ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

神の浮気の仕方半端ないな。

「どうしたんですか、この二人なら馴れていますけどお嬢様まで一緒になって?」


(((((・・・ハクアと澪の土下座は馴れてるんだ)))))


「いやまあ、滅多に疼かない良心的な物がチクチクと・・」


「「ミートゥー」」


「本当に気にしなくても良いですよ。それに・・・私はお嬢様に再びお仕え出来ればそれに勝る喜びはございません」


「テアさん・・・」


「さっ、お立ち下さいお嬢様。お二人も・・・見苦しいのでさっさと立ちましょう」


「「ヒデェ!」」


 このメイド、実に爽やかな笑顔で言いやがった。


 しょうがないので私達はさっさと席に座る。今の言葉が羨ましかったのか、いそいそと土下座し始めた女神なんて私達には見えないのだ。


 うん。何も見えない。・・・・だから期待した目でこっち見んな。


「・・・人を生命を駒として道具として扱う神と言う存在に嫌悪を抱きますか?」


 私達が座るとテアは真っ直ぐこちらを見ながらそう問い掛ける。その目は地球にいた頃、鏡の前に立つと写っていたすがる様な畏れる様な目をしていた誰かに似ていた。


「思わないよ。同情でも何でも無くね。神が生命を駒として見た所で何も変わらんよ。この世界の種族に限った話ですらない。人は人種、思想、信仰、国、性別、権力、単純に生まれでさえ格差が在り違いが産まれる。そんな中で人だって人を駒に道具にするからな、綺麗事で済ませる事が出来る訳が無い。こんな世界、魔王が産まれ世界を荒らし、勇者が救った所でめでたしめでたしで終わらないんだ。エンディング何て無くてずっとその先も人は続いて行く、そんな世界を維持する神なら尚更だろ?だから私は否定する気も何も無い。特にお前らはそんな中でもルールの中で動いてるんだとやかく言う事じゃ無いだろ?それより逆に・・だ。私は駒にされる気も従う気も無い。それが気に食わないとい言うのなら神であっても排除するが・・・それこそどうよ?駄女神ども」


 私の話を聞いていた女神達は、笑いながらそれで良いーーーと、言った。


 世界を生かす為の歯車は在る。でも、抗うも受け入れるもそれは人次第だからな。少なくとも私はコイツらをとやかく言う気は無い。


「そう・・ですか。白亜さんらしい答えですね。・・・さて、地球と異世界の関係を学んだ所で次はこの世界に付いて話しましょうか」


「そうだね」


「その前にまず白亜さんと澪さんがどこまで知っているのかだけ調べましょう」


 テアはそう言って私と澪の頭に手を乗せる。何をするのか見ていると不意に手を離し、少し驚きながら「白亜さん・・・良く生き残れましたね?しかも騒動の中心で・・・」と、言ってくれやがった。


「・・・何か、スゲー泣きたくなって来た」


 全員が何とも言えない微妙な顔をして顔を反らす中、駄女神だけはニタニタしていた。


 ・・・貴様、やはり敵か。


「まあ、良いでしょう。二人共、翔の事は知っている様ですね」


 私は知っていたけど澪も知ってたのかーーーと、思い澪を見ると向こうも同じ様に私を見ていた。


「では、その後辺りを含め話して行きましょう・・・」


 駄女神が最初に話した通りこの世界は数多く産まれた神々の受け皿の一つだった。


 神々はそれこそ私達人間がオンラインゲームでやる様に、在る者は救済者として、在る者は崇められる存在として、そして在る者は人々を苦しめ試練を与える存在としてロールプレイの様な事をしていた。


