チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
言葉
「……言う、といってもな、こっちだって考えるの大変なんだぞ?」
痛みをこらえ、困ったようにアリアさんが笑う声がする。それから「そうだなぁ」とほんの少し考えるような素振りをみせ、呟く。
「……まだ弱いもんな、私たち。エドに鍛えてほしいよな」
「……はい」
「結局、ミネドールでゆっくり出来なかったし……また遊びに行きたいな」
「……はい」
「エマともゆっくり話せていないし、飯でも食いに行きたいな、みんなで」
「……はい」
「そうだ、五月雨にみんなで行けばいい。きっと楽しいだろうな」
「…………はい」
「それから……」
と、言葉をつまらせた。ただ、僕には、そのあとに続く言葉が分かっていた。
エドさんが、サラさんが、エマさんが、彰人さんが……容赦なく、僕らに攻撃を放つ。アリアさんはそれを見上げながら、ポツリと呟いた。
「私は…………また、ディランと、一緒に……」
「…………」
攻撃が降り注ぐその瞬間、僕は目を閉じ……開いた。
「シエルト」
魔法は、簡単に弾かれる。その様子を見た瞬間、四人の顔色が変わったのが分かった。明らかな警戒の色が現れ、そして……にやりと微笑んだ。
「来たな」
「だな」
サラさんと目が合う。……前は、『勇気』を使って勝てた。でも……その時と、今は違う。そう、ひしひしと伝わってきた。
「分かってんだろうな、ウタ。お前一人の力じゃ無理だ。なにがって? この先だよ」
「…………」
「お前一人なら『勇気』を発動させて、この場で勝つことはできる。かもしれない。
でもその先は? 私たちを抜けたあと、お前たちはディランと戦う。あいつの強さは……お前らも見ただろう?」
確かに見た。一瞬で相手の首を落とし、個性の塊'sの背後を取り、あの強力なシエルトを一発で破るような魔力。個性の塊'sが全力をだし、ようやくダメージが入るような……強さ。
僕一人で勝てるわけない。勝てたとして、ポロンくんたちは確実に犠牲になる。そんなのいやだ。でも、みんなの力は、僕一人ではどうしようも出来ない。
……みんなは、弱いままだ。
本当は、僕も。
「……でも、僕は信じます」
「…………」
「ここまで一緒に来てくれた仲間を、信じます」
「……信じる。言うのは簡単だが、それだけでお前の仲間は強くなるのか? 生き残れるのか? そうじゃないだろう?」
エドさんの言葉は、正しい。だけど、僕はアリアさんの言葉に答えると決めた。
アリアさんの願いは……そんなに、大きなものじゃない。
僕と、ポロンくんと、フローラと、スラちゃんと、ドラくんと。
エドさんと、サラさんと、エマさんと、彰人さんと……そして、ディランさん。
みんなで普通に過ごしたいだけなのだ。大事な人と、なんでもない日を過ごしていきたいだけなのだ。それだけのなんでもない権利でさえ……アリアさんの場合、願いになってしまうのだ。
僕はこの言葉に、答えなければならない。……例えその選択が
自分を『破滅』へと導いたとしても。
「僕はそれでも、みんなのことを信じる! バカだっていい、でも、僕は知ってる! みんな成長してるんだ! だから、絶対に負けない!」
僕は地を蹴り、飛び出した。剣を握り、エドさんへと振りかぶる。軽々とそれを受け止めたエドさんは、剣を押し返しスキルを――
『左に避けろ!』
誰かの声がして、咄嗟に左に体を捻る。瞬間、僕がいたところに、サラさんが槍を放ってきた。あの槍の威力は、舐めちゃいけない。当たってたら……危なかっただろう。
「……ふぅ、ありがとうドラくん!」
僕は声の主、ドラくんにそう声をかけた。……が、当のドラくんはぼんやりとした様子で、僕の声を聞いていない。
また疑心暗鬼で操られたのか……と、思ったが、違うようだ。
「……ウタ殿」
「ドラくん? どうしたの?」
「見えるのだ……『道標』が」
「え……?」
「我がサポートする。我の心を読め! どこにどんな攻撃がくるのか……全部分かるのだ」
僕ははっとした。『道標』だ。あのとき、ドラくんがもらったスキルだ。それが今、発動しているのだ。それならば僕は、それにしたがって動くのみだ!
