チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
無理だから
「……でーさ? おさくとかからも言われたかもしれないけどー、あんまり仲が良すぎるのも考えものだよって」
アイリーンさんは、まさに、おさくさんが言っていたようなそれを口にする。
「……その、仲が良すぎるっていうのは、おいらたちのこと……だよ、な?」
「んーん?」
「違うんですか!?」
「違うよー? Unfinishedは仲が良くてよろしい!」
それなら、なにと仲がいいのが良くないことなのか。僕は、今まで出会った人を思い返す。……関わっちゃいけないような人なんて、いなかったはずだ。
「……いいんだけどさ、見えてる範囲が狭いと危険だよって話。表裏の話じゃなくて、広く見ないとダメってこと」
「結局のところ、お主らが警戒しろと言っているのは誰のことなんだ? または、どの位置にいる人なんだ? そもそも人なのか?」
「…………」
アイリーンさんは、無言で首を振る。言えないと……言いたくないと、いっているみたいに。
「……あくまで自分達で気づけってことか」
「そうじゃないと……みんな、信じてくれないだろうしね。出来れば自分で気がついて、そっと離れてくれるとありがたいな」
「いや……今さら、個性の塊'sのみなさんの言葉を信じないなんて」
「他のことならそうかもしれないけどね。……私たちがあんまり深入りできない部分の話だし。何かあったところで、助けにいけない気がする……」
塊'sが深入りできない部分。神に禁じられたそれが、どの程度のものなのかは分からない。しかし、キルナンスの件、メヌマニエの件、鳥の件、そしてミーレス……。サイカの時もそうだった。
思えば、個性の塊'sが直接関わったのは、魔王の討伐時だけなのだ。裏を返せば、それ以外は基本的に深入りしない。
それでもいつも助けてくれていた。それは、もしかしたら、ギリギリのラインだったのかもしれない。
しかし今回は、それもない。助けに来ることすら、神様との『約束』に触れるような一件。
メヌマニエで、街が一つ壊れそうになって、それを助けていた。
ミーレスの一件で、あやうくマルティネスが途絶えるところだった。それも助けてくれた。
一つの街、一つの国。その時は助けてくれた。それが出来ないと言うことは、それ以上のことが起こるのか……?
「……例えば。例えばだよ?」
アイリーンさんが僕らから目を逸らし、少しだけ遠慮するように、ぽつりぽつりと言う。
「例えば……その一件で、Unfinishedの誰かが死んで、みんなが、すごく辛い想いをしたとしても……。
復讐とか、出来ないから。
生き返らせるとか、無理だから」
アイリーンさんは、自分のアイテムボックスから地図を取り出し、なにやら印をつけながら言う。
「私たちはさー……基本的には、Unfinishedを助けようと思うし、手伝っていこうと思ってる。でも、力が強いって言うその分、しがらみも多いんだよ? いつまでも助けるわけにもいかないなって、こないだ話したの」
印をつけた地図を地面に広げ、アイリーンさんは立ち上がった。
「……例えば、私がいなかったとして、スラちゃんの居場所、どうやって突き止める?」
「どう……?」
「ウタくん、スラちゃんの気配、追いかける自信ある?」
「…………」
そんなの、ない。気配の辿り方さえ分からない。
もしも、個性の塊'sがいなかったら、僕らは、何回死んでいたんだろう。一体何度……仲間を失っていたんだろう。
もしもの話をしても仕方がないってことは分かってる。これからの話をしなきゃいけないって。
「Unfinished……いいパーティー名だよね。未完成。未完成ってことは、成長できる証。完成するまでは、私たちは出来る限り助けてあげるよ。
でも……助けられない時もあるってこと、分かっててね。成長しないなら、未完成である意味がないんだよ」
「…………」
成長しないなら、未完成である意味がない……。もっともだ。
思えば、どこかで僕らは塊'sを頼っていた。個性の塊'sがいれば大丈夫だと、どこかでその力を過信しすぎていたところもある。
「あとはー……そうだなぁ。
私たちは、これから来るかもしれない『万が一』に備えるよ」
「…………万が一、って……?」
「私たちが全力で戦わなきゃいけなくなるかもしれない、万が一。ジュノンが調べてくれてるけどね、たぶんこの万が一……一万分の一なんて確率じゃなく、訪れるよ」
「どういうことなんだ……? 私たちは、どうしたらいい……?」
「ひとまずは、スラちゃん助けに行ったらいいんじゃないかな?
話しすぎちゃったー。帰るねー」
「あっ、待ってください!」
そして、まばたきをした次の瞬間には、アイリーンさんはもういなかった。
……個性の塊'sのことは、気がかりだ。でも、スラちゃんのことはもっともっと気がかりだ。
僕は、アイリーンさんが置いていった地図を見る。……森のもっと奥、洞窟のような場所らしい。ここにいけば、スラちゃんはいる。
(もしも、アイリーンさんが来ていなかったら)
僕は、どうやってスラちゃんの跡を追っただろうか?