 生物が死に生まれ変わる。このサイクルにより世界は保たれていた。


 そして世界の為、エルフ、ドワーフなどを代表とする様々な種族を神々がデザインして産まれた。


「私も新しい種族を造り出すのは賛成でした。この世界は産まれたばかりで、人間だけでは色々と問題が在りましたからね」


 だが、ある時神々の一人が言った。


『こんな世界はつまらない。色々な駒を造ったのだからもっと楽しもう・・・と』


 神々は反対する者、賛同する者に別れ争い始める。


 そしてこの争いは大小の差は有れど、地球を除く全ての世界に波及していった。


 そして賛同する神々はそこに暮らす生命を弄び、次々と新たな種族やモンスターを産み出して行く。


 鬼、ドラゴン、悪魔、更に一部の神は戯れにモンスターと人間を交配して産み出す事もあったそうだ。


『前に言った様に、その世界の人間同士の交配でも様々な種族が産まれましたけどね』


 だから反対する神々が多く居た世界や安定している世界は人間だけだったり、モンスターが極端に少ない世界も在るらしい。


 そしてこのアースガルドも例外では無かった。いや、むしろこの世界は賛成派の神々の方が多かった。


「直接賛成派の神は止められなかったの?」


『神同士は互いを傷付ける事が出来ないんですよ。神同士が争えば世界が崩壊しますから』


 ・・・神って、マジ面倒。


 賛成派の神々がモンスターを産み出す中、反対派の神々はその世界に精霊や妖精を産み出し魔法やスキルという力を授け、モンスターと戦い生きる術を間接的に渡し助けた。


「それで少しの間は拮抗していたんですよ」 


「少しの間?」


「ええ」


 様々なモンスターが産み出されて行く内、ある時からモンスターの中に人間並みの知能を持った者が現れる。


 世代を重ねる事に増えて行きそれに目を付けた神。後に邪神と呼ばれる者達は、何をとち狂ったのかそのモンスターを実験材料として魔族を産み出し、その中で一番優秀な個体に神の力の一部を与えた。


「それが最初の魔王か」


「その通りです」


 全ての世界の賛成派の神々は喜んだ。これで世界はまた楽しくなるーーーと、だが、その考えはすぐに変わる。


「何故なら魔王は神にすら届いてしまった」


 死ぬ事も殺される事も考えなかった神々は魔王に殺されて行った。


 そして邪神と呼ばれる神は大半が殺され、生き残った神は其々の世界に逃げ込むか。地球へと逃れて行った。


「何で其々の世界に逃げ込んだんだ?」


「魔王に世界を渡る力までは無かったんですよ」


『はい。そして、最初の魔王は神々の実験で特殊な力を獲ました。それが、他人の力を自分の物にする力と神の心を壊し人形にする力です』


「魔王に有ったのはモンスター以外の全てを駆逐し、最強の存在に成るという感情のみでした。抵抗出来なかった者はこの世界に邪神と呼ばれるモンスターとして配置され、生き残った神も逃げ延びましたが、その力は感染病の様に神々の心を壊しました。地球にまではその力は届きませんでしたがね」


「・・・とんでも無いな」


「魔王はどうやって神を殺したんだ?」


『もう一つ力があったんです。それが本来手を出す事が出来ない超上の存在の神を自分達の存在にまで落とす力です』


「ど、どう言う意味ハクア?」


「・・・違う次元に居る相手を引っ張り出して殴れる様にするって事?」


「そんな感じです」


 魔王が配置した邪神は反対派の神が何とか封じる事に成功した。しかし魔王はこの世界で更に猛威を振るい始める。


 しかし神々は様々な世界を作る時、制約として直接手を出す事が出来ない様になっていた。


「そうなん?」


「はい。基本的に神は間接的に力を貸すか、試練を課すかしか出来ません。直接手を出すには、神の力を手放してその世界に入るしか無いんですよ。先程の其々の世界に逃げ込んだ邪神も、神の力を捨てる事で生き残っただけです」


