ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

お前のミノはどんな味だ!!!!

「それであんなにボロボロになってたんだ」


「うん」


 現在私達は九階中央部を抜け、ボスフロアに行くための外壁部分を歩きながら、エレオノ達と別の所でおこなった戦闘について話していた。


 勿論、影の中での事は話して無い。ま、まあ、言う必要無いよね?ほら、本筋から離れるのはよくないし?


「それで何したの?」


「なにそのなげやりな感じの質問!?しかも私が悪いって決めつけてるし!」


「いや、だってアリシアがハクアの事をずっと警戒してるし」


 そう、アリシアさんはあれからずっと私に近寄らない。


「しかも、るりと被害者の会、結成してるし」


 失礼な!誰が加害者だ!


 そんな話をしているとやっとアリシアが話し掛けてきてくれる。


「ご主人様どうぞ」


 そう言って、歩きながら食べられるように持ってきた携帯食を渡してくる。


「あ、ありがとう?」


「ハーちゃん?後で私も一緒にお話しするね?」


「・・・・はい」


(本当に何したのかな?)


(きっとロクでもない事だから、関わらない方がいいのじゃ) (ゴブ)


 おいそこ!聞こえてるから!


 私はどうなるんだろう――――と考えながらおにぎりを食べる。


 あっ、具がガガンの肉だ。


 ガガンとはイノシンのような姿のモンスターで、この世界で一般的に肉といえばこいつの物である。他にも、食べるのに適したモンスターはいるらしいが、強かったり、個体が少なかったりと、なかなか手に入らないらしい。


 ドラゴンや竜の肉も旨いらしいし、出来れば食べてみたいな。それにしても・・・・・。


「牛肉食べたい・・・・・」ボソッ。


「牛肉ですか?」


 私が漏らした言葉に結衣ちゃんが反応し、牛が分からない人間には後ろで瑠璃が説明している。


 ああ、言葉に出したら無性に食べたく。


「まあ、無い物はしょうがないよね」


「そうですね。私も出来る限りご主人様の食べたい物は用意したいところですが、流石に無い物はどうしようもないですね」


「マスター、皆さん、階段です。この先がボスフロアになっているので気を引き締めて下さい」


「了解」


 私は牛肉への思いを断ち切り、なんとか気を引き締め直す。そして、皆の準備が整ったのを確認して、ゆっくりと階段を登り始める。


 ここのボスは何が出るのか分からないらしいから、用心しないと。


 私はそう思い更に集中を高める。そして、階段が終わり、広間のような場所に出た時、私達を牛が待ち構えていた。


「牛だ・・・・」


 私はそう呟きながら、なかば作業のように牛のステータスを確認する。


【鑑定士】スキル成功
ミノタウロス(亜種黒毛)
名前:レイググ
レベル:15
HP:1800/1800
MP:300/300
気力:600/600
物攻:500
物防:380
魔攻:200
魔防:350
敏捷:250
知恵:50
器用:30
運 :50
スキル:【本気】【頑強】【突進】【噛み付き】【連打】【変化】【ホーンスラスト】【咆哮】【ぶん回し】【闘神の怒り】【蒼天破斬】【破壊の一撃】【ラッシュ】【火柱】【大地割り】


「そんなミノタウロスの亜種だなんて!」


「やっぱり牛だ!しかも黒毛♪」


「うわっ、ハクアの目が今までで一番キラキラしてるかな!?」


「ご、ご主人様、ま、まさかあれを?」


「ハーちゃん落ち着いて!あれ牛じゃないからね?!半分人だよ!?」


 皆なに言ってるのかな?流石の私も分かってるよ!


「皆安心していいよ。ちゃんと解体するし皆にも別けるから!」


「「「何も分かってない!!?」」」


「あれは私が一人でやるから手を出さないでね?」


「ハクアやっぱり一人で何て無・・・理・・・ハクアさん?」


「や・る・か・ら♪」


「おぉぉ、主様が凄く怖いのじゃ」


「で、でも」


「だ、ダメですよ皆。今のハーちゃんに近付くと噛み付かれますよ」


「「「ええ~」」」


「ハーちゃんご飯の事になると我を忘れますから、前にもご飯を邪魔されて、見る影も無い位ボロボロにされた人がいましたし」


「うそ!」


「しかも、その人のお金奪って、それでご飯をお腹一杯食べてました」


「たち悪いゴブ」


「だから、最後まで手を出さずに見守りましょう」


「でも確実にハクアより強いよ?」


「ご飯がかかったハーちゃんは、その程度の事気にしません」


 皆が何か騒いでいるけど私の耳には何も聞こえていなかった。私はただただ目の前の敵を見詰めていた。ジュルッ!


 おっと、涎が。


「ブモォ!」


 久し振りの黒毛牛に思わず口から出た涎を拭いていると、何故か私からしたら危険度赤な牛の方が後ずさる。


 コラコラ、逃げるなよ牛肉?


