俺らは満身創痍の問題児

小河理

No.23

 終わった。
 僕たちと生徒会との死合が無事終わり、相手が初心者ということもあり僕は誰一人取られることなく勝利を収めた。
 ほんとに今まで誰が将棋を指していたのだろう?
 疑問が残る対局だった。


「まだだ―――」
「……え? 」
「まだ終わっていない」


 負け惜しみにしか聞こえないことを副会長の治部袋が言う。
 顔はうつむいている。どこに向かって話しているのかさえ分からなかった。
「そうだまだ終わっていない」「そうよ」
 便乗するようなことを他の生徒会役員のメンバーが言う。
 他のメンバーも治部袋と同じようにうつむいている。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! こんな、嘘で固められた対局なんて没収だ! 没収死合だ! 」
 ……うそ?
 治部袋が何を言っているのかわからなかった。


 生徒会一行が動き出す。
 うつむいたまま歩き出し、そのまま一直線に僕たちにめがけていた。
 ただ一人を抜いて、だが。


 何をしようとしているのかわからない。


「ねぇ、嘘だよね? フランソワ・プレラーティ司祭。 そうだよね? わが愛しの“ジャンヌ・ダルク”よ」


 治部袋だけは生徒会長『時雨 咲野』のほうへ向かっている。
 気が付かなかったが、時雨は力なく生徒会長の椅子にへたり込んでいた。
 いつからその状態だったのかはわからない。今からなのか、死合が始まってなのか。


「ジャンヌがいなくなってから、私は頑張ったんだ。頑張ったんだよ! プレラーティ司祭に言われた通り子供をさらい、実験を繰り返した。これも全部、全部、ジャンヌを助けるためだったんだ。だけど、なんで―――」


 治部袋―――いや“ジル・ド・レェ”はうつむいたままだが、涙がこぼれているかのように見えた。
 治部袋の独り言(?)から察すると、生徒会長『時雨 咲野』は“ジャンヌ・ダルク”だったのだろうね。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! 」


 生徒会メンバーそれぞれが小さい声で呟きながら近づく。
 見るからにヤバい。
 まるで『ゾンビ』に襲われかけているようだった。
 いや、みたいではないな。
 まさにその状態だった。


 ここで闘ったら死ぬ。
 ゾンビ映画だと、闘った雑魚キャラはすぐにゾンビの波に飲み込まれて、仲間入りするものが性だったはず。


 遠くに配置していた八雲もいつの間にか僕たちの近くに戻ってきていた。
「どうするのよ」
 間宮が焦り交じりにそれぞれに聞いている。
 だけど、みんな答えない。
 答えられない。
 どうすればいいかがわからない。


 僕の知っているゾンビ映画だと闘った人がゾンビになっていたが、逃げた人が別のゾンビの大群に遭遇するというストーリーもある。
「よし、みんな逃げるよ」
 僕には闘える戦闘力はない。スカ〇ターで調べてもらってもいい。
「どこに? 」
 臥牙丸が聞いてくる。
 行く当てなどない。
「みんな健闘を祈る」
 それぞれ走り出す。
 学校だから走ってはいけない、とは今は言われてもしょうがないかもしれないな。


 当たり前かのようにみんながバラバラのほうへ走っていく。
 すごい、みんな話の流れ分かってる~!


 話の終盤にして最後の見どころである“この場面”をみんなで盛り上げようとしているみたいだ。
 本当にみんな、健闘を祈るよ!
 頑張れ、みんな!!





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