『そこを右に……後ろから剣だ。斜め右前から氷魔法。蔓は我が焼こう』
ドラくんのサポートは優秀だ。全てが的確で、分かりやすい。おかげでほとんどの攻撃を避けられるようになってきた。
ふと、エマさんと目が合う。ドラくんを操ろうとしている……! そう確信した。
「どらく」
「光の意思!」
別の声が響く。と同時に、辺りがパッと明るくなり、やがて消える。ドラくんは、操られてはいなかった。それどころか……
「っ……なに……?!」
エマさんにダメージが入る。何事かと思っていたら、スラちゃんが声をあげた。
「ぼくもできた! ぼくもできたよウタ! 『光の意思』伝えられたよ!」
「スラちゃん……!」
ドラくんについで、スラちゃんも……もしかして、と、僕は思い付いた。もしかしたらこれは……
(アリアさんの声に、みんなが必死に答えようとした結果……だったりしてね)
……形勢逆転してやる。
負けるわけにはいかないんだ。
痛みをこらえ、困ったようにアリアさんが笑う声がする。それから「そうだなぁ」とほんの少し考えるような素振りをみせ、呟く。
「……まだ弱いもんな、私たち。エドに鍛えてほしいよな」
「……はい」
「結局、ミネドールでゆっくり出来なかったし……また遊びに行きたいな」
「……はい」
「エマともゆっくり話せていないし、飯でも食いに行きたいな、みんなで」
「……はい」
「そうだ、五月雨にみんなで行けばいい。きっと楽しいだろうな」
「…………はい」
「それから……」
と、言葉をつまらせた。ただ、僕には、そのあとに続く言葉が分かっていた。
エドさんが、サラさんが、エマさんが、彰人さんが……容赦なく、僕らに攻撃を放つ。アリアさんはそれを見上げながら、ポツリと呟いた。
「私は…………また、ディランと、一緒に……」
「…………」
攻撃が降り注ぐその瞬間、僕は目を閉じ……開いた。
「シエルト」
魔法は、簡単に弾かれる。その様子を見た瞬間、四人の顔色が変わったのが分かった。明らかな警戒の色が現れ、そして……にやりと微笑んだ。
「来たな」
「だな」
サラさんと目が合う。……前は、『勇気』を使って勝てた。でも……その時と、今は違う。そう、ひしひしと伝わってきた。
「分かってんだろうな、ウタ。お前一人の力じゃ無理だ。なにがって? この先だよ」
「…………」
「お前一人なら『勇気』を発動させて、この場で勝つことはできる。かもしれない。
でもその先は? 私たちを抜けたあと、お前たちはディランと戦う。あいつの強さは……お前らも見ただろう?」
確かに見た。一瞬で相手の首を落とし、個性の塊'sの背後を取り、あの強力なシエルトを一発で破るような魔力。個性の塊'sが全力をだし、ようやくダメージが入るような……強さ。
僕一人で勝てるわけない。勝てたとして、ポロンくんたちは確実に犠牲になる。そんなのいやだ。でも、みんなの力は、僕一人ではどうしようも出来ない。
……みんなは、弱いままだ。
本当は、僕も。
「……でも、僕は信じます」
「…………」
「ここまで一緒に来てくれた仲間を、信じます」
「……信じる。言うのは簡単だが、それだけでお前の仲間は強くなるのか? 生き残れるのか? そうじゃないだろう?」
エドさんの言葉は、正しい。だけど、僕はアリアさんの言葉に答えると決めた。
アリアさんの願いは……そんなに、大きなものじゃない。
僕と、ポロンくんと、フローラと、スラちゃんと、ドラくんと。
エドさんと、サラさんと、エマさんと、彰人さんと……そして、ディランさん。
みんなで普通に過ごしたいだけなのだ。大事な人と、なんでもない日を過ごしていきたいだけなのだ。それだけのなんでもない権利でさえ……アリアさんの場合、願いになってしまうのだ。
僕はこの言葉に、答えなければならない。……例えその選択が
自分を『破滅』へと導いたとしても。
「僕はそれでも、みんなのことを信じる! バカだっていい、でも、僕は知ってる! みんな成長してるんだ! だから、絶対に負けない!」
僕は地を蹴り、飛び出した。剣を握り、エドさんへと振りかぶる。軽々とそれを受け止めたエドさんは、剣を押し返しスキルを――
『左に避けろ!』
誰かの声がして、咄嗟に左に体を捻る。瞬間、僕がいたところに、サラさんが槍を放ってきた。あの槍の威力は、舐めちゃいけない。当たってたら……危なかっただろう。
「……ふぅ、ありがとうドラくん!」
僕は声の主、ドラくんにそう声をかけた。……が、当のドラくんはぼんやりとした様子で、僕の声を聞いていない。
また疑心暗鬼で操られたのか……と、思ったが、違うようだ。
「……ウタ殿」
「ドラくん? どうしたの?」
「見えるのだ……『道標』が」
「え……?」
「我がサポートする。我の心を読め! どこにどんな攻撃がくるのか……全部分かるのだ」
僕ははっとした。『道標』だ。あのとき、ドラくんがもらったスキルだ。それが今、発動しているのだ。それならば僕は、それにしたがって動くのみだ!
『そこを右に……後ろから剣だ。斜め右前から氷魔法。蔓は我が焼こう』
ドラくんのサポートは優秀だ。全てが的確で、分かりやすい。おかげでほとんどの攻撃を避けられるようになってきた。
ふと、エマさんと目が合う。ドラくんを操ろうとしている……! そう確信した。
「どらく」
「光の意思!」
別の声が響く。と同時に、辺りがパッと明るくなり、やがて消える。ドラくんは、操られてはいなかった。それどころか……
「っ……なに……?!」
エマさんにダメージが入る。何事かと思っていたら、スラちゃんが声をあげた。
「ぼくもできた! ぼくもできたよウタ! 『光の意思』伝えられたよ!」
「スラちゃん……!」
ドラくんについで、スラちゃんも……もしかして、と、僕は思い付いた。もしかしたらこれは……
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