ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
まっ、そんなものは私には関係ないしどうでもいいか
アカルフェルに色々と責任を擦り付けた私は、縞パンっ子ことミコトを連れ、龍の里に用意された私の部屋へと帰ってきた。 
うん。ぶっちゃけここ、なんにもなくて観光する場所すらない役立たずスポットだった。正直つまらん。
「ほほう。お主はここに住んでおるのか。というか……ここは牢獄だったはずなのじゃが。なんじゃこの部屋わしの部屋より豪華ではないか!?」
「ちょっと頑張ったから。それに住んでるっても寝るだけだけどね。その他の時間はずっとイジ──ではなくて、修行してるから」 
「おい、本音が出たぞ」
おい、馬鹿野郎! そんな事を言うなよ。どこで聞いてるかわかんないだろ!!
ミコトは私の部屋。と、いうか元牢獄を少し物色すると、そそくさとテーブルに備え付けられた椅子に陣取り、期待に満ちた目で私の事を見ている。
「ほらよ」
「おおー! これがそうか!?」
取り出し机の上に置いたのは昼食だ。
そう、龍神の娘であるミコトが何故お付きの者を撒いてまで出歩いていたのか、それはこれが原因だ。
どうやらミコトはシーナとムニと仲がいいらしく。
あの二人から、最近私の所で美味い飯を食っていると聞いて、いてもたってもいられず抜け出してきたのだそうだ。
それに連日私と共に修行している二人にお菓子を与えていたが、どうやらミコトは持ち帰られたそれを一度食べてから、どうにも我慢出来なくなったらしい。
うん。美味しいご飯に抗うのは難しいよね。
それに……涙目になって食べたいと懇願されたら私とて振舞ってやろうと思うのだよ。
そんな涙目縞パン娘は物凄い勢いで私が出したご飯を平らげていく。
まあ、私も同じペースで食べてるのだが。
「ぬあ!? それはわしが食べようとしていた肉の塊!!」
しかし所詮は食卓における早い者勝ち勝負の素人。
後で食べようと残していたらしいミートボールを、私に食われ叫んでる。
しかもその隙を狙いミコトが確保していた鶏の唐揚げを、三つほど掴み口に放り込む。
「くう、またぁ。ぬぬぬ……負けてなるかぁ!!」
悔しがる間も次々に口に放り込む私に対抗して、ミコトもスピードを上げる。
なかなかに騒がしい食卓となったが、これはこれで楽しいものだ。
▼▼▼▼
「ふぅ〜食ったのじゃ。……人間はこんなに物を作れるのじゃな」
それはある意味でドラゴンらしい言葉だ。
おばあちゃん達の話によれば、ここ数十年、若いドラゴンの世代は他種族を見下す傾向が強いらしい。
もちろん前からそういう風潮はあった。
ドラゴンは選ばれし存在。
強靭な肉体、豊富な知識を持ち、膨大な魔力を操る絶対的な強者。
それがドラゴン。
不遜に見える態度も絶対的な自信から来るもの。だがそれは決して傲慢さから来るものではなく、王者として、力ある者としての風格のようなもの。
しかし昨今のドラゴンは、力を笠に着て他種族を侮辱し、傲慢に振る舞う者ばかり。特にここ最近は顕著にそれが現れている。
その最たる原因がアカルフェルなのだ。
ここに来てからの悪名はアカルフェル絡みばかりとは、皮肉なものである。
まっ、そんなものは私には関係ないしどうでもいいか。
そう思った私は、ご飯をたらふく食べそのままベッドにダイブしたミコトを見る。
「なんじゃ〜ハクア? わしはもう食えんし動かんぞ〜」
枕に顔を埋めモゴモゴと喋るミコト。
「そうなのか? まだデザートあったんだが」
「んっんん。デザートは別腹と言うだろ?」
「現金なヤツだな」
思わず苦笑が漏れる。こいつの性格は嫌いではないかもしれない。
「ところで……」
「んー、なんじゃー?」
