チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
もう一人の魔王
「ところで魔王って……そんな何体もいるものなのか? あれ一人だけだと思っていたんだが」
アリアさんがそう口にする。まぁそりゃそうだ。だって魔『王』だ。王さまなのだ。あんまりいたって仕方ないだろう。
「……覚えてる? あのときのあいつの言葉」
「言葉……?」
「『父上』って言ってたんだよ、あいつ」
魔王の、父親……?
そういえば、そんなこと言っていたような気もする。でもあの時僕はけっこうギリギリの状態で、記憶も曖昧だ。
「ずっと気になってたんだよね。魔王の父親ってなんなんだろうってさ」
「……でも、魔王と言えばあの魔王だけだ。塊'sとお前らが倒した、あいつだけ。……父親だからって、魔王とは限らないんじゃないか?」
「それがそうでもないみたいでさー」
テラーさんがアイテムボックスから、古そうな一冊の本を出す。言語理解のスキルを持ってるはずの僕も読めない、もはや文字なのか分からない文字が書かれていた。
「魔王の父親……それはつまり、魔人になるわけだけど、それについての記録が一切ない。
その代わり……魔王の力だったのかもしれない現象が書かれている」
「かもしれないって……」
「分からないんだよ。これが書かれたのはおよそ7000年前……例の異常気象を生き延びた小人属の誰か、研究者みたいな人が書いたものらしい」
「それって……あれですよね、ベネッド遺跡が出来るきっかけになった現象ですよね」
「そう、気温が一日に80℃以上上下する日が当たり前だったあの時期の話。
……読むね」
「読めるんですか?」
「いや、さすがに辞書もなかったから神様の力借りたよ。魔王討伐のためだしね」
そして、テラーさんはその本を開き、一部分読み上げる。
「……『あの日々を私たちは「地獄」と呼ぶことにした。焼けつくような熱さの地面。植物なんてとうに枯れた。ようやく夜が来たかと思えば、今度はは全て凍りつく。夕暮れのわずかな時間に、ほんの少し、一食分の食料を探すのだ。
このままでは身が持たない。我々はこの異常気象の原因を探し続けていた』」
言い表されるそれは、絵に描いたような『地獄』。そんな日々の中、探し求めた『原因』……それが、物理的な何かなのか、それとも単純に気象的な問題なのか、きっと、分かってはいなかったのだろう。それでも探し続けた。
「『そして、とある場所に辿り着いた。否、行くことは出来ない。海の上に浮かぶ、渦のような何か。日が落ち、空が暗闇に染まるその瞬間だけ、一瞬見ることが出来るのだ。我々はそれを「漆黒」と呼ぶことにした』」
つまりその先に、全ての元凶がいると、その人たちは考えたわけだ。そしてきっと、それを調べた。
「……ちょっと、止めるけどさ」
テラーさんがふと、僕とアリアさんを見た。
「……大丈夫?」
「なにが……ですか?」
「この先の内容って……結構なんだよね」
……それで、僕らにきを使っているのか。でも、例え怖かろうと、いずれ知らなくてはならないことで、知っていないといけないことで。
「……わたしは大丈夫だ。ウタは」
「僕も大丈夫です。……続けてください」
『本当、変わったよね』
「じゃ、読むからね」
今一瞬聞こえた言葉……。テラーさんの声が、重なって聞こえた。つまり、これが僕の能力なのだろう……。
「『漆黒自体がこの現象を引き起こしているのか、あるいはその先に何かがいるのか。それを知ろうと夕暮れ時に出ていった仲間がいた。
しかし、ダメだった。それをしてはダメだった。
戻ってくることはなかった。次の日の夕暮れ時、空にあいつは浮かんでいた。
魔法か? それとも何か別のものなのか。
分からない。
ただ、何かよく分からない力で操られ、ただの人形のように、宙に浮いていた。
そして我々がそれを目にした瞬間、あいつの首はとんだ。そして赤い雨が降り注ぎ、赤い夕焼けをさらに赤く染めていく。
あぁ、あぁ、地獄だ。
これはきっと、言い表しがたい「悪」による力であり、それはきっと、我々には理解が出来ないようなものなのだろう』
……ふぅ、最後は、ここ」
テラーさんはページを捲り、そして、あえて感情を与えないように読み上げる。
「『あぁ、すまなかった、すまなかった。全ては間違っていたのだ。
言い表しがたい悪の力? そんなものは存在しない。あれは、あの魔王が力の源としているものは、我々が確実に持っている感情であり、欲であった。
その全ては「悪」であった。あれを倒す術など、なにもない。
そうだ諦めろ。今すぐ諦めるんだ。もしも「漆黒」を調べている誰かがいるのなら、この書記を読んでいる人がいるのなら、今すぐそれをやめて、諦めるんだ。その命が消えてしまう。
これから我々は、全てをかけて、あの「漆黒」を封じる。だから、それを開けてしまうことがないように。
この結界は、不十分だ。いずれ「悪」は溢れ、破れてしまう。その時にはどうか、どうか全世界の人を想って、
犠牲になってくれ』」
……テラーさんは、そこで、本を閉じた。そして、ポツリと呟く。
「……やっぱり」
「うん、そうだね。計算が合わない」
「……どういう…………」
「もしもこの書記が正しいなら、少なくとも8年前には既に、漆黒が破られて、本当の、もう一人の魔王が復活しているはずなの」
謎は……増える一方だ。
アリアさんがそう口にする。まぁそりゃそうだ。だって魔『王』だ。王さまなのだ。あんまりいたって仕方ないだろう。
「……覚えてる? あのときのあいつの言葉」
「言葉……?」
「『父上』って言ってたんだよ、あいつ」
魔王の、父親……?
