ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

たーまやー

 深夜、誰もが寝静まった頃、ハクアの作った屋敷を取り囲む様に眺める複数の影があった。

 貴族が邪魔な者を始末する為に使うその影達は、最終確認として今回のターゲットの特長を記した紙を確認すると、頭に叩き込んだ順に証拠の紙を焼き捨てる。

 今回の依頼は自分達の雇い主と関わりのある商人の要請だ。内容は屋敷にいる買われた獣人の兄弟を奪還、もしくは殺害後に死体を焼却して完全に証拠を隠滅する事だ。

 商人と主を含めた、複数の貴族が関わる後暗い行為。それが露見すれば自分達を含めた全員が破滅する。
 それ程までにアレがバレるのは不味い。
 アレを一度逃がしたと商人が言って来た時には腹が立った。だが、それ以上にあの冒険者達が関わって来たのは不運としか言いようがない。
 そしてあの白く美しい少女だ。

 獣人の兄弟を売る気など全く無かった商人は、法外な値段を突き付ける事で諦めさせようとした。だが、その少女はこともなげにその法外な値段を払ってしまったのだ。

 報告を受けた当初は適当な値段を付けたのだろうと思ったが、その値段を聞いて驚いたのはしょうが無いだろう。
 正直、自分ならどんな理由があろうとも、獣人なんぞの為にそんな大金は払いたくない。

「……そろそろか」

 影を指揮するリーダー格の男が屋敷を見ながら呟く。
 ハクア達が商人の屋敷を出てからどこかへ連絡を取った素振りは無い。また、この屋敷の前でしばらく様子を見たが、同じく外へと出た人間は一人もいない。
 スキルの【念話】も警戒し、射程圏内に他の人間が入っていない事も確認済みだ。
 更に念には念を入れ、眠った頃合に睡眠の魔法を上掛けすれば、殺さても気が付く事無くに死ぬだろう。

 辺りを見渡せば影の連中が今か今かと早っている気配が分かる。
 今回、主からは目標以外の人間は好きにしていいと言われている。邪魔な男が一人いるが他の四人は女だ。この人数でも十分に楽しむ余地がある。
 そしてやはりあの白い少女。
 こちらで存分に楽しんだ後にでも主に渡せば、追加の報酬も受け取れるかもしれない。
 仮に壊れたとしても、それだけの価値があると男はみていた。

 人間でも無い獣人に関わらなければこうはならなかっただろうに……。
 そう思ったと同時に馬鹿な奴等だとも思った。
 だが、そのお陰でこちらは楽しむ事が出来る。
 もし仮にだが、この任務が失敗すれば待っているのは死のみだ。そしてアレが露見すれば関わった人間全員が無事では済まない。

 失敗は許されない。

 それでも獣人を使いこれからも甘い汁を啜る為に、自分達の人生を楽しむ為に影達は行動を始めた。
 ▼▼▼▼▼▼▼
「そろそろかなっと」

 仮眠を取っていた私は、魔力の揺らぎに気が付き目を覚ます。
 どうやら全員が寝静まったのを確認した相手は、更に用心を重ね魔法で眠りを深くする様だ。

 用心深い事で、まあ効かないんだけど。

 しかしそんな事よりも私は今猛烈に感動していた。

 それと言うのも【暴喰の黒衣】は、私の腕を素材として取り込んだ事でその形を変えた。
 そのお陰で色々な効果が付いた様だが、こうやって着替えずに仮眠を取った事で分かった。

 なんとこの服……シワがつかないのである!

 なんと言う事でしょう。普通ならシワッシワに
 なってもおかしくないと言うのに、寝て起きてもこの通り、まるでアイロンをかけたかのようにシワ一つ無いではありませんか。
 これはもうあれだね。
 地球でのマイフェイバリットアイテム。ジャージにも勝るとも劣らない服かもしれない。
 普通の服にも見えるから外にも行ける。見た目に似合わず着心地は、締め付けなく緩いから部屋着兼寝巻きにも最適。
 更に防汚効果も付いてるから、運動着や作業着にも適している。
 もう正しくこれ一枚あれば事足りる便利な服だ。

 シワの付いた服とか着てると、皆して着替えろとかって言ってくるからね。これからは着替えなくても大丈夫だぜ!

