チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
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「……あぁ、気がついたか」
「よかったぁ……大丈夫? ウタ」
目を開くと、目の前にはアリアさんの顔があった。周りからみんなの声が降り注ぎ、安心しつつも、困惑する。
僕は……ゴーレムに……それで、アリアさんが止めて、ポロンくんがeを……?
……そうか、『勇気』じゃない『勇気』を発動させて、そのあと、僕は、気を失ったのか。『自分の限界を越える』という条件なら、『勇気』は、それがどんな『勇気』であったとしても発動してしまうのだ。
このタイミングで気づけてよかった。もしこれが……なんて考えてたら、ふと、違和感を覚える。
やけに……アリアさんの……顔が……。
「ちっかぁぁぁい!」
「お、元気だな」
「元気だなじゃないですよ元気ですよ!」
「元気ならそれはよかった」
「はいありがとうございますなんで膝枕!?」
「転がしておくわけにもいかないだろ?」
「転がしてぇっ!」
「……ウタ兄、アリア姉。あのな……すごく、反応に、困るから……普通に話してくれねーか?」
「レイナさんたち、困ってますから」
「私は普通だぞ?」
「主に僕のせいですね!?」
「そうだな」
よし深呼吸だ。すーはー……。よし、落ち着いた。
「……落ち着きました」
「よろしい」
「……して、ウタ殿。本当に体に異変はないのだな? 大丈夫だな?」
「うん、もう大丈夫。……さっきはごめん。僕もどうかしてたんだと思う」
「この周辺の魔力も、さらに薄くなっている。人には影響しないのが普通だが……お主は、我らに力を貸していた。そのせいもあるのだろう」
それは違う。僕は……あのとき確かに、抱いてはいけない『勇気』を感じていた。すなわち、それは『殺意』……。
殺意でもあったそれは、僕の恐怖心でもあった。仲間を失うかもしれないと思った恐怖……。いつかと、同じ恐怖。
ミーレスに対しても同じような感情を抱いたけれど、それは今回とは微妙に違っていた。
「……あんまり深く考えるな。ゴーレムも、ポロンがなんとかした。冷静に考えれば簡単なことだった」
ふとアリアさんがやった視線の先には、巨大な土の山が出来ていた。それはもう、巨大な……。アリアさんがシエルトを張ってくれていなかったら、埋まってしまっていたであろう。
「岩のようになっている、とはいえ、もとは土。文字を削り取って消すのが困難なら、土で埋めてしまえばよかったんだ」
「そういうことだったんですか……」
「落ち着いて観察するのも大切だな。
体調が落ち着いたとはいえ、無理はするなよ、ウタ」
「はい」
ふと、僕の服を誰かが引く。振り向くと、レイナさんが僕を見て、それから、手話をする。
『向こうの方に、ロインがいる気がする』
「向こう……?」
見てみると、レイナさんが指差した先には、今となっては壊れてしまった入り口と同じような穴がぽっかりと空いていた。その先には日の光は一切差し込んでいなかった。真っ暗で、どこまでも続いていくかのような……。
「あの穴の先……ですか?」
『ブリス、あっち、行ける?』
「はい、行けますよ。……行きますか?」
『行きたい』
僕はみんなを見た。……異を唱えるような人はいなかった。不意にスラちゃんが僕に飛び付いてきた。
「わっ?!」
「ウタ! 早く行ってあげようよ!」
そして、少しだけ顔を伏せる。
「……レイナもだけどさ、もしロインがあそこにいるなら……暗いところにずっと一人って、怖いんだよ」
「…………そうだね」
僕は後ろを振り返り、出来るだけ明るく、レイナさんに笑いかけた。
「……じゃあ、行きましょうか」
『……いいの?』
「そのために来たんですから。……いいよね」
「いいに決まってますよ!」
「おいらたちがいれば安心だもんな!」
「では、行きましょうか」
ブリスさんが前に行き、僕らを導く。それについていこうとした瞬間、不意に、頭の中にあの言葉が思い出された。
『知らないからね?』
一瞬……本当に、一瞬だけ。ジュノンさんの、あの言葉と、冷ややかな視線と、どこか……悲しげにも見えた、あの姿を思い出した。
本当に……進んで、いいのか? この先は光もない。暗い。魔力を薄めている『なにか』がなんなのかも、まだ分かっていない。本当にいいのか?
……それでも、僕らは、二人を信じると決めたのだ。ロインと、レイナさんを、信じると決めたのだ。今ここで立ち止まるのは、どちらに対しても裏切る行為になる。進むしかない。進まなきゃいけない。
そんな僕のことを、アリアさんはずっと、横目で見ていた。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「……ライト」
初級光魔法の、小さな灯りだけで前へ進む。あまり広くはない場所だ。入ってすぐに階段があり下に続いていた。その階段をゆっくりと下っていけば、再び開けた場所にやって来た。
さっきのゴーレムのようなものはいない。ただ、その空間のほぼ中心に、人影があった。
「…………!」
レイナさんはそれを見て駆け出す。僕らも同じだった。奥の壁に凭れるようにして、ロインが眠っていた。その体はすでにボロボロで、浅く呼吸を繰り返している。右腕は壁に埋め込まれた手錠と繋がれ、抜くことができない。
「ロイン……。ケアル」
アリアさんが回復魔法を唱えると、しばらくして、ロインが目を開く。そしてそのすぐあと、その目を大きく見開き、叫んだ。
「逃げろっ!」
「よかったぁ……大丈夫? ウタ」
目を開くと、目の前にはアリアさんの顔があった。周りからみんなの声が降り注ぎ、安心しつつも、困惑する。
僕は……ゴーレムに……それで、アリアさんが止めて、ポロンくんがeを……?