そういえば、そんなこと言っていたような気もする。でもあの時僕はけっこうギリギリの状態で、記憶も曖昧だ。
「ずっと気になってたんだよね。魔王の父親ってなんなんだろうってさ」
「……でも、魔王と言えばあの魔王だけだ。塊'sとお前らが倒した、あいつだけ。……父親だからって、魔王とは限らないんじゃないか?」
「それがそうでもないみたいでさー」
テラーさんがアイテムボックスから、古そうな一冊の本を出す。言語理解のスキルを持ってるはずの僕も読めない、もはや文字なのか分からない文字が書かれていた。
「魔王の父親……それはつまり、魔人になるわけだけど、それについての記録が一切ない。
その代わり……魔王の力だったのかもしれない現象が書かれている」
「かもしれないって……」
「分からないんだよ。これが書かれたのはおよそ7000年前……例の異常気象を生き延びた小人属の誰か、研究者みたいな人が書いたものらしい」
「それって……あれですよね、ベネッド遺跡が出来るきっかけになった現象ですよね」
「そう、気温が一日に80℃以上上下する日が当たり前だったあの時期の話。
……読むね」
「読めるんですか?」
「いや、さすがに辞書もなかったから神様の力借りたよ。魔王討伐のためだしね」
そして、テラーさんはその本を開き、一部分読み上げる。
「……『あの日々を私たちは「地獄」と呼ぶことにした。焼けつくような熱さの地面。植物なんてとうに枯れた。ようやく夜が来たかと思えば、今度はは全て凍りつく。夕暮れのわずかな時間に、ほんの少し、一食分の食料を探すのだ。
このままでは身が持たない。我々はこの異常気象の原因を探し続けていた』」
言い表されるそれは、絵に描いたような『地獄』。そんな日々の中、探し求めた『原因』……それが、物理的な何かなのか、それとも単純に気象的な問題なのか、きっと、分かってはいなかったのだろう。それでも探し続けた。
「『そして、とある場所に辿り着いた。否、行くことは出来ない。海の上に浮かぶ、渦のような何か。日が落ち、空が暗闇に染まるその瞬間だけ、一瞬見ることが出来るのだ。我々はそれを「漆黒」と呼ぶことにした』」
つまりその先に、全ての元凶がいると、その人たちは考えたわけだ。そしてきっと、それを調べた。
「……ちょっと、止めるけどさ」
テラーさんがふと、僕とアリアさんを見た。
「……大丈夫?」
「なにが……ですか?」
「この先の内容って……結構なんだよね」
……それで、僕らにきを使っているのか。でも、例え怖かろうと、いずれ知らなくてはならないことで、知っていないといけないことで。
「……わたしは大丈夫だ。ウタは」
「僕も大丈夫です。……続けてください」
『本当、変わったよね』
「じゃ、読むからね」
今一瞬聞こえた言葉……。テラーさんの声が、重なって聞こえた。つまり、これが僕の能力なのだろう……。
「『漆黒自体がこの現象を引き起こしているのか、あるいはその先に何かがいるのか。それを知ろうと夕暮れ時に出ていった仲間がいた。
しかし、ダメだった。それをしてはダメだった。
戻ってくることはなかった。次の日の夕暮れ時、空にあいつは浮かんでいた。
魔法か? それとも何か別のものなのか。
分からない。
ただ、何かよく分からない力で操られ、ただの人形のように、宙に浮いていた。
そして我々がそれを目にした瞬間、あいつの首はとんだ。そして赤い雨が降り注ぎ、赤い夕焼けをさらに赤く染めていく。
あぁ、あぁ、地獄だ。
これはきっと、言い表しがたい「悪」による力であり、それはきっと、我々には理解が出来ないようなものなのだろう』
……ふぅ、最後は、ここ」
テラーさんはページを捲り、そして、あえて感情を与えないように読み上げる。
「『あぁ、すまなかった、すまなかった。全ては間違っていたのだ。
言い表しがたい悪の力? そんなものは存在しない。あれは、あの魔王が力の源としているものは、我々が確実に持っている感情であり、欲であった。
その全ては「悪」であった。あれを倒す術など、なにもない。
そうだ諦めろ。今すぐ諦めるんだ。もしも「漆黒」を調べている誰かがいるのなら、この書記を読んでいる人がいるのなら、今すぐそれをやめて、諦めるんだ。その命が消えてしまう。
これから我々は、全てをかけて、あの「漆黒」を封じる。だから、それを開けてしまうことがないように。
この結界は、不十分だ。いずれ「悪」は溢れ、破れてしまう。その時にはどうか、どうか全世界の人を想って、
犠牲になってくれ』」
……テラーさんは、そこで、本を閉じた。そして、ポツリと呟く。
「……やっぱり」
「うん、そうだね。計算が合わない」
「……どういう…………」
「もしもこの書記が正しいなら、少なくとも8年前には既に、漆黒が破られて、本当の、もう一人の魔王が復活しているはずなの」
謎は……増える一方だ。
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