ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

だから私が何をしようと悪くない!

「ふぅ、やっと終わった」

 知覚でわかった部屋の数は二十個ほど、その全てに爆弾を投げ終わるまで、実に三十分も掛かってしまった。

 比較的大部屋のモンスターが沢山待ち構える部屋に転移する事が多かった。

 やはり殺意は高めらしい。

 しかもそこからただ転移して階段を見付けるのに更に十分も掛かった。転移数は実に百回を超える私の運の無さにガッカリである。
 新しいスキルも増えなかったし、なんの収穫も無かったなり。

 ガッカリしながら下に降りると、今度はただの廊下がみえた。

 いや……正確に言えばただの。ではないけど、
 見た目は普通の石造りの廊下である。
 ただまあ、案の定というかなんというか罠はてんこ盛りなのだ。そしてどうやらモンスターは居ないらしい。

 罠がてんこ盛りとはいえ、非常に分かりやすい罠だから掛からないけどね。
 なんだろ、どうせ罠仕掛けるなら面白そうなの仕掛けるか、ヒリっとするくらいの仕掛けてくれないかなぁ。非常に面白味のない階層だ。

 時折ジャンプしたり、身を屈めながら歩いたり、方向転換したりしながらひたすら廊下を歩く。

「ふむふむ。これはちょっとめんどくさいなぁ」

 歩き続けて大広間に出るとこれまた面倒な仕掛けがある。一見すればなんの変哲もない大広間だが、正解のルート以外の場所を歩くとすぐさま罠に掛かる。

 とは言え……

「まあ、問題ないんだけどね」

 大広間に入ってすぐ立ち止まり、左に三歩横移動、そこから前に向かって1メートルほどジャンプして、右に十歩。
 それからも行ったり来たり、ジャンプしたりしながら反対の通路まで行く。
 すると目の前には下へと続く階段があった。

「ふむ……これじゃダメだな」

 おばあちゃんの話によると、ここはドラゴンの初心者向けダンジョン。
 それなのにこんなぬるい罠しか無いなんて間違っている。

 そう考えた私は、今来たばかりの道を走って逆走して、最初の階段へと戻ってきた。

「よし! じゃあやろうかな!」

 様々な道具を取り出した私は、気合いを入れて罠の改良を始めた。
 ▼▼▼▼▼▼
「ふぅ……こんなもんかな」

 始まりの階段から、下に続く階段まで全ての罠を改良して、更にその数も倍以上に増やした。

 そもそもここの罠は一つ一つが独立した罠なのがいただけない。

 罠とは一つに引っかかると、連鎖的に作動するから厄介なのだ。
 そうでないのなら殺意高めに絶対殺す、もしくは行動不能にしたり、次に繋がるように行動を阻害したりするモノであるべきだ。

 そして更に意識の隙をつき、認識の範囲外から意表を突く一撃を加える。それでこそ罠と呼べる。

 いや、それこそが罠だ!

 だから私は独立した罠に連鎖性を持たせ、罠と罠を繋げるように新しい罠を設置したり、改良を加えた。
 これなら頑丈なドラゴンも緊張感を持って良い訓練が出来るに違いない。

 しかし……しかし何故私は服が溶けるスライムの開発をしなかったんだ。異世界に来てからまあまあ時間が経っているのに、なんたる怠惰! もしも……もしも開発が進んでいればここに仕掛けられたかもしれないのに。
 その他にも触手とかエロトラップをしこたま付けたかった。無念。

 まあでもどう頑張っても、男と女を見分ける方法がスライム任せ以外に思い付かないから、服を溶かすスライムで限界だろうなぁ。
 ご都合主義のように女の子だけが来るダンジョンがあれば別だけど。

 まあ、それは良いとして罠の改良に一時間も掛かってしまったが、良い仕事をした後は気分も良いというものだ。

 同じように疲れてるとはいえ、ここに降りて来た時とは違う、満足のいく充足感を感じながら階段を降りていく。

 そんな私の目に映ったのは暗闇に赤く光る六つの目。

「おわお!?」

 私がそれを認識した瞬間、六つの目はいきなり襲いかかって来た。
 だが、ダンジョンのルールは一応適用されているらしく、階層を越えては来れないようで、階段に入る直前、見えない壁に阻まれその突進を止めた。

 あー、ちょっとドキドキしたぁ。

 しばらくフリーズしていると、どうやら入口に張り付いていると私が入って来ないとわかったのか距離をとる。
 それでも六つの目の正体、ケルベロスは私の事を睨み付け、唸り声を上げながら、今か今かと私が部屋に入るのを待ち構えている。

 てか、なんで中ボスみたいのが、部屋に入る前からアクティブ状態で待ち構えてるかな? そうじゃないじゃん! ボスって部屋に入ってから動かないとじゃん!
 全く、ルールはちゃんと守って欲しいよね。なんかどっかかから、お前が言うな的な声が聞こえた気がするがきっと気の所為だろう。
 私ほどルールを遵守する人間はそうはいないんだから。ん? ルールの隙をつくのは良いんだよ? むしろそれはルールに隙を作った奴が悪い。
 だから私が何をしようと悪くない!