 そんな寝心地の良かった【暴喰の黒衣】に感動していると、どうやら外では魔法を掛け終わっていたらしい。

「さて、そろそろ動くかな」

 相手が動き出しそうな気配を感じて、私も行動を開始する。まずは一部屋一部屋周り全員を起こす。
 結果としてはエイラとヒストリア以外は全員が眠っていた。
 その二人は魔法が使われた事を知っても、慌てずに私の元までやって来た。

 優秀優秀。アベルとダリアは後で補習である。

 全員をエントランスに集めると、敵が攻めて来た事を教え、予め作っていた脱出口から脱出する。

「ふーむ。居ないそうだな。ラッキー」

 移動中も確認はしていたが、外へと脱出後もう一度詳しく調べてみると、やはり全員が屋敷の中に入って行ったらしい。
 普通なら逃走防止の為に、何人か外にも配置するけど、どうやら全員が魔法で眠っていると思って突入したようだ。

 まあ、アベルとこの兄弟殺したら、後はダリア達で楽しむ予定だったんだろうな。

「どうなってるの?」
「やっぱ全員中に入ったみたいだよ」

 ダリアの言葉に答えながら私は予定通り準備を始める。
 全員が入った瞬間にドアはロックした。ドアと窓は特別性で、そうそう壊れる物では無いから即座に脱出するのは不可能。
 出て来る時に罠も発動させたので、今頃中はではとても楽しんでくれているに違いない。
 罠が発動したと同時に、気配を眩ませる術式も発動しているので、私達が居ない事に気が付くのはもう少し掛かるだろう。

「で、ハクアは何をしてるんだ?」
「ちょっと用意してた仕掛けを探してる最中」

 あれ? 暗いから分からない、どこ行った?

「もしかしてコレですか?」
「おっ、それそれ。ヒストリアサンキュー」
「それってロープ? なんでそんな物が埋まってるの?」 
「ふっふっふっ、コレこそが今回の目玉なんだよ。って訳で、アベルこれ思っきり引っ張って」

 エイラの言葉に胸を張って答えると、アベルにロープを渡し思い切り引く様に頼む。

「ひ、引けば良いのか? フンっ!」

 困惑しながらもアベルがロープを引く。すると……一瞬の抵抗の後、すっぽ抜けた様に抵抗が無くなりアベルが尻もちを付く。

 そしてその後すぐに理由は結果となって現れた。

「嘘……」

 その呟きは誰のものか。

 さっきも聞いた様な呆然とした声を聞きながら、私は自分の仕事に満足して一人頷く。
 目の前では先程まであった立派な屋敷が、どんどんと崩れていく。実に見事な崩壊っぷりだ。

「あっ、そろそろ耳塞いだ方が良いよ」

「「「えっ?」」」

 私は忠告しながら耳を塞ぐが、皆はなにが起きたのか分からず反応が遅れる。
 だが、時間はそんな個人の都合など待ってくれない。
 アベル達が耳を塞ぐ前に、目の前で崩れていた屋敷だった物が、今度は突如として轟音を立てながら大爆発を起こした。

「たーまやー」

 ふっ、汚い花火だぜ。

 花火と言うよりも火柱となったものを、横からでは無く下から見上げる。

 うん。計算通り?

 目の前では爆発と火柱に打ち上げられた残骸と、人間が次々と上からボタボタ落ちて来ている。

 一応計算上では死人は居ないはずだけど……。まっ、いっか。

 どうなっていたとしても自業自得。そう思う事にして私は考える事をやめた。


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