チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
異様
次の日の朝、僕は同じことを、ポロンくんたちにも話した。やっぱり怖くて、何を言われてもいい覚悟をしていたけど……同じように、僕は許された。
本当にこれでいいのかという気持ちは、ずっとある。まだ信じられない。本当はみんな、僕のことを軽蔑していたりとか、するんじゃないかって思って……心を、覗こうとして、やめた。
「さてと、やっとここまで来たな」
「クラーミルに入るのはともかく、北の方まで戻らなきゃいけませんからね、研究所に行くには」
「せっかく時間かけて来たんだから、何かしらあるといいなぁ」
「とりあえず、行ってみないと分かりませんね」
僕らは迷わずに研究所へと向かう。そして、いつかのように地下へと降りていった。…………しかし。
「……なんだ?」
アリアさんが呟く。僕も、あることを感じていた。みんな、地下に降りた瞬間、この違和感を感じていただろう。
この……異様なほど大きな魔力。
息が詰まるような圧迫感。
心臓がバクバクと鳴る。耐えられない。苦しい。なんだこれ。なんだ…………?! 思わず壁に手をついた。ずきずきと頭が痛む。……調べるどころか、近づくことさえ出来ない…………。
「アリアさ……これ…………」
「……わからない……ドラくんは? 知ってるか?」
「いや……なんだ、これは……? 罠……というわけでも、無さそうだが……」
「ウタさん……ちょっと、私……限界かもしれな……」
ばったりと、フローラがその場に崩れ落ちた。自分の不調も忘れて駆け寄ったが、この圧迫感に耐えられず、気絶してしまったようだ。
「……みんな、大丈夫……?」
「ぼくは平気! 大丈夫……!」
『苦しいよ……逃げたい……』
「おいら、ちょっと……しんどいかも……」
『目の前が、見えなくて……怖い……』
「…………アリアさんは?」
「大丈夫だ。……なんともない訳じゃないが、進めないほどじゃない」
……アリアさんは、分からない。でも、あの人は僕に下手に強がって見せたりしない。だから、とにかく三人を外に…………。
「……ドラくん、ポロンくんと外に行って? スラちゃんは、フローラを連れて外に。よろしくね?」
「でもウタ」
「僕はフローラのことが心配なんだ。だから……ね?」
スラちゃんは少し粘るように僕を見た。……が、ゆっくりと目を閉じて、うなずく。
「わかった……すぐに戻ってきてね?」
「うん、大丈夫」
スラちゃんの頭を撫でて微笑み、アリアさんの方に向き直った。
「……行くか」
「はい」
ゆっくりと壁伝いに足を進めていく。圧迫感は、どんどんどんどん強くなる。くらくらとして、思考に霧がかかってくる。……と、扉に手が届いた。
アリアさんと顔を見合わせ、そして、開く。
……いつかの研究室。その部屋のど真ん中に、謎の光があった。白く輝く、光が。
それを黙視した瞬間、ずっと感じていた圧迫感が消えさった。少し拍子抜けしたような気持ちで、僕はその光に近づいた。
「これは……結界の一種みたいだな」
「結界……ですか」
「核になっているのはテラーの魔力だろうが……テラー一人で、これだけの威圧は出せないだろう。個性の塊's全員の魔力を使って作った、最強の結界だ」
……光に見えたそれは、丸くて薄い膜だった。それが強く光り、まるで、光がそこにあるように見えたのだ。
僕はそれに……そっと触れてみた。
『もしもクランを攻略できたら――』
そんな声が聞こえた。ジュノンさんの声だった。
結界は、僕が触れたところから、花びらの花が散るようにゆっくりと、崩れていく。そして、その光の先には、一枚のメモ書きと、レポート用紙のようなものが置いてあった。
メモを手に取り、読んでみた。誰のものだか分からないけど……おそらくジュノンさんだ。
『これを読んでるってことは、ダンジョンを攻略したのに、わざわざこっちに戻ってきてるってことだよね? 人の言うことを聞かないなぁ。
でも、私たちの結界を乗り越えてここまで辿り着いたんだから、ご褒美をあげるよ。置いてある研究資料、読んでいいよ。これがあったところで私たちにはなんの役にもならないことだけど、Unfinishedなら、何かに使えるかと思ってね』
「研究資料……」
「これか?」
アリアさんが、レポート用紙を手に取る。一枚めくって題材を見れば、僕らはハッとして、次のページをめくる。
次へ、次へ、また次へ。
これがつまり、なんの役に立つのか、何を示しているのか、何に気づいてほしいのかは……まだ分からない。しかし、それでも僕らは、読むのをやめられない。
「……つまり……どういう、ことだ?」
アリアさんが言葉をつまらせた。僕だってそうだ。この資料の内容……これは、僕らには……特にアリアさんには、あまりにも刺激が強いものだったのだから。
資料の題材は、僕に備わった、もう一つの特殊なスキル。『女神の加護』についてのものだった。
