俺らは満身創痍の問題児

小河理

No.10



「……やっぱり」


 予想通りだった。
 病室へ行っても時すでに遅し。誰もいなかった。
 借りていた個室は無人で、シーツと掛布団は丁寧に畳んであった。


「一応聞くけど、八雲はどこに行ったか知っている? 」
「いや、ちょっと……」
 行先はわからずとも、何をしようとしているかはわかる。


 俺たちの計画が先に遂行されるか、カズくんの無駄な行動力が上回るかの神による二者択一となった。
 まぁ、動けないほど重症ではなかったらしいし。
 喧嘩さえしなければ……


 そんなことを心配しても、恐らくアイツは傷口の開城を再び許すだろう。
 俺たちはお互いを見合い、お互いに首を傾げた。


「帰るか……」
「……だな」


 心配してもしょうがない。
 ぶっちゃけこうなることは予想していた。


 “あいつがジッとしているわけがない”


 と。






 † † †






 学校で届いた連絡を今やっと開く。
 俺は、手紙に書いた内容を思い出していた。




『扶桑 麒麟くん
 顔も知らない相手に手紙を書くのもなんか変な気持ちだけど……。
 本題に入るね。日付が変わるまでに俺のケータイに連絡をもらえるかな? 連絡先は、最後に書いておくね。
 今学校外で起きている夜襲事件を解決するために手を貸してもらいたい。あともう一歩なんだ。
 今は信用できなくてもいい。イタズラだと思ってしまうかもしれない。だけど、俺は君の力を借りたい。
 連絡お願いします。
 地曳 臥牙丸』




 手紙を一切書いたことのない俺の精一杯の手紙だった。
 不細工な手紙のせいで連絡してもらえないかもしれないと思っていた。しかしその考えとは裏腹にちゃんと送ってくれた。




『地曳君
 手紙ありがとう。しっかり連絡させてもらいました。
 全部信用できたとは言えませんが、最低限余力させていただきます。
 何をすればいいのですか?
 再度教えてもらえるとありがたいです。連絡先は、このアドレスでお願いします。』




 俺は再度連絡することにした。
 っていうか、しなければいけなかった。
 今度は手紙ではなく、送られてきたアドレスへ。


 実際に会って話をしたいという旨を伝えた。実際に話したほうが状況を伝えやすいと思ったからね。
 図書室で放課後に話したい。
 近くに座り、ケータイのメールで話し合う。
 俺の中ではそういう手順だった。
 メールでもしっかりと伝えた。






 † † †






「な……なんでお前が!? 」
 声を大きくしてソイツに放った。
 周りの視線が集まる中、俺はいろんな方向に頭を下げた。


 再度ソイツを睨み、目を合わせる。
 ソイツは、目を合わせたまま席に座った。俺も目を離さない状態で席に座った。


『なんでお前が……? 』
『あなたに呼ばれたからね』
『俺が呼んだのは、……え? 』


 な、なんで?
 いや、分かっている。
 なんとなく察することはできる。


『扶桑くんが来られないから“代わり”に来た。』





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