異世界転生(仮題)

ノアール

事件の調査

今回王女殿下が狙われたのは、その禍ツ神の封印を解くためか。……ん?

「でもそれだとおかしくありませんか?今回王女殿下にかけられた呪いは明らかに王女殿下の命を奪うものでした。もし封印を解くためならば鍵を持つ王女殿下を殺してしまうのは変だと思うのですが」

普通王女殿下を生贄にし、何らかの儀式を行って封印を解く、と考えられるが違うのだろうか。

「私たちもそこがわからんのだ。鍵を持つフィーリアを生け贄として攫うのではなく、殺す意味がわからない。だとしたら今回の事件は、封印を解くためではなかったんじゃないだろうか、とな」

となると、あの呪いをかけることができる人物、または道具があるということか?

『いえ、それは違いますよ。マスター』

突然の驚くが幸い周りには気づかれなかった。

『どういうこと、ナビ?』

『王女様にかけられた呪いは、悪魔によるものです』

『どうして断言できるんだ?』

『人と悪魔では呪いは概念が違います。人の呪いは魔力を伴った祈りによる“呪(まじな)い”です。悪魔は瘴気から生まれる超自然的存在です。ですから、悪魔の呪いは“祟り”という意味合いになります』

超自然的存在というのは自然界の法則を超えた、理論的に説明がつかない存在のことで悪魔がそれに該当するとのこと。

『ただ“祟り”という意味合いではありますが、この世界ではその超自然的存在が実在しています。何らかの主体による呪う行為によって成立するという呪いの定義に当てはまる。つまり呪いと同じなのです』

『うーん。人と悪魔とでは存在自体違うというのはわかったけど、そうすると誰によるものかなんて判断できないんじゃないの?』

『判断の仕方は簡単に言えば、人によるものは、“〇〇の呪い”。悪魔によるものは、“〇〇呪”という認識で大丈夫です』

『え?そんなに簡単なの?』

思ったより見分け方が簡単で拍子抜けした。

『はい。恐らく人と悪魔のあり方の違いによるものだと推察されます』

『そんなに簡単なら誰かが気づくと思うんだが?』

『そもそも悪魔に関する資料がありませんから気づきようがありませんよ』

図書館で調べ物をしていた時悪魔に関する内容はほとんどなかったな。それは悪魔に対する知識が、圧倒的に不足しているということだ。

『ナビはどうして知っていたんだ?』

『おバカなマスターはお忘れでしょうが、私は[叡智神]ですよ?』

そうだった。忘れがちだが、ナビは[叡智神]なんだよな。その割には情報をくれなかったりするから本気で忘れてしまう。[完全記憶]とはいったい…。

「………、……!…る!テル!」

「っ、はい」

「どうした?何度か呼びかけたが反応なかったぞ?」

どうやらだいぶナビによる考察に没頭していたようだ。

「すいません。考え事をしていて気づきませんでした」

「それなら良い。ならば話を戻すが、他国の仕業と考えるべきだろうか」

「あれほど強力な呪いをかけることができる力を他国が持っていると考えたくはないのう」

「可能性としてはかなり低いでしょうが調べないわけにはいきませんね」

「他国の仕業だとしてもやはり動機がわからんな」

他国の仕業の可能性もあると見ているが、動機がわからないと。

今回の事件は確実に悪魔が関わっている。だけど、なぜ王女様を殺そうとしたのか動機がわからない。

「そういえば王女様が呪いにかかったのは、いつ頃なんでしょうか?」

「ああ、言っておらんかったな。確か半年くらい前の時じゃ。その日は特に公務もなくアリスとミッシェルたちとお茶会をしておったはずだ。その時にいきなり倒れたと聞いた」

お茶会か…。特に公務もなかったとしたらいつ呪いをかけられたんだ?それに王女様にどうやって呪いをかけたのかもわからない。

「そういえばフィーリア嬢が倒れた前の日、夜会をしていたな」

ヴィルナーク公がそんなことを口にする。

「夜会、ですか?」

「ああ。フィーリアの誕生日でな。貴族を呼んで夜会を開いたのだ」

呪いをかけられたとしたらその時か。

「誕生日ということは、何か贈り物をされませんでしたか?」

「いくつか貰ったぞ。私たちもそこを怪しんで鑑定を頼んだが普通の贈り物だった」

鑑定して何もなかったということは何もないのか?いや、隠蔽されている可能性もあるか。

「すいません、その贈り物を実際に見ることはできますか?」

「ああ、持って来させよう。バナック、夜会でもらった贈り物を一通り持ってきてくれ」

「かしこまりました」

さて、夜会の時に呪いをかけられたとしたら、この国の貴族が関わっていることになる。人と悪魔が手を組むなんてありえるのか?

「陛下、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「何だ?」

「悪魔と共謀または崇拝している組織に心当たりはありませんか?」

その質問を聞き陛下たちの顔が険しくなる。

「………ある。禍ツ神を崇拝する組織だ。その組織は種族、性別問わずかなりの規模の組織なのだ。民の虐殺や儀式による悪魔の召喚など犯罪行為を行っては周囲に甚大な被害をもたらす。何度か騎士団を派遣したが、ある程度の統率と個人の実力の高さ、喚び出された悪魔の力により騎士団の損害も大きい、なかなかに厄介な組織だ」

図書館で調べていた時に出てきた悪魔側に加担したという組織と同じと考えて良さそうだな。だが悪魔はこちらの応答に一切答えないとあったが、召喚時に契約でもしたのだろうか?

「テルはその組織が悪魔と共謀して今回の事件を起こしたと考えているのか?」

「はい。これは推測ですが、王女様を殺して封印を解こうとしたのではないかと」

「しかし、そんな方法聞いたことがないぞ?」

憶測で物を言うのは危険だが、時間がなさ過ぎる。

「例えばですが、子供を攫って生贄にするとか」

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コメント

  • ノベルバユーザー367919

    ローブの色で魔道士(魔法師)のランクや、危険な森で迷ったりホモ猿に追いかけられたり、
    威張らずまともな貴族の公爵家の令嬢を救って貴族の後ろ盾を得て情にほだされ鍛えてあげたり、
    湯浴みの作法を知ってる事で使用人から身分を勘繰られたり、貴族に利用されないよう心がけてる旅人だが定住地を求めたり、
    優秀な生産系スキルを持ちその世界にはない料理の知識と技術で絶賛されたり、
    世界にはかつて人類の存亡を賭けた大戦があったり
    なんだかアラフォー賢者を思い出しますね。

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