取り出したアイスクリームを幸せそうに食べるミコトに、疑問に思っていた事を聞く。
「お前、なんで一人称わしなんて言ってんだ? もっと言えば喋り方自体が普段は違うだろ?」
「な、なな、なんの事じゃ!? わしはいつもこんな喋り方じゃぞ」
「いや、言葉の端々から口調に慣れてないのが見てとれんだよ。やるならもっと上手くやれよ」
「うぐっ……そんなにわかりやすいか?」
「うむ」
はぁ〜と長い溜息を吐いたミコトが口調を変える。
「わたしも本当は普通に喋りたいんだけど、どうにも周りが煩くて。威厳のある喋り方を意識しろと言われてる」
「なるほどな。それで外様である私にもそんな風に話してたわけか」
「ああ、ドラゴンが他の種族に軽んじられる訳にはいかないからな」
「それはまたくだらんね」
「ハッキリ言うなぁ。まあ、わたしもそう思うけど」
アイスを食べながらそんな風に話していると、いきなり蹴破るかのように部屋の戸が開かれる。
息を切らしながら現れたのはトリス達だ。
「お〜ま〜え〜は〜出歩くなと言ったはずだぞ!」
「はぁ〜、やっと見つけたっす」
「朝から疲れたの。ムニもその美味しそうなの所望なの」
「いやいや違うんだよ。私が言われたのは黙って出歩くな。なんだよ? だから書き置きしたし黙ってはいない」
「くっ、貴様という奴は……っ!? ミコト様何故ここに!?」
怒り浸透で周りが見えていなかったトリスだが、近付いた事でミコトに気が付き驚きの声を上げる。
「なに、噂の人間に会いに来たのじゃ。そのついでに馳走になっておった」
トリス達の登場にすっかり口調が戻るミコト。
どうやら内外共に威厳は必要なようだ。
トリス達と会話を続けるミコトを見ながら、こう見えてミコトも結構苦労しているのかもしれない。と、考える。
まあ、アカルフェルの現状、さっきの奴らの態度を見ればその可能性は高いだろう。
それにさっきの奴らの態度、あれは要人を探すというよりも……。
「ハクアちゃん?」
「ふぁいっ!?」
ちょっと考え事をしている間に、いつの間にかおばあちゃん達まで来ていたようだ。
声を掛けられた事に驚き、変な声を上げてしまった。
「あらあら、ハクアちゃんがいつの間にかミコト様とまで仲良くなっていたなんて驚きだわ」
「ああ、わしとしても水龍王が育てている者に興味があったからな」
ここで七割飯の為だろうと言ったらダメなのだろうか? ダメなんだろうなぁ。
「それで、ミコト様から見てハクアちゃんはどうです?」
「そうじゃな……」
おばあちゃんの言葉にミコトがジッとこちらを見詰めてくる。
「正直、凄まじいな。源龍術を学んでさして時間が経っておらんはずなのに、既に龍歩も呼龍法も身体に染み込みつつある」
「ええ、ハクアちゃんは良くやってくれていますから」
うん。ちゃんとやらないと殺られかねないからね。
「それに……なんであろうな。何故かハクアは少し懐かしい感じがするのだ」
確かにそれは私も感じていた。初めて顔を見た瞬間、懐かしいような、なにかが共鳴するような感覚が走った。
まさかミコトも同じ事を感じていたとは……。
「あらあら、ミコト様からもここまでお褒めいただけるなんて良かったわねハクアちゃん」
「えっ? う、うん?」
何故だろう。嫌な予感がする。
あれ? 寒くないのに震えているよ私。
「じゃあそんなハクアちゃんに、おばあちゃん少しお願いしたい事があるんだけど」
えーと、おかしい。私の知ってるお願いは、こんなに笑顔なのに圧を感じるものじゃないはずなのだが……。
「そんなに身構えなくても大丈夫よ。ただちょっとお使いを頼みたいだけだから」
「お、お使い?」
「ええ、そうよ」
お使いくらいなら危険な事はないだろうか? いや、騙されてはいけない。何時でも逃げられるようにするべきだ!
