たった一つの願いを叶えるために

ノアール

これから2

「テルさん!なんですか、あのお風呂は!」

「お風呂に入った途端に聞こえてきた声やその声に従って取っ手を捻るとお湯が出てきたり、何かの入れ物に入ったドロっとした液体で髪を洗うと、今までにないくらいに髪がツヤツヤして驚きすぎて逆に疲れました」

「2人とも気に入ってもらえたようで良かったよ」

さっきからアリステラが興奮して喋っているが、ミッシェルも自分の髪を触りながら少しニヤケている。

お風呂の声は、事前にナビの声をインプットしておいた。おそらく、こちらと違うから戸惑うだろうと思ってつけておいた。

「さあ、ご飯できてるよ。食べようか」

「はい!」

「ありがとうございます」

2人の前に皿に盛り付けたカルボナーラを置いた。

「なんですかこの食べ物?見たことないです」

「私もないですね。でもすごくいい匂いがします」

「これはカルボナーラと言って、小麦粉を塩、卵を入れて練ったものを茹でた、パスタにチーズや牛乳などで作ったソースを絡めた料理だよ」

「そんな料理聞いたことありません。テルさんは、どこかの貴族の料理人だったんですか?」

「いや、旅人だって言ったじゃない。そんなことはいいから早く食べて。冷めちゃうよ」

「そうですね、いただきましょう」

「お嬢様。まず、私が毒味します」

あー、貴族だからそういうことも気にしないといけないのか。めんどくさそうだな。

「こら!テルさんは命の恩人なんだから毒を入れるなんて事しませんよ。いいから早く食べましょう」

「そうですね。申し訳ありません、テルさん」

「気にしなくていいよ。貴族は、そういうことに気をつけないといけないのは知ってるからね」

「ありがとうございます」

真面目でいい子だな。

◇◇◇

「美味しいー!カルボナーラと言いましたか、この食べ物。信じられないくらい美味しいです!!」

「確かに、今まで食べてきた料理とは、比べ物にならないくらい美味しいですね!」

「ありがとう。そんなに喜んでもらえると作ったかいがあるよ」

「他にも何か作れるんですか?」

「まあ大抵のものは作れると思うよ」

「本当ですか?!食べてみたいです!」

「機会があれば作るよ」

「やったぁ!」

そう言って喜んだあと、2人はカルボナーラを夢中になって食べていた。

◇◆◇

「ん〜!美味しかった!まさかこんなにも美味しいご飯が食べれるなんて思ってもいませんでした」

「私もこれほどのものを食せるとは思いませんでした」

「お粗末さま。よし、腹ごしらえも終わったし、明日の予定を決めようか」

「そうですね。では、改めて。テルさん、命を救ってくださり、心から感謝致します。その御礼に屋敷に来ていただきたいのです」

ん〜、これは多分断ることはできないか。

〈出来ません。貴族としての面子がありますので〉

だよなぁ、仕方ないか。

「わかったよ」

「ありがとうございます。それと、道中の護衛もしていただけませんか?」

「この森は、かなり危険度が高く、私だけではお嬢様を守ることができません」

「その分報酬を渡しますので」

「いいよ。俺も街に向かう途中だったし、護衛を引き受けるよ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「とりあえず、明日に備えて今日はもう寝ようか」

「わかりました。おやすみなさい、テルさん」

「おやすみなさい、テルさん」

「おやすみ」

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