俺らは満身創痍の問題児

小河理

No.17

 生徒会・教師陣・委員会三組での会議は、ゲームで解決することが多い。それぞれの陣営に特有のゲームを所持し、その中で生徒会は駒落ち将棋を所望していた。
 当たり前だが、普通の駒落ち将棋ではない。


 “駒は有限であり、王の軍勢である”


 しかし、使う駒はただの駒ではない。駒は、自分の仲間である。
 自分を含め、準備できるより多くの仲間をかき集め、それぞれの将棋の駒に模して仲間を使う。
 使えるものは何でも使う。それがたとえ敵だとしても。
 相手の駒を取るために自分の仲間に闘うように命令しなければならない。たとえ、仲間がとられようとも、リーダーであり王将の自分が捕られてしまったらゲームオーバー。


 私たち生徒会は、このゲームを毎回持ち出し、毎回負けなしだった。それもそのはず。
 私たちは強い。負けるはずがない。負ける未来なんて存在しない。
 私たちの言い分はすべて通ってきた。
 私たちがルールである。
 私たちが……
 私たちが、そう……


 私たちが負ける……?






 † † †






「ルールはわかってもらえた~? 」
 時雨会長からの説明が終わった。
 将棋のルールは知っている。知っているが……


 よく昔に言われていたことだ。
 『将棋は当時の戦争を模して造られたもの』である、と。
 まさに戦争となるだろう。
 しかし、これは生徒会が始めたこと。


 俺たちが止めなければ、だれが止める!
 すでに出さなければいけない答えは決まっているも同然である。


「わかりました、その勝負受けて立ちます! 」


 その答えを聞いた生徒会一同は、拍手をささげてくれた。
 まるで勝敗が決まっているように、やる必要のないものをわざわざやってあげると言わんばかりに、全員同じ顔で笑い同じ間隔で手を叩いた。


「参加人数は当日で構わないよ~」


 ルールを聞く限り、仲間の数によって勝敗が変わるわけではなさそうだ。
 慎重に決め、慎重に決断する。


「お前ひとりで考え込むなよ」
「……あぁ、ありがと」


 あぁ、俺はなんていい友達に巡り合えたんだ。
 そう思った瞬間だった。


 引き受けてくれそうなメンバーは確かにいる。すぐ思いつく。
 だけど……




 “大切な友達を危険な場所に放り込んでしまってもいいのだろうか? ”




 大切な友達だ。
 危険な目に合わせたくない。


 しかし、背中を押してもらった反面、そんなことを考えるのは失礼ともとらえることができる。
「明後日の同じ時間にここで待ってるよ~」
 生徒会室を後にする。
 部屋を出てもなお、さっきの話が頭をよぎる。


 明後日までにメンバーを集めなければならい。
 今日今から声を懸けなければ間に合わない可能性すらある。


 俺は、航とともに昇降口まで急いだ。





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