「ちょっととある場所から、ある物を取ってきて貰いたいの」
うん。やっぱり雲行きが怪しくなってきた。
「それじゃあ。はい、これ」
「えっ?」
手渡されるいつもの装備。
「えっ!?」
そのまま連れ出される私。
「えぇ……」
とある場所に放り込まれる私。
「じゃあ、ここの最下層で取れる物を持ってきてちょうだい」
連れてこられたのは知らない洞窟。
その出口はおばあちゃん達が封鎖している。
……私はこれをなんていうのか知っている。
「これ普通にダンジョン攻略してドロップアイテム取って来いって事やん!?」
うん。ぶっちゃけここ、なんにもなくて観光する場所すらない役立たずスポットだった。正直つまらん。
「ほほう。お主はここに住んでおるのか。というか……ここは牢獄だったはずなのじゃが。なんじゃこの部屋わしの部屋より豪華ではないか!?」
「ちょっと頑張ったから。それに住んでるっても寝るだけだけどね。その他の時間はずっとイジ──ではなくて、修行してるから」 
「おい、本音が出たぞ」
おい、馬鹿野郎! そんな事を言うなよ。どこで聞いてるかわかんないだろ!!
ミコトは私の部屋。と、いうか元牢獄を少し物色すると、そそくさとテーブルに備え付けられた椅子に陣取り、期待に満ちた目で私の事を見ている。
「ほらよ」
「おおー! これがそうか!?」
取り出し机の上に置いたのは昼食だ。
そう、龍神の娘であるミコトが何故お付きの者を撒いてまで出歩いていたのか、それはこれが原因だ。
どうやらミコトはシーナとムニと仲がいいらしく。
あの二人から、最近私の所で美味い飯を食っていると聞いて、いてもたってもいられず抜け出してきたのだそうだ。
それに連日私と共に修行している二人にお菓子を与えていたが、どうやらミコトは持ち帰られたそれを一度食べてから、どうにも我慢出来なくなったらしい。
うん。美味しいご飯に抗うのは難しいよね。
それに……涙目になって食べたいと懇願されたら私とて振舞ってやろうと思うのだよ。
そんな涙目縞パン娘は物凄い勢いで私が出したご飯を平らげていく。
まあ、私も同じペースで食べてるのだが。
「ぬあ!? それはわしが食べようとしていた肉の塊!!」
しかし所詮は食卓における早い者勝ち勝負の素人。
後で食べようと残していたらしいミートボールを、私に食われ叫んでる。
しかもその隙を狙いミコトが確保していた鶏の唐揚げを、三つほど掴み口に放り込む。
「くう、またぁ。ぬぬぬ……負けてなるかぁ!!」
悔しがる間も次々に口に放り込む私に対抗して、ミコトもスピードを上げる。
なかなかに騒がしい食卓となったが、これはこれで楽しいものだ。
▼▼▼▼
「ふぅ〜食ったのじゃ。……人間はこんなに物を作れるのじゃな」
それはある意味でドラゴンらしい言葉だ。
おばあちゃん達の話によれば、ここ数十年、若いドラゴンの世代は他種族を見下す傾向が強いらしい。
もちろん前からそういう風潮はあった。
ドラゴンは選ばれし存在。
強靭な肉体、豊富な知識を持ち、膨大な魔力を操る絶対的な強者。
それがドラゴン。
不遜に見える態度も絶対的な自信から来るもの。だがそれは決して傲慢さから来るものではなく、王者として、力ある者としての風格のようなもの。
しかし昨今のドラゴンは、力を笠に着て他種族を侮辱し、傲慢に振る舞う者ばかり。特にここ最近は顕著にそれが現れている。
その最たる原因がアカルフェルなのだ。
ここに来てからの悪名はアカルフェル絡みばかりとは、皮肉なものである。
まっ、そんなものは私には関係ないしどうでもいいか。
そう思った私は、ご飯をたらふく食べそのままベッドにダイブしたミコトを見る。
「なんじゃ〜ハクア? わしはもう食えんし動かんぞ〜」
枕に顔を埋めモゴモゴと喋るミコト。
「そうなのか? まだデザートあったんだが」
「んっんん。デザートは別腹と言うだろ?」
「現金なヤツだな」
思わず苦笑が漏れる。こいつの性格は嫌いではないかもしれない。
「ところで……」
「んー、なんじゃー?」
取り出したアイスクリームを幸せそうに食べるミコトに、疑問に思っていた事を聞く。
「お前、なんで一人称わしなんて言ってんだ? もっと言えば喋り方自体が普段は違うだろ?」
「な、なな、なんの事じゃ!? わしはいつもこんな喋り方じゃぞ」