 と、いう訳で早速ルールの隙をつかせてもらう。

 攻撃が通らないのは確認済み。腕だけ入れてもそれは同じ事、だけど攻撃以外なら通るのだ。
 取り出したのは野球のボールほどの大きさの玉。

 それを中に投げ入れると、地面に当たった瞬間にボールは砕け散る。

「「「キャイン!?」」」

 ボールが砕けた瞬間、今まで私の事を威圧していた恐ろしいケルベロスが、ただの犬のように鳴き声を上げ、顔を抑えながら縮こまった。

 それもそのはず、私が投げ入れたのは対人間制圧用の激臭ボールなのだ。
 その威力たるや、実験の為に野盗のアジトに投げ入れた時は、全員がその激臭の前に気絶するほどの威力だった。
 それがケルベロスとはいえ、犬型モンスターに使われればこうなるのは当然の結果だろう。

 しかしここで悲劇が起きる。

 そう……ケルベロスの頭が三つなのに対して、鼻を抑える前脚が二本しかないのだ!

 左右の頭は前脚でそれぞれ鼻を抑えているが、真ん中の頭は何も出来ずにオロオロとして、遂には左右の頭に向かって吠え始めた。
 しかし人間ですら気絶するほどの激臭だ。左右の頭は聞く耳持たんという雰囲気で、真ん中の頭の訴えを聞き流す。

 真ん中の頭は既に涙目だ。

 懸命に吠え、唸るがそれでも左右の頭は応じない。
 それぞれが別々の意思で体を動かせるのか、時折腕がピクピク動き真ん中に向かおうとする。
 だが、鼻を抑える事が出来ず集中力できないのか。はたまた頭一つ分では、二つ分の意思に勝てないからか、すぐにピタリと止まり、また悔しそうに力無く吠える。

 見ていてとても哀れである。

 しかもそんな真ん中の行動が気に触ったのか、あろうことか左の頭がうざったそうに頭を振り、真ん中の頭に頭突きをかました。

 その一撃を受けた瞬間、私には確かにブチリと何かが切れた音が聞こえた。

 攻撃にブチ切れた真ん中の頭は、遂に口から火の粉を散らし始め、動揺する左の頭に炎を吐き出す。
 だが、左の頭も負けていない。
 元々一匹のモンスターのケルベロスだからか、素晴らしい反応速度で、その口から凍れる吹雪を吐き出し炎に対抗する。

「おぉー!」

 手に汗握る攻防。

 これには普通に売ってたジャガイモで作った、おやつのポテチを食べる手も止まらなぬというものだ。

 続く攻防。

 しかし怒りの力が勝ったのか、炎の勢いは留まる所を知らず、遂に吹雪を乗り越え左の頭が怯んだ。

「「ギャイン!?」」

 その一瞬の隙を突き真ん中の頭が左前脚を噛みちぎった。そのあまりの痛みに左右の顔は、悲鳴のような鳴き声を上げ、真ん中の頭は痛みに耐えながら勝ち誇る。

 その驚きの展開に、視線を奪わわれながらフライドポテトを夢中で食べる。

 その馬鹿げた行為に今度は左の頭がブチ切れる。凍れる吹雪は更に勢いを増し、炎もそれに対抗するように勢いを増していく。

 しかしここで思わぬ行動を取ったのは左の頭だった。
 真ん中と左の攻防に素知らぬ顔で無視を決めこでいた右の頭、その姿を視界に入れた瞬間、今度は左の頭が右前脚を噛みちぎっのだ。

「「ギャワン!?」」

 そこから先は熾烈な攻防の連続だった。

 凍れる吹雪が吹きすさび、業火の炎が舞い散り、轟雷が轟く。
 それぞれの頭が、それぞれの力を技を知恵を使い、三者三葉の行動で一つの身体の主導権を奪いながら、文字通り付かず離れずな他の頭を攻撃する。

 観客である私はさながら怪獣映画を観る気分で、爆裂トウモロコシなる物で作ったポップコーンを頬張りながら手に汗握り観戦する。

 結果としては数十分後、すっかり忘れ去られていた私の姿を見たボロボロのケルベロスは、諦めに満ちた目で仰向けになり、降伏のポーズを取っていた。

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