 そして勇者の為の聖剣なんかは、勇者の力を高める為にも高難度ダンジョンの奥に配置される仕組みだとか。

 ……めんどくね?

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