チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

ドラゴン四天王

 突然ドロウさんが三体のドラゴンを呼び出し、突然ドラくんを呼べと言われ、突然呼び出されたドラくんが他の三体――サン、ナイル、ビャク――に詰め寄られ、もう訳がわからなかった。
 もちほんそれは僕に限ったことではなく。


「……どーいうことだ?」

「わっかんねぇ」

「お知り合い……お友だち? でしょうか?」


 この通りアリアさん、ポロンくん、フローラも頭の中ははてなマークだった。
 そんななか、人間のなかで唯一納得したように声をあげたのは、ドロウさんだった。


「あー! ダークドラゴン! いやー、やっぱかっこいいねー」

「え……あ、りがどう?」

「あの……?」

「俺ら4匹はドラゴン四天王。俺は南の、ナイルは北の、ビャクは東の、ダークは西の王だぜ」

「そうなの!?」


 そ、そういえば会ったときに王だとか言ってたけど……まさか四天王とは。僕が驚いてドラくんを見ると、ため息をつきつつ、ドラくんがうなずく。


「まぁ……そうだな」

「……ドラくんが四天王……」

「って、お前、今ドラくんって呼ばれてんのか……」

「わ、笑ったな!? 笑ったなお主! よ、ようやく慣れてきたというのに……」

「「……ごめーん」」

「とりあえずダーク? 一から十まで教えてもらおうじゃないの」

「わ、分かった! 分かったから!」


 ドラくんはどこか諦めたようにため息をつき、少し不機嫌そうに言った。


「……とりあえず、三年前にあいつとの主従関係を解消した」


 あいつ……っていうのが誰なのか僕は知らないけれど、サンは意外そうに声をあげる。


「そうなのか? そこそこ長い付き合いだったのに、これまたどうして?」

「……俺の方があいつよりも強くなったから。それだけのことだ」

「ふーん? ずっと前からダークの方が強いような気もしてたけど、そうでもなかったんだね」

「それにしたって、今度はこいつと契約? どう考えてもあいつの方が強いじゃないか」


 ナイルが僕を小突く。僕はチョッとよろけながら苦笑いを浮かべた。確かにそうなんだよなぁ。ドラくんの方がめちゃ強いし。


「とはいってもなぁ……。我が去年操られてしまったのは知っているな?」

「そりゃね。まさかダークが操られるなんて思ってなかったから。それで、それがどうかしたの?」

「たまたま偶然とはいえ……ウタ殿に助けられてしまったからな」

「そうなのか?」

「いやぁ……本当にたまたま偶然なんですけどね」

「レベル1のやつに従うなんてとは思ったが、倒されたのではなく、助けられてのだからな……」

「……の割には不服そうだったけどな」


 アリアさんがそんな風に言う。……まぁ、確かにね。


「そんなことをわざわざ掘り出さなくても……。ゴホン、まぁ、大体そういうことだ。
 して、お主らはどうしてここに……」

「まぁそりゃあ、俺らはドロウを主として使えてるからな」

「お主ら全員か!? こやつ何者だ!?」

「……個性の塊'sって言えば、分かるか?」

「あー……なるほどな」


 っていうか、そもそもの目的忘れてない!? ステータス聞きに来たのに、結局意味不明の集団と戦って(ドロウさんが)それだけで終わってない!?


「結局相手のステータスわからないまんまじゃん……」

「確かに……」

「あのー、参考までに、私の見る?」


 ドロウさんがそういうが、正直参考になると全く思えない。


「え、えっと、一応鑑定させてください」

「どうぞどうぞー」



名前 ドロウ

種族 人間

年齢 22

職業 村人(召喚師)

レベル 97

HP 90000

MP 14700

スキル アイテムボックス・鑑定・使役(超上級)・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・水魔法(熟練度7)・氷魔法(熟練7)・風魔法(熟練度7)・雷魔法(熟練度8)・土魔法(熟練度9)・光魔法(熟練度8)・闇魔法(熟練度8)・回復魔法(熟練度6)

ユニークスキル ドラゴン召喚・アンドロイド・レインボー・打撃半減・カップラーメン

称号 元最強の召喚師・ドラゴン愛好家・歩く校則・個性の塊's



 参考にならない。MPはともかくHP90000ってなに!? 耐久性ありすぎない!?
 そしてまた気になるスキル……アンドロイドからかな。


アンドロイド……自身のステータスを10倍にし、防御をさらに5倍にする。発動時間は無限。


 つよ! ステータス10倍に防御5倍!? ただでさえHP90000なのに!?
 よ、よし次はレインボーだ。


レインボー……空に虹を架け、そこから魔法を発動させる。対象(無限に選択可)に対して特大ダメージ。混乱状態にさせる。混乱の継続時間は10分。


 そりゃ混乱するでしょ! 虹が急に現れたと思ったら攻撃されてるの! そりゃ混乱するでしょ!


打撃半減……自身が受ける物理ダメージを半減できる。


 ……文字通りでよかった。
 さてさて…………なんだよ『カップラーメン』って。なにさ『カップラーメン』って。


カップラーメン……カップラーメンが出てくる。最大で5つまで。味は醤油、塩、味噌、とんこつなど、存在する味ならば選択可能。お湯はセルフサービス。


 いる!? このスキル!
 アイリーンさんのブラックサンダーならその場で食べられるけどさ!? これ、普通に家でつくるやつでしょ!? ……ってもしかして、テラーさんが言ってた、魔王の討伐時間計ったカップヌードルって、このスキルで……。


「……ウタさん、どう、でした?」

「正直に言いますよ? ……全く参考になりません。諦めて先に進みましょう」

「……うん、まぁ、そうだよなぁ」

「なんかごめんなさい」

「いえ……ドラくん、せっかく呼んだし、ついてきてもらっていいかな?」

「心得た」


 ……僕らは気づいていなかった。
 こんなくだらないことしている間に、事態は急変していたと言うことに。

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