チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
出発
僕らは昨日、そのまま、あの謎な場所で夜を明かした。どうやって寝たかって、僕が出来るだーけ遠くに寝袋を置き、そこで寝ることでよしとした。
個性の塊'sの三人は、僕らが寝るときもテラーさん以外ずっと起きていたが、気がついたら、これまたテラーさん以外いなくなっていた。
テラーさんは、今日は起きていて、何か本のページをめくっていた。僕が起きたことに気がつくとそれを閉じ、アイテムボックスから何かを取り出した。
「……あ、それ」
「おはようウタくん。アリアさんはまだ寝てるからね。これはご飯です。五月雨に近いものを用意しましたー」
テラーさんが手に持っているのは、いつかの玉子サンド。本当に五月雨のものとそっくりだ。
「おはようございます……。すごいですね、それ」
「でも食べるとなーんか違ってさ。隠し味が分からないのさ。ま、擬きってことで」
僕はそれを受けとると、一口口に運んだ。……確かに、五月雨とはちょっと味が違う。でも、十分に美味しい。……彰人さん、何入れてるんだろ。
それから、あっと思って、テラーさんに問いかける。
「体調……大丈夫なんですか?」
するとテラーさんはすごく深刻そうな顔をして、僕を見た。……やっぱり、あまり大丈夫じゃないのかもしれない。僕だって、寝て起きて万全な状態、とはいかなかったから。
「……すごく深刻なことに気がついたんだ」
「な、なんですか」
「……人間、動けないと何も出来なくてつまらない」
「一瞬でも本気で心配した僕がバカでした」
そうだこの人、個性の塊'sだった。それも、MP封じられても短刀とHPでごり押ししちゃうような人だった。
……逆に言えば、そんな人を簡単に無力化出来るような力を、相手は持っているわけだ。しっかり気を引き閉めないといけない。
「……ウタ、起きてたのか。それに、テラーも。もう大丈夫なのか?」
「アリアさん、おはようございます」
「おはよアリアさん、私はもうへーき。だてに最強の名前ついてないしね。
あ、はい。これアリアさんもね。玉子サンド五月雨擬き」
「擬き……にしては凝ってないか?」
「美味しいですよ!」
僕らが玉子サンドを食べ進めていると、テラーさんが今日の本題を話し出す。
「おさくとジュノンはもう表に出てて、向こうと話をつけてくれてるはず。私たちは……あともう少ししたらここを出て、とにかく街中を走り回る。
後ろからサポートするけど、普通の国民がほとんどだし……まぁ、風魔法一つでどうにかなるんじゃないかな。アリアさんには、これ渡しておく」
テラーさんはそう言って、魔属性球体を取り出す。しかし、今までのと少し違って、ほんのり青緑色に色づいているのだ。
「……色のある魔属性球体なんて初めてみたぞ」
「だろうね。グッドオーシャンフィールド製品だから」
「すごい」
「中身は風魔法のみ。風魔法熟練度6以下の魔法なら、何でも使えるよ。ただ、有効期限つきね。24時間。つまり今日の間は使い放題」
「すごい!」
さすがにグッドオーシャンフィールド凄すぎやしないだろうか。普段の……非売品……と書いてがらくたと読むのはあれとして、この聖剣や魔属性球体。そして単語帳。単語帳は見た目と詠唱方法はあれだけど、すごく助けられてるアイテムだ。
「多分使わないと思うけど、持っておいて。
ほとんどのやつはおさくが一人で作ってるんだけど」
「おさくすごいな」
「聖剣と単語帳とこれは、私たちみんなで作ったのさ。単語帳は言わずもがなだけど、聖剣は流石に一人じゃ無理でしょ。『悪を斬る剣』なんてさ」
「…………え」
今……何か、今、とても引っ掛かったことがあった。でも、何か分からない。悪を斬る剣……それは、ディランさんも言っていた。実際にこの剣は悪を斬ってくれる。……何が、引っ掛かったんだろう。
「…………」
そんな僕の様子に気がついているのかいないのか、テラーさんはふわりと微笑むと、洞窟の外の方を見る。
「……そろそろなんだけど」
「え……そろそろって、何がだ?」
「より注目を集めるために、ウタくんの『使役』を、勝手に利用させていただきました」
「勝手にって……!?」
「あ、やっぱ怒る?」
「いや怒るもなにも、そんなこと出来るんですか!? 僕のスキルなのに……」
「まぁ、出来るんだな。『使役』なら、その使役している魔物が何か分かれば、ちょっとしたことなら出来る。例えば……そう」
外から、高らかな咆哮が聞こえる。それも、1体や2体じゃない。しかし、聞き覚えのある声ばかりだ。
慌てて外に飛び出す。アリアさんも、思わずといった感じて飛び出した。テラーさんはそれを止めず、後ろからゆっくりとついてくる。
「……みんな。というか、ここって…………」
目の前には、6体のワイバーン、17体のウルフ。……そして、
「ウター! 応援しに来たよー!」
すっかり元気を取り戻し、笑顔で手を振る、スラちゃんの姿があった。
そしてその場所は、まさにクラーミルを一望できるところ。少し見下ろせばすぐに分かる。あの遺跡の一番上。崩れて入れないと言われていた、あそこだ。
「目立つ方が、視線が集まるでしょ?」
振り向けば、テラーさんが自慢げに微笑んでいた。
