チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
今後
「……さーて、ウタくんの能力のことは一旦置いておいて……これからのことだけど」
話題をジュノンさんが切り替えた。……おそらく、僕のこれは、今日明日でどうにかなる問題ではないのだろう。だからこそ話題を変えたのだ。
「まず、今の状態で丸腰のままクラーミルに行こうなんて思ってないよね?」
「まぁ、さすがにな」
「それ言ったらさすがの侍も殴るよ?」
「おさくさん怖いです。体術超上級の人がそういうこと言っちゃダメだと思います」
「ごめーんねー!」
「……いいかい?」
「あ、はい」
呆れたようにため息をつくジュノンさん。……なんか、初めてあったときと印象が違う。ただ怖いだけの人じゃないんだって。なんだかんだで……優しいんだなぁって。
「……とにかく、クラーミルに行くには色々と作戦を考えなきゃいけない。
マルティネスには絶対に行っちゃダメだよ? 戦争を止めたいならね」
「そりゃそうだ」
「えっ……と、どうしてですか?」
「ブリスは、私たちがロインとレイナを殺したことにしたいんだろ? 現にそうしている。それはいいな?」
「はい……あ」
「気づいたか」
そうか、クラーミルの国民は、僕らが国王と女王を殺したと思っているんだ。だとすれば、その僕らがマルティネスに行けば、まさしく相手の思う壺ってことだ。
「でも、だとしたらどうすれば……」
ふと、玄関の扉から、何かの気配を感じる。何度か味わったことあるような、『強者』の気配。
「なんだ……まさか、あいつが」
「違うよー」
「……違う、のか?」
「うん違うー!」
「あっちも分かるようにこう気配を出してるわけだけど。でもまぁ、確認程度にね……。
その扉、グランシルかけてあるから、壊して入ってきてよ。あ、ドアは壊さないでね」
「ぐ、グランシル……?」
「炎属性の罠かな。引っ掛かった人を焼き尽くすっていう」
「それ解除できるんですか!?」
「……実力と知識を兼ねていればね」
そう言って、ドロウさんは視線を扉に戻す。なにか、緑色の光が優しく溢れたと思ったら、ゆっくりと扉が開いた。
……その先にいたのは、どこか懐かしくて、頼もしい、小さな人だった。
「え……サラ姉さん!?」
「アリア、体は大丈夫か? ウタも」
「どうして姉さんが……」
「こいつらに呼ばれたからな。もちろん、ラトは撒いてきた」
その小さな体を使って、あっさりと扉を閉め、サラさんは机の上に飛び乗る。そして、ジュノンを見てニッと笑った。
「久しぶりだな、ジュノン! ……まぁ、厄介なことにはなっているが」
「かなーり厄介だよね。まぁ……見てもらえば分かるだろうけど、これが本当のことね」
「だろうな。アリアがロインとレイナを殺すなんてありえない。分かってはいたが、確認できて安心したよ」
「それでこれからだけど」
「分かってる、手は打つよ」
「ありがとサラー! チョコいるー?」
「折角だからもらうよ」
正直、全くついていけてない。……え、どういうことだ? 今後のこと……塊'sはどうやってこれを切り抜けようと思っているんだ?
「……作戦を伝えます」
ジュノンさんが、場を切り替えるようにそう言い、地図に目を落とす。そして、『ミネドール』と書かれた場所に、指をのせる。
「……今私たちはミネドールにいる。正確には、ミネドールとクラーミルの国境にある山の中。
クラーミルとの戦争を避けるには、マルティネス・アリアがレイナとロイン、二人を殺していないことをクラーミルの国民に見せればいい」
「ただ、悪魔の計画では、あの遺跡で全員殺すつもりだったみたいだからな。ミネドールに逃げて、私まで関わってくるのは厄介だろう。クラーミルに入る前に殺そうとして来るはずだ」
「で、でも、さすがにブリス一人じゃ国境全てを見張るなんて無理なんじゃ……」
「一人なら、ね」
一人じゃ、ない?