「いや、言葉の端々から口調に慣れてないのが見てとれんだよ。やるならもっと上手くやれよ」
「うぐっ……そんなにわかりやすいか?」
「うむ」
はぁ〜と長い溜息を吐いたミコトが口調を変える。
「わたしも本当は普通に喋りたいんだけど、どうにも周りが煩くて。威厳のある喋り方を意識しろと言われてる」
「なるほどな。それで外様である私にもそんな風に話してたわけか」
「ああ、ドラゴンが他の種族に軽んじられる訳にはいかないからな」
「それはまたくだらんね」
「ハッキリ言うなぁ。まあ、わたしもそう思うけど」
アイスを食べながらそんな風に話していると、いきなり蹴破るかのように部屋の戸が開かれる。
息を切らしながら現れたのはトリス達だ。
「お〜ま〜え〜は〜出歩くなと言ったはずだぞ!」
「はぁ〜、やっと見つけたっす」
「朝から疲れたの。ムニもその美味しそうなの所望なの」
「いやいや違うんだよ。私が言われたのは黙って出歩くな。なんだよ? だから書き置きしたし黙ってはいない」
「くっ、貴様という奴は……っ!? ミコト様何故ここに!?」
怒り浸透で周りが見えていなかったトリスだが、近付いた事でミコトに気が付き驚きの声を上げる。
「なに、噂の人間に会いに来たのじゃ。そのついでに馳走になっておった」
トリス達の登場にすっかり口調が戻るミコト。
どうやら内外共に威厳は必要なようだ。
トリス達と会話を続けるミコトを見ながら、こう見えてミコトも結構苦労しているのかもしれない。と、考える。
まあ、アカルフェルの現状、さっきの奴らの態度を見ればその可能性は高いだろう。
それにさっきの奴らの態度、あれは要人を探すというよりも……。
「ハクアちゃん?」
「ふぁいっ!?」
ちょっと考え事をしている間に、いつの間にかおばあちゃん達まで来ていたようだ。
声を掛けられた事に驚き、変な声を上げてしまった。
「あらあら、ハクアちゃんがいつの間にかミコト様とまで仲良くなっていたなんて驚きだわ」
「ああ、わしとしても水龍王が育てている者に興味があったからな」
ここで七割飯の為だろうと言ったらダメなのだろうか? ダメなんだろうなぁ。
「それで、ミコト様から見てハクアちゃんはどうです?」
「そうじゃな……」
おばあちゃんの言葉にミコトがジッとこちらを見詰めてくる。
「正直、凄まじいな。源龍術を学んでさして時間が経っておらんはずなのに、既に龍歩も呼龍法も身体に染み込みつつある」
「ええ、ハクアちゃんは良くやってくれていますから」
うん。ちゃんとやらないと殺られかねないからね。
「それに……なんであろうな。何故かハクアは少し懐かしい感じがするのだ」
確かにそれは私も感じていた。初めて顔を見た瞬間、懐かしいような、なにかが共鳴するような感覚が走った。
まさかミコトも同じ事を感じていたとは……。
「あらあら、ミコト様からもここまでお褒めいただけるなんて良かったわねハクアちゃん」
「えっ? う、うん?」
何故だろう。嫌な予感がする。
あれ? 寒くないのに震えているよ私。
「じゃあそんなハクアちゃんに、おばあちゃん少しお願いしたい事があるんだけど」
えーと、おかしい。私の知ってるお願いは、こんなに笑顔なのに圧を感じるものじゃないはずなのだが……。
「そんなに身構えなくても大丈夫よ。ただちょっとお使いを頼みたいだけだから」
「お、お使い?」
「ええ、そうよ」
お使いくらいなら危険な事はないだろうか? いや、騙されてはいけない。何時でも逃げられるようにするべきだ!
「ちょっととある場所から、ある物を取ってきて貰いたいの」
うん。やっぱり雲行きが怪しくなってきた。
「それじゃあ。はい、これ」
「えっ?」
手渡されるいつもの装備。
「えっ!?」
そのまま連れ出される私。
「えぇ……」
とある場所に放り込まれる私。
「じゃあ、ここの最下層で取れる物を持ってきてちょうだい」
連れてこられたのは知らない洞窟。
その出口はおばあちゃん達が封鎖している。
……私はこれをなんていうのか知っている。
「これ普通にダンジョン攻略してドロップアイテム取って来いって事やん!?」
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