チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
どうする?
……夜。深夜だ。
おいらは捕まってい人たちを一人ずつ起こしてまわった。あいつらに気づかれないように、絶対に声をあげないように言って。
夜になれば、おいらの仲間がやってくる。……アリア姉は、ちょっと心配な部分があるけど、ウタ兄がいれば大丈夫だろう。
「……サイカ、万が一の時はよろしくな」
おいらは小声でそうサイカに呼び掛ける。すると、サイカも小声で返してくる。
「わかってる。……でも、」
「でもじゃないよ! ……おいらなら大丈夫」
そして、床に開いた抜け道を見た。土魔法で穴を掘って、外までの抜け道を作った。アリア姉たちが攻めてきて、おいらたちの方の見張りが手薄になれば、ここからみんなを逃がすことが出来る。
そのことを、みんなももう把握している。だから、その時を今か今かと待ち望んでいるのだ。
「……それに、万が一が起こったとき、サイカには、ウタ兄たちの方にいてほしいんだ。そうじゃないと、きっと、殺されるから」
「……ポロン」
「おいらが死ぬよりもさ、おいら……自分の仲間が死ぬ方が、ずっとずっと嫌なんだ。だからさ! ……頼むよ」
その時、強い魔法の気配を感じた。ウタ兄たちが来たんだ。おいらは外から聞こえるわめき声を頭の中からシャットアウトして、足音にだけ耳を澄ました。
……1……2……3、4…………。出ていったのは四人か。ここに入ってきたときの感じからして、おいらたちに対する見張りは五人。残ってるのは一人だけと言うことだ。
少しだけ会話に耳を澄ました。……見張りがやられた、とか、寝ていたやつらはどうした、とか、そういう声が聞こえてくる。……上手くやってくれたんだな!
おいらは振り返り、みんなに合図を出す。みんな一斉に抜け道の方へと駆けていった。
「走らないで! 静かに、慎重に、な?」
「……ポロンおにいちゃん…………」
「ん? どうしたメロウ。早くお兄ちゃんと一緒に外に――」
メロウと目を合わせようとしたとき、不意に、ぎゅっと抱き締められた。
「帰ってきてね」
「……へへっ、わかってるよ! 外に出たら、フローラと一緒に遊ぼうな!」
「……うん!」
そしてサイカに手を引かれて抜け道の方へと足早に去っていく。サイカは、出ていく直前、少しだけこちらを見た。しかしなにも言わずに、そのまま外に出る。
…………。
(みんな、出た……か? みんなが無事に出たならおいらも続いて――)
と、思ったがやめた。抜け道を土魔法で塞ぎ、部屋の隅の方の柱の裏に隠れた。
感じたのは魔力ではない。紛れもない殺気――。刺すようなその気配に、ぞくりと体が震えた。
おそらくあの人。アニキとか呼ばれていたその人だ。
一人だけ、明らかに違う気配を纏っていた。100%彼がボスで、あいつを倒さなければ、人身売買は続けられる。いずれは戦わなくてはならない人。だけど、あの深い青色の目は、おいらには、恐ろしかった。
かつて、おいらを裏切り者にしようとしたあいつと、どことなく似ている目だった。
ガチャリ……と音がして、扉が開かれる。静かに歩み寄ってくるその人の足取りには、ほとんど迷いがないように思える。……商品が、全部逃げ出していることを、知っていたかのようだった。逃げると知っていて、黙っていたかのような…………。
「……どうやったのかは分からないけど、せいぜい『偽装』に似たスキルでも使ったのかなぁ。
でも、使いなれていないんだね。称号の欄が空白なんてこと、あり得ないんだよ」
おいらがいることもバレてる! どうしよう……。
このまま捕まれば、殺されることはない。きっと、おいらをネタにしてアリア姉を揺するとか、そういうことに使うんだろう。
「30の安物よりも1の高額商品……。お前は、キルナンスかなにかの生き残りか? あー、でも、マルティネスの姫と一緒ってことは、キルナンスを倒すのに一役買った、ってことかな」
「…………」
「元々、俺らを潰すのが目的だったんだろ? だからバカっぽいふりをして忍び込んだ。
味方が助けに来て、見張りが手薄になったとき、逃げ出す手はずだったか? 安心しな。こちとらそんなに大所帯じゃない。逃げたやつはそのまま逃げただろうよ」
……いや、おいらを捕まえて揺するのはないな。ここまで頭のいいやつなら、ウタ兄の『勇気』そしてそれが発動するタイミングが……『仲間のために行動しようとしたとき』だということも、きっと知っている。
それなら、おいらが捕まっているのを見たウタ兄が『勇気』を発動させる可能性が高いことも分かっている。ステータスが100倍になっているウタ兄は実質2100レベル。さすがに普通の人が普通のスキルで敵う人がいるとは思えない。
……それならば、一体、何をしようと思っているのか。全くわからない。
「……俺が何をしようとしているのか、分からないかな?」
「…………」
もしも、確実にウタ兄たちを仕留めようとするならば、反撃できない状況に引き入れるのが一番手っ取り早い。そうするには、どうしたらいいのか……。
(……まさか)
気づいた瞬間、ぞくりと体が震えた。
……でも、おいらはちょっとホッとした。