 なるほど。魔王の力は神に対しての物だからそれを捨てれば逃れられたのか。


 だが、そんな魔王の驚異はその世界に生きる者には分からず、ずっと互いに争い続けた。


「何故ですかシルフィン様?」


『魔族だ魔王だと呼ばれても、所詮はモンスターだと思われていたんですよアリシア』


「まあ、知らんもんをいくら危険だ何て言われても困るわな?それよりも目先の餌に食い付くか」


「その通りです。人々は白亜さんの言う目先の餌。土地や財産、奴隷などを手に入れる為に争いました」


 そこでこの世界の反対派の中核だったテアは、当時魔力が無く最弱だった種族、人間の少女に召喚魔法を授けた。


「で、それが翔だったと?」


「はい」
  
 その後、召喚された勇者は数々の種族と手を結び魔王を倒す事に成功する。


「それで魔族を大陸の真ん中に結界張って閉じ込めて終わり?」


『・・・・史実では』


「違うのですか女神様?」


「ええ、確かに勇者は魔王を倒す事に成功しました。しかし、魔王はただでは死ななかった・・・・いえ、死ねなかったんです」


「「「「死ねなかった?」」」」


『はい。勇者は女神の力を借り魔王を倒しましたが、数多の神々の命を奪った魔王は死ぬ瞬間、自らの身体を数千の欠片に分けました。と、言うか魔王が取り込んだ神の力が生きる為にそうさせました』


「また、随分とテンプレな行動を・・・」


『確かにそうですね』


「で?それでも生きていた・・・と、言う訳か?」


『はい。正確に言えば魔王の意思ですね。欠片は力の塊。数千の欠片は次元を越え数多の世界へと降り注ぎ、小さな物でも手に入れた者に大きな力を与えました。そして、ある程度の大きさの欠片は、微かながら魔王の意思を持ち魔族の中から新たな魔王を産み出しました。クー貴女なら分かる筈ですよ』


「うむ。確かに我もある時急激に力が上がったのじゃ。今になって言われてみれば自分以外の何かの干渉を受けていた気もするのじゃ」


「自覚は無かったの?」


「うむ。前にも言ったが我は最初弱く迫害されていた仲間の為にあそこに行った。じゃが仲間が殺される度、憎しみが増しある時力を手に入れたら、仲間を殺した人間達を憎み、殺された仲間を死霊術で操り共にいる事を選んでいたのじゃ。封印中もそれは抜けなかったが、力を失う度にその気持ちも薄れて行ったと思うのじゃ」


 う~む。歴史と違って丸いとは思ったけど、それってその魔王の欠片とかって奴の影響だったのか。本では残虐非道レベルだったもんな。


「ええ。魔王の欠片を手に入れた物は暴走する傾向に在る様ですね。欠片が大きいほど強大な力と共に意思も強くなるようですから」


『それから先は知っての通りです。一つ違うのは結界を張ったのが勇者では無くティアマト様だと言う事、永続的な結界を張った後に私に力を渡したせいで神の力をほとんど使いきり、結婚と同時にこの世界を去ったと思っていたのですが、まさかティアマト様がそんな状況に陥って居たとは思いませんでした』


「そこで瑠璃との出会いに繋がるのか」


「はい」


「ん?そもそも何でテアを処分しようとした神々はそんな事態になってるのに処分しようとしたんだ?その代の魔王に世界を渡る力が無くても神を殺す力を持った奴が居たくらいだ。魔王の因子が世界へと放たれたのなら、いつかそんな奴が出て来てもおかしくないだろ?いくら神でも喉元に刃を突き付けられて笑ってはいられなくないか?」


「ん?確かにそうですね。どうしてですかテアさん」


「信じなかったんですよ。管理が悪く怠惰だった。だからそんな物に殺された・・・とね」


「どうしようも無いな。それで?」


「・・・・・先も言った通りこの世界は賛成派の神の方が多かったんです。反対派は私とここに居る女神を含め初期の神は皆女神でした。男神はその狂気とも言える生命を産み出す行為に酔いしれていました。でも、ただ一人だけ魔王を産み出す直前に正気に戻り私達の仲間になりました。それが私の相手でした」


