俺らは満身創痍の問題児
No.09
教卓近くの扉から声が聞こえた。
「お前こそどうしたん? 」
「僕は普通に日直だよ」
日直だと言って教室に入ってきた『篠田 卍解』の手には、言っていた通り学級日誌が握られている。学級日誌は、日直が毎朝職員室に取りに行くことになっていた。
「地曳くんはどうしてこんな早いの? 」
「まぁ、たまたま目が覚めちゃってさ」
「ふ~ん、そっか」
クラスメイトには特に内緒にしなければならない。
もしかしたらコイツかもしれない。
“『篠田 卍解』が内通者かもしれない”
誰かもわからない裏切り者がいる限り、平然を装いながら警戒する。
計画実行のためには必要なことだった。
だか……ら、ぜっ……たい…に、ね……。
重くなっていく瞼に一切抵抗せず、暗転するのをじっと待った。
気分がいいと言えない。
寝ているとしても、机の硬さと寝心地が悪いとわかる。
あ、ヤバい。
俺は、様々なことを考えているうちに吊り橋の上でバランスを崩し落ちた。
ッガタン!
力強く膝で自分の机を蹴ったようだった。その振動で目が覚める。
なんて言ったかな……。
「『ジャーキング』だね」
「……っあ」
篠田が察したかのように教えてくれる。あまり働いてない俺の頭は、素直に耳を使って言葉を聞き取ってはくれなかった。
「おはよ」
「……ん、おは」
背伸びしながら挨拶する。大きく背伸びをしたせいで、自分の放った声がより一層大きく感じた。
「もうそろそろチャイムなるぞ」
「じゃ、席戻るよ」
そういうと自分の席に戻っていった。
「出欠取るぞ、居ない奴は手を挙げろ~」
「いや、ムリでしょ! 」
華麗に前列メンバーが突っ込みを入れる。
空気感が一斉に和み、教室間の笑顔が増える。粕谷先生は淡々とホームルームを進め、一日の流れを確認する。俺たち生徒陣は、メモをしたり聞き流したりと様々だった。
† † †
予定通り連絡が来た。来るかどうか心配だったがその心配は労力の無駄だったようだ。
今すぐは見ない。
しっかり家に着いてから、確認する。
現在昇降口。
速足であるが不自然でないくらい、流れるように行動した。
「そんな急いでどうしたんだ? 」
「……、なんだ八雲か」
「何だとは何だよ!? 」
ドキッとしながらも平常心を保つ。
「なんか、今日のお前おかしいぞ」
「どこが……? 」
「行動全部が」
「ん~、まぁ何でもないよ」
やばい。
マジでヤバイ。
とっさに話を変えるしかない。
「で、でさ、カズくんはどう? 」
「え、あぁ、大事には至らなかったね。だけど……」
「だけど……? 」
「あいつのことだから、いつ病室を抜け出すかヒヤヒヤもんだよ」
確かに。
短時間ではあるが、学校の間はずっと一緒にいた身だ。
なんとなく、そんな感じがする。
俺と八雲は、一緒に方向転換し病院へと歩みを進めた。
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