「ワイバーンたちに名前つけな。そしたら出発するよ!」
個性の塊'sの三人は、僕らが寝るときもテラーさん以外ずっと起きていたが、気がついたら、これまたテラーさん以外いなくなっていた。
テラーさんは、今日は起きていて、何か本のページをめくっていた。僕が起きたことに気がつくとそれを閉じ、アイテムボックスから何かを取り出した。
「……あ、それ」
「おはようウタくん。アリアさんはまだ寝てるからね。これはご飯です。五月雨に近いものを用意しましたー」
テラーさんが手に持っているのは、いつかの玉子サンド。本当に五月雨のものとそっくりだ。
「おはようございます……。すごいですね、それ」
「でも食べるとなーんか違ってさ。隠し味が分からないのさ。ま、擬きってことで」
僕はそれを受けとると、一口口に運んだ。……確かに、五月雨とはちょっと味が違う。でも、十分に美味しい。……彰人さん、何入れてるんだろ。
それから、あっと思って、テラーさんに問いかける。
「体調……大丈夫なんですか?」
するとテラーさんはすごく深刻そうな顔をして、僕を見た。……やっぱり、あまり大丈夫じゃないのかもしれない。僕だって、寝て起きて万全な状態、とはいかなかったから。
「……すごく深刻なことに気がついたんだ」
「な、なんですか」
「……人間、動けないと何も出来なくてつまらない」
「一瞬でも本気で心配した僕がバカでした」
そうだこの人、個性の塊'sだった。それも、MP封じられても短刀とHPでごり押ししちゃうような人だった。
……逆に言えば、そんな人を簡単に無力化出来るような力を、相手は持っているわけだ。しっかり気を引き閉めないといけない。
「……ウタ、起きてたのか。それに、テラーも。もう大丈夫なのか?」
「アリアさん、おはようございます」
「おはよアリアさん、私はもうへーき。だてに最強の名前ついてないしね。
あ、はい。これアリアさんもね。玉子サンド五月雨擬き」
「擬き……にしては凝ってないか?」
「美味しいですよ!」
僕らが玉子サンドを食べ進めていると、テラーさんが今日の本題を話し出す。
「おさくとジュノンはもう表に出てて、向こうと話をつけてくれてるはず。私たちは……あともう少ししたらここを出て、とにかく街中を走り回る。
後ろからサポートするけど、普通の国民がほとんどだし……まぁ、風魔法一つでどうにかなるんじゃないかな。アリアさんには、これ渡しておく」
テラーさんはそう言って、魔属性球体を取り出す。しかし、今までのと少し違って、ほんのり青緑色に色づいているのだ。
「……色のある魔属性球体なんて初めてみたぞ」
「だろうね。グッドオーシャンフィールド製品だから」
「すごい」
「中身は風魔法のみ。風魔法熟練度6以下の魔法なら、何でも使えるよ。ただ、有効期限つきね。24時間。つまり今日の間は使い放題」
「すごい!」
さすがにグッドオーシャンフィールド凄すぎやしないだろうか。普段の……非売品……と書いてがらくたと読むのはあれとして、この聖剣や魔属性球体。そして単語帳。単語帳は見た目と詠唱方法はあれだけど、すごく助けられてるアイテムだ。
「多分使わないと思うけど、持っておいて。
ほとんどのやつはおさくが一人で作ってるんだけど」
「おさくすごいな」
「聖剣と単語帳とこれは、私たちみんなで作ったのさ。単語帳は言わずもがなだけど、聖剣は流石に一人じゃ無理でしょ。『悪を斬る剣』なんてさ」
「…………え」
今……何か、今、とても引っ掛かったことがあった。でも、何か分からない。悪を斬る剣……それは、ディランさんも言っていた。実際にこの剣は悪を斬ってくれる。……何が、引っ掛かったんだろう。
「…………」
そんな僕の様子に気がついているのかいないのか、テラーさんはふわりと微笑むと、洞窟の外の方を見る。
「……そろそろなんだけど」
「え……そろそろって、何がだ?」
「より注目を集めるために、ウタくんの『使役』を、勝手に利用させていただきました」
「勝手にって……!?」
「あ、やっぱ怒る?」
「いや怒るもなにも、そんなこと出来るんですか!? 僕のスキルなのに……」
「まぁ、出来るんだな。『使役』なら、その使役している魔物が何か分かれば、ちょっとしたことなら出来る。例えば……そう」
外から、高らかな咆哮が聞こえる。それも、1体や2体じゃない。しかし、聞き覚えのある声ばかりだ。
慌てて外に飛び出す。アリアさんも、思わずといった感じて飛び出した。テラーさんはそれを止めず、後ろからゆっくりとついてくる。
「……みんな。というか、ここって…………」
目の前には、6体のワイバーン、17体のウルフ。……そして、
「ウター! 応援しに来たよー!」
すっかり元気を取り戻し、笑顔で手を振る、スラちゃんの姿があった。
そしてその場所は、まさにクラーミルを一望できるところ。少し見下ろせばすぐに分かる。あの遺跡の一番上。崩れて入れないと言われていた、あそこだ。
「目立つ方が、視線が集まるでしょ?」
振り向けば、テラーさんが自慢げに微笑んでいた。
「ワイバーンたちに名前つけな。そしたら出発するよ!」
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