そして、このスキルには『蘇生師』という特殊職業が関係しているのではないかというものだった。
本当にこれでいいのかという気持ちは、ずっとある。まだ信じられない。本当はみんな、僕のことを軽蔑していたりとか、するんじゃないかって思って……心を、覗こうとして、やめた。
「さてと、やっとここまで来たな」
「クラーミルに入るのはともかく、北の方まで戻らなきゃいけませんからね、研究所に行くには」
「せっかく時間かけて来たんだから、何かしらあるといいなぁ」
「とりあえず、行ってみないと分かりませんね」
僕らは迷わずに研究所へと向かう。そして、いつかのように地下へと降りていった。…………しかし。
「……なんだ?」
アリアさんが呟く。僕も、あることを感じていた。みんな、地下に降りた瞬間、この違和感を感じていただろう。
この……異様なほど大きな魔力。
息が詰まるような圧迫感。
心臓がバクバクと鳴る。耐えられない。苦しい。なんだこれ。なんだ…………?! 思わず壁に手をついた。ずきずきと頭が痛む。……調べるどころか、近づくことさえ出来ない…………。
「アリアさ……これ…………」
「……わからない……ドラくんは? 知ってるか?」
「いや……なんだ、これは……? 罠……というわけでも、無さそうだが……」
「ウタさん……ちょっと、私……限界かもしれな……」
ばったりと、フローラがその場に崩れ落ちた。自分の不調も忘れて駆け寄ったが、この圧迫感に耐えられず、気絶してしまったようだ。
「……みんな、大丈夫……?」
「ぼくは平気! 大丈夫……!」
『苦しいよ……逃げたい……』
「おいら、ちょっと……しんどいかも……」
『目の前が、見えなくて……怖い……』
「…………アリアさんは?」
「大丈夫だ。……なんともない訳じゃないが、進めないほどじゃない」
……アリアさんは、分からない。でも、あの人は僕に下手に強がって見せたりしない。だから、とにかく三人を外に…………。
「……ドラくん、ポロンくんと外に行って? スラちゃんは、フローラを連れて外に。よろしくね?」
「でもウタ」
「僕はフローラのことが心配なんだ。だから……ね?」
スラちゃんは少し粘るように僕を見た。……が、ゆっくりと目を閉じて、うなずく。
「わかった……すぐに戻ってきてね?」
「うん、大丈夫」
スラちゃんの頭を撫でて微笑み、アリアさんの方に向き直った。
「……行くか」
「はい」
ゆっくりと壁伝いに足を進めていく。圧迫感は、どんどんどんどん強くなる。くらくらとして、思考に霧がかかってくる。……と、扉に手が届いた。
アリアさんと顔を見合わせ、そして、開く。
……いつかの研究室。その部屋のど真ん中に、謎の光があった。白く輝く、光が。
それを黙視した瞬間、ずっと感じていた圧迫感が消えさった。少し拍子抜けしたような気持ちで、僕はその光に近づいた。
「これは……結界の一種みたいだな」
「結界……ですか」
「核になっているのはテラーの魔力だろうが……テラー一人で、これだけの威圧は出せないだろう。個性の塊's全員の魔力を使って作った、最強の結界だ」
……光に見えたそれは、丸くて薄い膜だった。それが強く光り、まるで、光がそこにあるように見えたのだ。
僕はそれに……そっと触れてみた。
『もしもクランを攻略できたら――』
そんな声が聞こえた。ジュノンさんの声だった。
結界は、僕が触れたところから、花びらの花が散るようにゆっくりと、崩れていく。そして、その光の先には、一枚のメモ書きと、レポート用紙のようなものが置いてあった。
メモを手に取り、読んでみた。誰のものだか分からないけど……おそらくジュノンさんだ。
『これを読んでるってことは、ダンジョンを攻略したのに、わざわざこっちに戻ってきてるってことだよね? 人の言うことを聞かないなぁ。
でも、私たちの結界を乗り越えてここまで辿り着いたんだから、ご褒美をあげるよ。置いてある研究資料、読んでいいよ。これがあったところで私たちにはなんの役にもならないことだけど、Unfinishedなら、何かに使えるかと思ってね』
「研究資料……」
「これか?」
アリアさんが、レポート用紙を手に取る。一枚めくって題材を見れば、僕らはハッとして、次のページをめくる。
次へ、次へ、また次へ。
これがつまり、なんの役に立つのか、何を示しているのか、何に気づいてほしいのかは……まだ分からない。しかし、それでも僕らは、読むのをやめられない。
「……つまり……どういう、ことだ?」
アリアさんが言葉をつまらせた。僕だってそうだ。この資料の内容……これは、僕らには……特にアリアさんには、あまりにも刺激が強いものだったのだから。
資料の題材は、僕に備わった、もう一つの特殊なスキル。『女神の加護』についてのものだった。
そして、このスキルには『蘇生師』という特殊職業が関係しているのではないかというものだった。
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