どういうことかと思いテラーさんを見ると、赤い丸のところを指差す。
「……これ、何か分かる?」
「いや……だって、何もないじゃないですか」
「そう、何もない……『漆黒』以外には」
何を言っているのか分からない、と目で訴えると、おさくさんが口を開く。
「ブラックホールってあるじゃん?」
「あ、はい」
「それの、目の見えないバージョンがここにあるっぽいのね。『漆黒』っていう未知に繋がる穴のようなもの。そこには入れるのは、『漆黒』ってスキルを持ったやつだけなのさ。
つまり、今把握してるだけだと、ブリス一人」
「そんでもって、ここから出てくるとき、ブリスは低俗の悪魔をいくつか連れてくるんだ。それ全部を国境近くに配置すれば、気づかれる」
「それともう一つ」
ジュノンさんは僕に、とんでもない言葉を告げる。
「前倒した魔王……あれじゃない魔王が、ここにいる」
「え……」
「魔王がいるなら、私たちは倒さなきゃいけない。でも入れないし場所も分からない。やっとこの辺りって分かった程度。
……私たちは『漆黒』の場所を知りたい、そっちは戦争を阻止したい。二つとも叶えられる方法は、ブリスを取っ捕まえること」
利害の一致……というわけだ。
「クラーミルに行く手段は提供する。だから、上手くやってよね」
そう、いつになく真剣な目で、ジュノンさんは言ったのだった。
話題をジュノンさんが切り替えた。……おそらく、僕のこれは、今日明日でどうにかなる問題ではないのだろう。だからこそ話題を変えたのだ。
「まず、今の状態で丸腰のままクラーミルに行こうなんて思ってないよね?」
「まぁ、さすがにな」
「それ言ったらさすがの侍も殴るよ?」
「おさくさん怖いです。体術超上級の人がそういうこと言っちゃダメだと思います」
「ごめーんねー!」
「……いいかい?」
「あ、はい」
呆れたようにため息をつくジュノンさん。……なんか、初めてあったときと印象が違う。ただ怖いだけの人じゃないんだって。なんだかんだで……優しいんだなぁって。
「……とにかく、クラーミルに行くには色々と作戦を考えなきゃいけない。
マルティネスには絶対に行っちゃダメだよ? 戦争を止めたいならね」
「そりゃそうだ」
「えっ……と、どうしてですか?」
「ブリスは、私たちがロインとレイナを殺したことにしたいんだろ? 現にそうしている。それはいいな?」
「はい……あ」
「気づいたか」
そうか、クラーミルの国民は、僕らが国王と女王を殺したと思っているんだ。だとすれば、その僕らがマルティネスに行けば、まさしく相手の思う壺ってことだ。
「でも、だとしたらどうすれば……」
ふと、玄関の扉から、何かの気配を感じる。何度か味わったことあるような、『強者』の気配。
「なんだ……まさか、あいつが」
「違うよー」
「……違う、のか?」
「うん違うー!」
「あっちも分かるようにこう気配を出してるわけだけど。でもまぁ、確認程度にね……。
その扉、グランシルかけてあるから、壊して入ってきてよ。あ、ドアは壊さないでね」
「ぐ、グランシル……?」
「炎属性の罠かな。引っ掛かった人を焼き尽くすっていう」
「それ解除できるんですか!?」
「……実力と知識を兼ねていればね」
そう言って、ドロウさんは視線を扉に戻す。なにか、緑色の光が優しく溢れたと思ったら、ゆっくりと扉が開いた。
……その先にいたのは、どこか懐かしくて、頼もしい、小さな人だった。
「え……サラ姉さん!?」
「アリア、体は大丈夫か? ウタも」
「どうして姉さんが……」
「こいつらに呼ばれたからな。もちろん、ラトは撒いてきた」
その小さな体を使って、あっさりと扉を閉め、サラさんは机の上に飛び乗る。そして、ジュノンを見てニッと笑った。
「久しぶりだな、ジュノン! ……まぁ、厄介なことにはなっているが」
「かなーり厄介だよね。まぁ……見てもらえば分かるだろうけど、これが本当のことね」
「だろうな。アリアがロインとレイナを殺すなんてありえない。分かってはいたが、確認できて安心したよ」
「それでこれからだけど」
「分かってる、手は打つよ」
「ありがとサラー! チョコいるー?」
「折角だからもらうよ」
正直、全くついていけてない。……え、どういうことだ? 今後のこと……塊'sはどうやってこれを切り抜けようと思っているんだ?
「……作戦を伝えます」
ジュノンさんが、場を切り替えるようにそう言い、地図に目を落とす。そして、『ミネドール』と書かれた場所に、指をのせる。
「……今私たちはミネドールにいる。正確には、ミネドールとクラーミルの国境にある山の中。
クラーミルとの戦争を避けるには、マルティネス・アリアがレイナとロイン、二人を殺していないことをクラーミルの国民に見せればいい」
「ただ、悪魔の計画では、あの遺跡で全員殺すつもりだったみたいだからな。ミネドールに逃げて、私まで関わってくるのは厄介だろう。クラーミルに入る前に殺そうとして来るはずだ」
「で、でも、さすがにブリス一人じゃ国境全てを見張るなんて無理なんじゃ……」
「一人なら、ね」
一人じゃ、ない?
どういうことかと思いテラーさんを見ると、赤い丸のところを指差す。
「……これ、何か分かる?」
「いや……だって、何もないじゃないですか」
「そう、何もない……『漆黒』以外には」
何を言っているのか分からない、と目で訴えると、おさくさんが口を開く。
「ブラックホールってあるじゃん?」
「あ、はい」
「それの、目の見えないバージョンがここにあるっぽいのね。『漆黒』っていう未知に繋がる穴のようなもの。そこには入れるのは、『漆黒』ってスキルを持ったやつだけなのさ。
つまり、今把握してるだけだと、ブリス一人」
「そんでもって、ここから出てくるとき、ブリスは低俗の悪魔をいくつか連れてくるんだ。それ全部を国境近くに配置すれば、気づかれる」
「それともう一つ」
ジュノンさんは僕に、とんでもない言葉を告げる。
「前倒した魔王……あれじゃない魔王が、ここにいる」
「え……」
「魔王がいるなら、私たちは倒さなきゃいけない。でも入れないし場所も分からない。やっとこの辺りって分かった程度。
……私たちは『漆黒』の場所を知りたい、そっちは戦争を阻止したい。二つとも叶えられる方法は、ブリスを取っ捕まえること」
利害の一致……というわけだ。
「クラーミルに行く手段は提供する。だから、上手くやってよね」
そう、いつになく真剣な目で、ジュノンさんは言ったのだった。
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