俺らは満身創痍の問題児

小河理

No.14

 頭を使ってはいけない。
 体に染みついている言動だけに心掛ける。
「いいよ、教えてあげる」


 ……ん?
 は?
 さっきまで推測することこそが醍醐味だと言っていたコイツが、平然と言ったことを覆した。
 何を考えているかわからない今、コイツの“自称名案”に乗るという選択肢しかない。乗らなければ何をされるかわからないからだ。


「僕は科学者の卵だ」
「……で? 」
「だから、かがくし―――」
「そうじゃなくて、何を専攻しているの!? 」


 大きな括りで言ったところで優良な情報へと繋がらない。昔は話にツッコミを入れることがよくあったことで、ついこんな状況に立っているということを忘れてツッコんでしまった。


 笑っている色摩を他所に話を進めるように促す。
「それで、なに? 」
「あぁね、僕はね―――」


 そこら辺を歩き回り、私はその場に立ち止まった。
 あくまで勿体ぶる行為にちょっとイラつきもした。


「僕は“読心術者”であり“読唇術者” 」
 ……ってなんだ?
「つまり、唇を見るだけで何を話しているかわかる“読唇術”と、相手の表情・行動・視線などを見て考えていることを推理する“読心術”の二つを使い分ける心理学者ってこと」


 ……は?
 え?
 どゆこと??


 だけど、勝機はまだある。
 平然と自分を曝け出すほど“バカ”な人間で、そんなこと言ってしまえば『どうぞ、対策してください』と言っているようなもんでしょ。


 心理学を知っていても心を読むことはできない。想像するのみ。
 そう確信して、ここから撤退することだけを考える。
 このことをみんなに伝えなければ。






 † † †






「……遅い」
 俺は―――いや、俺たちは、いつも通り例の場所で待っていた。そう―――


 航の自宅である。


 今日は、集まって最後の作戦会議をする予定だった。
 結局、もう会わないなんて言っておいて作戦会議のために集まることになってしまった。


 しーらん、ぺったん、ごりら。


 ふと、思い出して笑顔がこぼれる。すでに忘れられた言葉を思い出したときのすごさはヤバい。
「なぁ、探しに行ってみない? 」
 ふと思い出したかのように航が問いかける。俺は二つ返事で了承し、立ち上がった。
 だけど、アイツの行く場所をまず知らない。家を知らない。趣味を知らない。


 ……終わったな!


 航と手分けして探すことになった。
 日が沈みかけている中、何も考えずに学校へと足を進めた。
 いるとは限らない。いない可能性もある。というか、いない可能性のほうが高いとすら考えている。だけど、そんなんじゃない。


 いない可能性はあるが、いる可能性が万に一つでもあるなら、行く価値は断然ある。
 逆に、可能性があることを見逃すと失敗をする可能性があるとさえ考えている。


 校門前に着いた。人影はない。すでに教師の車も少ないことから学校内は、ごく少数だった。
まさに、学校での肝試し。
 そんなこと言ったって、少ないだけで無いわけではない。


 俺は、登校してきたかのようにいつも通り昇降口から、校内に入ろうとした。


「……っ!? 」


 俺のクラスの下駄箱の前だった。
「お、お前!? 」


 見知った顔が血だらけで下駄箱にもたれ掛かって倒れていた。





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