(サイカにお願いしといてよかった)
おいらは捕まってい人たちを一人ずつ起こしてまわった。あいつらに気づかれないように、絶対に声をあげないように言って。
夜になれば、おいらの仲間がやってくる。……アリア姉は、ちょっと心配な部分があるけど、ウタ兄がいれば大丈夫だろう。
「……サイカ、万が一の時はよろしくな」
おいらは小声でそうサイカに呼び掛ける。すると、サイカも小声で返してくる。
「わかってる。……でも、」
「でもじゃないよ! ……おいらなら大丈夫」
そして、床に開いた抜け道を見た。土魔法で穴を掘って、外までの抜け道を作った。アリア姉たちが攻めてきて、おいらたちの方の見張りが手薄になれば、ここからみんなを逃がすことが出来る。
そのことを、みんなももう把握している。だから、その時を今か今かと待ち望んでいるのだ。
「……それに、万が一が起こったとき、サイカには、ウタ兄たちの方にいてほしいんだ。そうじゃないと、きっと、殺されるから」
「……ポロン」
「おいらが死ぬよりもさ、おいら……自分の仲間が死ぬ方が、ずっとずっと嫌なんだ。だからさ! ……頼むよ」
その時、強い魔法の気配を感じた。ウタ兄たちが来たんだ。おいらは外から聞こえるわめき声を頭の中からシャットアウトして、足音にだけ耳を澄ました。
……1……2……3、4…………。出ていったのは四人か。ここに入ってきたときの感じからして、おいらたちに対する見張りは五人。残ってるのは一人だけと言うことだ。
少しだけ会話に耳を澄ました。……見張りがやられた、とか、寝ていたやつらはどうした、とか、そういう声が聞こえてくる。……上手くやってくれたんだな!
おいらは振り返り、みんなに合図を出す。みんな一斉に抜け道の方へと駆けていった。
「走らないで! 静かに、慎重に、な?」
「……ポロンおにいちゃん…………」
「ん? どうしたメロウ。早くお兄ちゃんと一緒に外に――」
メロウと目を合わせようとしたとき、不意に、ぎゅっと抱き締められた。
「帰ってきてね」
「……へへっ、わかってるよ! 外に出たら、フローラと一緒に遊ぼうな!」
「……うん!」
そしてサイカに手を引かれて抜け道の方へと足早に去っていく。サイカは、出ていく直前、少しだけこちらを見た。しかしなにも言わずに、そのまま外に出る。
…………。
(みんな、出た……か? みんなが無事に出たならおいらも続いて――)
と、思ったがやめた。抜け道を土魔法で塞ぎ、部屋の隅の方の柱の裏に隠れた。
感じたのは魔力ではない。紛れもない殺気――。刺すようなその気配に、ぞくりと体が震えた。
おそらくあの人。アニキとか呼ばれていたその人だ。
一人だけ、明らかに違う気配を纏っていた。100%彼がボスで、あいつを倒さなければ、人身売買は続けられる。いずれは戦わなくてはならない人。だけど、あの深い青色の目は、おいらには、恐ろしかった。
かつて、おいらを裏切り者にしようとしたあいつと、どことなく似ている目だった。
ガチャリ……と音がして、扉が開かれる。静かに歩み寄ってくるその人の足取りには、ほとんど迷いがないように思える。……商品が、全部逃げ出していることを、知っていたかのようだった。逃げると知っていて、黙っていたかのような…………。
「……どうやったのかは分からないけど、せいぜい『偽装』に似たスキルでも使ったのかなぁ。
でも、使いなれていないんだね。称号の欄が空白なんてこと、あり得ないんだよ」
おいらがいることもバレてる! どうしよう……。
このまま捕まれば、殺されることはない。きっと、おいらをネタにしてアリア姉を揺するとか、そういうことに使うんだろう。
「30の安物よりも1の高額商品……。お前は、キルナンスかなにかの生き残りか? あー、でも、マルティネスの姫と一緒ってことは、キルナンスを倒すのに一役買った、ってことかな」
「…………」
「元々、俺らを潰すのが目的だったんだろ? だからバカっぽいふりをして忍び込んだ。
味方が助けに来て、見張りが手薄になったとき、逃げ出す手はずだったか? 安心しな。こちとらそんなに大所帯じゃない。逃げたやつはそのまま逃げただろうよ」
……いや、おいらを捕まえて揺するのはないな。ここまで頭のいいやつなら、ウタ兄の『勇気』そしてそれが発動するタイミングが……『仲間のために行動しようとしたとき』だということも、きっと知っている。
それなら、おいらが捕まっているのを見たウタ兄が『勇気』を発動させる可能性が高いことも分かっている。ステータスが100倍になっているウタ兄は実質2100レベル。さすがに普通の人が普通のスキルで敵う人がいるとは思えない。
……それならば、一体、何をしようと思っているのか。全くわからない。
「……俺が何をしようとしているのか、分からないかな?」
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もしも、確実にウタ兄たちを仕留めようとするならば、反撃できない状況に引き入れるのが一番手っ取り早い。そうするには、どうしたらいいのか……。
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