 勇者が世界を救いテアが結界を張り駄女神に力を渡した後、大半の力を失った事でテアはこの世界を離れる決意をする。何故ならこの世界に元居た神の内、男神は皆邪神となった為、多数の女神が「男神は信用できない」と、男神は追い出そうと言う事になったからだ。


「・・・・クラスでやらかした男子に対する女子の反応みたいだな」


 ・・・・確かに。何かしょーもないな。


『似た様な物ですね。まあ、それだけ色々とやらかしたんですよ』


 他の異世界には行けない訳ではない。その世界の管理者の神が許せばそこに移住出来るらしい。


 テア達はその後別の異世界に移住し、同時に度々他の世界の神々の元に出掛けては、自分達神々の行いで産まれてしまった魔王の危険性を長い時をかけ他の神々にも説いていた。そして遂に神々はテアの話を聞くために場を設けそこにテアを招待した。最大の説得の場と思い神々の集まる場へ出掛けたテアだったが、結局の所どれ程ことばを尽くそうと、所詮別の次元にまで渡れない魔王を恐れる者は無く。先程も話した様に神々は逆に面白がり、反対にその新たな娯楽を潰そうとするテアを処分しようとした。そしてその事を悟ったテアが共に逃げようと、長らく留守にしていた世界へと帰ったのだがそこでお相手がやらかしていた。


「事もあろうにあの屑は・・・神の力で理想の女を造り出し。ハーレムを作り浮気しました」


「「「「「『『『『うわ~~』』』』」」」」」


 その場の女性陣が何とも言えない表情になる。


 理想の女を想像するどころか理想の女を創造した・・・と。神の浮気の仕方半端ないな。


「なので私は絶縁状を拳と共に顔面に突き刺し、残る力の全てを使い地球へと行ったんです。まあ、地球へは偶然にでも無ければ、半端な力では行けないので空間を抉じ開ける時に怪我を負いましたが・・・」


「・・・つまり、瑠璃と会った時の怪我は、力が足らないのに無理矢理地球に侵入した時の怪我と・・・」


「はい。お恥ずかしながら」


  ポッ!と、頬を染めながらそんな事をのたまわる。


 何か在るのかと思ったら想像以上に下らなかった。と、言うかさっきまでの話しでてっきり追手にやられたものと思ってたよ。


「あ~、じゃあ。この世界で私が会った事が在るのが女神だけなのは・・・」


『男神は入場制限が掛かっているからですね』


「・・・あっそ。じゃあもう邪神はいないのか?最初に居るって言って無かったか?」


『最初に言ったのはモンスターとして配置された邪神ですね。ですが残念な事に意思のある邪神も居ます。賛成派の残党ですがね』


「全員死んだか意思の無いモンスターになったんじゃ無いの?」


「この世界の魔王の欠片を求めて侵入して来た者達の様ですね」


『はい。モンスターや魔族は邪神に従う様になっています。強力な防壁を張ってはあるので、この世界に無理矢理侵入すればかなりの力を失いますがね』


「力を失ってまで何企んでるの?」


『そこまではわかりません。ですが、今はより強固に防壁を張ったのでもう侵入はされませんよ、そして、その魔王や邪神を倒す為の駒として呼ばれるのが勇者と言う存在ですね』


「私も後世に残す為に勇者召喚を教えた訳では無いのですがね。彼女が使う一度きりとして教えたのですが、残った女神の誰かが私の教えた召喚を解析して歪んだ形で伝わった様です。澪さんの変化は歪んだ召喚に人間が更に手を加えた為に起きた変化ですね」


「後遺症や副作用は?」


「取り敢えずは無いようですが、これからはマメに私が検診を行います」


「・・・そうか。頼む」


「私からもお願いしますテアさん」


「はい。お任せ下さい」


 う~む。やっと歴史が終わった。アニメとか小説でもそうだけど世界観って受け入れるのが面倒だよね。長いし、面倒だし、眠くなるし。


「さて、ではそろそろ魔法とスキルの話をしましょうか」



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