頼りないリーダーでごめん。役立たずの主人でごめん。
心の中で謝った。
アイリーンさんは、まさに、おさくさんが言っていたようなそれを口にする。
「……その、仲が良すぎるっていうのは、おいらたちのこと……だよ、な?」
「んーん?」
「違うんですか!?」
「違うよー? Unfinishedは仲が良くてよろしい!」
それなら、なにと仲がいいのが良くないことなのか。僕は、今まで出会った人を思い返す。……関わっちゃいけないような人なんて、いなかったはずだ。
「……いいんだけどさ、見えてる範囲が狭いと危険だよって話。表裏の話じゃなくて、広く見ないとダメってこと」
「結局のところ、お主らが警戒しろと言っているのは誰のことなんだ? または、どの位置にいる人なんだ? そもそも人なのか?」
「…………」
アイリーンさんは、無言で首を振る。言えないと……言いたくないと、いっているみたいに。
「……あくまで自分達で気づけってことか」
「そうじゃないと……みんな、信じてくれないだろうしね。出来れば自分で気がついて、そっと離れてくれるとありがたいな」
「いや……今さら、個性の塊'sのみなさんの言葉を信じないなんて」
「他のことならそうかもしれないけどね。……私たちがあんまり深入りできない部分の話だし。何かあったところで、助けにいけない気がする……」
塊'sが深入りできない部分。神に禁じられたそれが、どの程度のものなのかは分からない。しかし、キルナンスの件、メヌマニエの件、鳥の件、そしてミーレス……。サイカの時もそうだった。
思えば、個性の塊'sが直接関わったのは、魔王の討伐時だけなのだ。裏を返せば、それ以外は基本的に深入りしない。
それでもいつも助けてくれていた。それは、もしかしたら、ギリギリのラインだったのかもしれない。
しかし今回は、それもない。助けに来ることすら、神様との『約束』に触れるような一件。
メヌマニエで、街が一つ壊れそうになって、それを助けていた。
ミーレスの一件で、あやうくマルティネスが途絶えるところだった。それも助けてくれた。
一つの街、一つの国。その時は助けてくれた。それが出来ないと言うことは、それ以上のことが起こるのか……?
「……例えば。例えばだよ?」
アイリーンさんが僕らから目を逸らし、少しだけ遠慮するように、ぽつりぽつりと言う。
「例えば……その一件で、Unfinishedの誰かが死んで、みんなが、すごく辛い想いをしたとしても……。
復讐とか、出来ないから。
生き返らせるとか、無理だから」
アイリーンさんは、自分のアイテムボックスから地図を取り出し、なにやら印をつけながら言う。
「私たちはさー……基本的には、Unfinishedを助けようと思うし、手伝っていこうと思ってる。でも、力が強いって言うその分、しがらみも多いんだよ? いつまでも助けるわけにもいかないなって、こないだ話したの」
印をつけた地図を地面に広げ、アイリーンさんは立ち上がった。
「……例えば、私がいなかったとして、スラちゃんの居場所、どうやって突き止める?」
「どう……?」
「ウタくん、スラちゃんの気配、追いかける自信ある?」
「…………」
そんなの、ない。気配の辿り方さえ分からない。
もしも、個性の塊'sがいなかったら、僕らは、何回死んでいたんだろう。一体何度……仲間を失っていたんだろう。
もしもの話をしても仕方がないってことは分かってる。これからの話をしなきゃいけないって。
「Unfinished……いいパーティー名だよね。未完成。未完成ってことは、成長できる証。完成するまでは、私たちは出来る限り助けてあげるよ。
でも……助けられない時もあるってこと、分かっててね。成長しないなら、未完成である意味がないんだよ」
「…………」
成長しないなら、未完成である意味がない……。もっともだ。
思えば、どこかで僕らは塊'sを頼っていた。個性の塊'sがいれば大丈夫だと、どこかでその力を過信しすぎていたところもある。
「あとはー……そうだなぁ。
私たちは、これから来るかもしれない『万が一』に備えるよ」
「…………万が一、って……?」
「私たちが全力で戦わなきゃいけなくなるかもしれない、万が一。ジュノンが調べてくれてるけどね、たぶんこの万が一……一万分の一なんて確率じゃなく、訪れるよ」
「どういうことなんだ……? 私たちは、どうしたらいい……?」
「ひとまずは、スラちゃん助けに行ったらいいんじゃないかな?
話しすぎちゃったー。帰るねー」
「あっ、待ってください!」
そして、まばたきをした次の瞬間には、アイリーンさんはもういなかった。
……個性の塊'sのことは、気がかりだ。でも、スラちゃんのことはもっともっと気がかりだ。
僕は、アイリーンさんが置いていった地図を見る。……森のもっと奥、洞窟のような場所らしい。ここにいけば、スラちゃんはいる。
(もしも、アイリーンさんが来ていなかったら)
僕は、どうやってスラちゃんの跡を追っただろうか?
頼りないリーダーでごめん。役立たずの主人でごめん。
心の中で謝った。
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