「モンスターが思わずビビってるのじゃ」


「ボクもあの立場なら逃げるかな」


「「「うん」」」


 私は牛肉・・・もとい牛部位を順々に眺めながら包丁・・・ではなく刀を構える。


「・・・・・タン、カシラ、クラシタ、ザブトン、ツラミ、ネック、肩ロース、三角バラ、前バラ、前スネ、友スネ、友バラ、中バラ、リブロース、サーロイン、ランプ、マル、ヒレ、ソトモモ、しんたま、テール、ハチノス、ハツ、レバー、ネクタイ、シビレ、サガリ、ハラミ、ミノ、センマイ、ギアラ・・・・ふ、ふふふふふふっ!」


「ブモォ!?」


「ひっ!ブツブツ喋ってると思ったら急に笑いだしたのじゃ」


「・・・・マスター、完全に補食対象と捕食者の構図ですね」


「肉どころかホルモンまで・・・しかも聞いた事無い名前の部位まで沢山ありますよ私」


「・・・・ハーちゃん牛肉大好きですから」


(((それで済ませていいのか!!)))


 二度ほど後ずさった牛肉が何故か意を決したように両手持ちの巨大斧を構える。


 これが生きた食材って奴だね。クククッ!


《シルフィン:違います》


「ブモォ!!!」


 牛肉が雄叫びを上げながら巨大斧を振り上げ、いきなり斧技【大地割り】を放ち私に襲い掛かる。私はそれを余裕を持って避ける。が、【大地割り】は強烈な一撃と共に岩壁を作り出す技で、その岩壁が私の予想より大きく、私は下から押されるように空に跳ね上げられてしまう。


 不味い。


 私の予感は的中し、牛肉はそのままの勢いで斧技【ぶん回し】を発動する。


 しかし私は【結界】を空中に作り出し足場にする事で攻撃を回避。逆にスキル発動により硬直したタイミングを狙い刀技【比翼】を使い前スネを切り裂く。


 チッ!硬い、落としきれなかったか!


 私の斬撃はいい感じに入ったが、前スネを半分ほど切り裂くに留まる。そして牛肉も私が着地すると同時に【ぶん回し】をもう一度放ち攻撃してくる。ガギンッ!私はそれを【結界】を最大で展開して纏わせた刀で受け、それと同時に威力に逆らわず同じ方向に跳ぶ事で衝撃と刀へのダメージを逃がす。


 くあっ!キツ。


 牛肉は更に追撃で【突進】を仕掛けこちらに向かって来る。それに対し私も正面から突撃して牛肉に向い、お互いが激突する瞬間、影魔法で牛肉の視界を奪い、風縮を使いながら急激に方向を変え回避する。


 すると激突する筈だった私が消え、視界を奪われた牛肉はドガァン!と、音をたて壁に激突してダメージを負う。私はそれを好機に牛肉の背中へオリジナルの魔法、旋刃鼬と火魔法を組み合わせた新技、螺旋焔を放ち、次に水転流刀術皆伝【霧雨】を使い牛肉のロース部分を切り刻む。その次いでに少しだけリブロースを切り落とす。


 よし!牛肉get!!


 私が切り落とした牛肉に少し気を取られた瞬間、生意気にも牛肉が体を捻り私に殴り掛かる。私は何とか【結界】を腕に集中し防御するも、バキャンッ!と音をたて牛肉の攻撃は【結界】を突き破り、そのまま私に攻撃を加え遠ざける。


 クソ左腕が逝ったか。


 私は折れた腕に治療魔法を掛けながら、刀を鞘ごと腰の紐に通し今度は自ら刀技【散華】を使い牛肉へと斬り込んでいく。


「はあぁぁぁあ!」


 牛肉は私の全力のスピードを見誤ったのか、対応が間に合わず私の攻撃をまともに食らう。


「ブモ!」


 それに対し牛肉は、私の攻撃に意を介さず斧技【火柱】を使う、すると斧を打ち付けた地面から火柱が立ち上ぼり、私に迫ってくる。


「なっ!」


 私はいきなり立ち上ぼり向かってくる火柱に対し、セルフで焼肉だと――――と驚愕しながら、先程切り落とした肉を刀に差し、火柱を避けながら火にくべる。


 勿論切り落とす前段階で剥皮は済ませてあるし、刀を差しているので中までちゃんと火が通っているから安心。


「おお~。いい匂い!はむっ!うまっ!」


 私は戦闘中にもかかわらず焼いた肉を食べ、その余りの旨さに感激していた。そして、牛肉を見て。


「ミノタウロス。次はお前のミノを食う!お前のミノはどんな味だ!!!!」


「ブモォォォ!」


 私の宣言に牛肉が悲鳴のような鳴き声を上げ、何故かその目と声が怯えているように感じた。


 何故だ?解せぬ?!


ミノタウロス(亜種黒毛)
名前:レイググ
レベル:15
HP:1000/1800
MP:200/300
気力:300/600


名前:ハクア
レベル:18/20
HP:550/1130
MP:370/570
気力:400/500



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品