……そうか、『勇気』じゃない『勇気』を発動させて、そのあと、僕は、気を失ったのか。『自分の限界を越える』という条件なら、『勇気』は、それがどんな『勇気』であったとしても発動してしまうのだ。
このタイミングで気づけてよかった。もしこれが……なんて考えてたら、ふと、違和感を覚える。
やけに……アリアさんの……顔が……。
「ちっかぁぁぁい!」
「お、元気だな」
「元気だなじゃないですよ元気ですよ!」
「元気ならそれはよかった」
「はいありがとうございますなんで膝枕!?」
「転がしておくわけにもいかないだろ?」
「転がしてぇっ!」
「……ウタ兄、アリア姉。あのな……すごく、反応に、困るから……普通に話してくれねーか?」
「レイナさんたち、困ってますから」
「私は普通だぞ?」
「主に僕のせいですね!?」
「そうだな」
よし深呼吸だ。すーはー……。よし、落ち着いた。
「……落ち着きました」
「よろしい」
「……して、ウタ殿。本当に体に異変はないのだな? 大丈夫だな?」
「うん、もう大丈夫。……さっきはごめん。僕もどうかしてたんだと思う」
「この周辺の魔力も、さらに薄くなっている。人には影響しないのが普通だが……お主は、我らに力を貸していた。そのせいもあるのだろう」
それは違う。僕は……あのとき確かに、抱いてはいけない『勇気』を感じていた。すなわち、それは『殺意』……。
殺意でもあったそれは、僕の恐怖心でもあった。仲間を失うかもしれないと思った恐怖……。いつかと、同じ恐怖。
ミーレスに対しても同じような感情を抱いたけれど、それは今回とは微妙に違っていた。
「……あんまり深く考えるな。ゴーレムも、ポロンがなんとかした。冷静に考えれば簡単なことだった」
ふとアリアさんがやった視線の先には、巨大な土の山が出来ていた。それはもう、巨大な……。アリアさんがシエルトを張ってくれていなかったら、埋まってしまっていたであろう。
「岩のようになっている、とはいえ、もとは土。文字を削り取って消すのが困難なら、土で埋めてしまえばよかったんだ」
「そういうことだったんですか……」
「落ち着いて観察するのも大切だな。
体調が落ち着いたとはいえ、無理はするなよ、ウタ」
「はい」
ふと、僕の服を誰かが引く。振り向くと、レイナさんが僕を見て、それから、手話をする。
『向こうの方に、ロインがいる気がする』
「向こう……?」
見てみると、レイナさんが指差した先には、今となっては壊れてしまった入り口と同じような穴がぽっかりと空いていた。その先には日の光は一切差し込んでいなかった。真っ暗で、どこまでも続いていくかのような……。
「あの穴の先……ですか?」
『ブリス、あっち、行ける?』
「はい、行けますよ。……行きますか?」
『行きたい』
僕はみんなを見た。……異を唱えるような人はいなかった。不意にスラちゃんが僕に飛び付いてきた。
「わっ?!」
「ウタ! 早く行ってあげようよ!」
そして、少しだけ顔を伏せる。
「……レイナもだけどさ、もしロインがあそこにいるなら……暗いところにずっと一人って、怖いんだよ」
「…………そうだね」
僕は後ろを振り返り、出来るだけ明るく、レイナさんに笑いかけた。
「……じゃあ、行きましょうか」
『……いいの?』
「そのために来たんですから。……いいよね」
「いいに決まってますよ!」
「おいらたちがいれば安心だもんな!」
「では、行きましょうか」
ブリスさんが前に行き、僕らを導く。それについていこうとした瞬間、不意に、頭の中にあの言葉が思い出された。
『知らないからね?』
一瞬……本当に、一瞬だけ。ジュノンさんの、あの言葉と、冷ややかな視線と、どこか……悲しげにも見えた、あの姿を思い出した。
本当に……進んで、いいのか? この先は光もない。暗い。魔力を薄めている『なにか』がなんなのかも、まだ分かっていない。本当にいいのか?
……それでも、僕らは、二人を信じると決めたのだ。ロインと、レイナさんを、信じると決めたのだ。今ここで立ち止まるのは、どちらに対しても裏切る行為になる。進むしかない。進まなきゃいけない。
そんな僕のことを、アリアさんはずっと、横目で見ていた。
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「……ライト」
初級光魔法の、小さな灯りだけで前へ進む。あまり広くはない場所だ。入ってすぐに階段があり下に続いていた。その階段をゆっくりと下っていけば、再び開けた場所にやって来た。
さっきのゴーレムのようなものはいない。ただ、その空間のほぼ中心に、人影があった。
「…………!」
レイナさんはそれを見て駆け出す。僕らも同じだった。奥の壁に凭れるようにして、ロインが眠っていた。その体はすでにボロボロで、浅く呼吸を繰り返している。右腕は壁に埋め込まれた手錠と繋がれ、抜くことができない。
「ロイン……。ケアル」
アリアさんが回復魔法を唱えると、しばらくして、ロインが目を開く。そしてそのすぐあと、その目を大きく見開き、叫んだ。
「逃げろっ!」
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