チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない
注意勧告
あのあと、僕らは本屋へとを足を運んだ。こぢんまりとした、どちらかというと古本屋のような小さな本屋だ。
その前まで来ると、フローラは僕らを見て言った。
「中は狭いですし……予約しているものを買うだけなので、すぐ終わると思います。だから、ここで待っていてくれませんか?」
「うん、分かったよ。いいですよね?」
「おいらは構わないよ!」
「あぁ。店の前にもいくつか本があるし、それを眺めながら待ってるか」
「分かりました。じゃあ、待っててくださいね!」
フローラは僕に背を向け、少し小走りに店のなかに入っていった。
僕は店頭においてある本を手にとってパラパラとめくってみた。……日本語じゃない。読めるけど、やっぱり違う世界なんだなぁと実感する。
「本かぁ。おいら、あんまり読んだことないんだよな」
「そうなの?」
「少しは読んだけど、本を買うお金とかなかったし、あるものを読んでるだけだったよ。難しいのが多かったけどな。他は知らない」
ポロンくんが普通に近づいたことで、逆に、ポロンくんがそういう生い立ちだってことを忘れてしまうことが多々ある。……反省しないとなぁ。
と、そんなことを思っていたとき、不意に後ろから肩をぽんぽんと叩かれた。
「はい?」
それに振り向くとそこには……
「ちっす」
「うわぁぁぁ!?」
「ど、どうしたウ……タ……うわぁぁぁぁ!!」
「…………確認だけど、普通の人だよな? な?」
「人だよ?」
そう、そこにいたのは侍さんだ。それだけで僕とアリアさんは発狂ものだ。SAN値が削れる。
そしてそんな僕らを気にせず、侍さんはまたこんなことを言う。
「困ったときはいっそのこと、なんでも口にするのが良いと思うなぁ」
「口にする……?」
口にするといっても、何を? 確か昨日は意思を告げるとか言ってたっけ?
「……本日は注意勧告に来ました」
「注意勧告?」
侍さんは意味ありげにうなずく。僕らも少し真剣になる。今まで侍さんは意味不明なことをいって、なにかを売り付けて帰るだけだった。それなのに、わざわざ『注意勧告』と言ってくる。なにかあるに違いない。
「今夜、一波乱ありそうな予感がします」
「……その心は?」
「勘」
「勘ですか」
「勘か」
「勘なのかよ」
「んー、特にアリアさんは気をつけた方がいいんじゃないかな? と、侍は思うぜ米べー」
しかし、勘とは言えど、侍さんが言うことはいつもどこかで役に立ってきた。キルナンスの襲撃時間や、幹部たちの弱点とその順番。……今回も、ふいにはしない方がいいだろう。
おそらく、僕と同じようなことを思ったのか、アリアさんが侍さんの言葉にうなずき、言葉を返した。
「分かった。頭のなかに入れておこう。わざわざありがとうな。助かった」
「ま、暇潰しのいっかんでもあるしねー。それに……」
すると、侍さんは、いつもの様子に戻って笑う。
「お客さん減っちゃうとこまるからさぁ!」
「……え、あ」
「というわけでおまちかね! グットオーシャンフィールドショッピングの時間だよー! みんなー、準備はいいかなー?」
「「結局こうなる!」」
「え? え?」
動揺するポロンくんをよそ目に、侍さんはアイテムボックスから一冊の本を出した。
薄茶色の表紙に、少し濃い茶色で「English word's」と書いてある単行本よりも少し小さいものだ。
……ん? 英語なんですけど。え?
「本日ご紹介するのはー、こちら! グットオーシャンフィールドお手製英単語帳です!」
「猛烈に要らない!」
英単語!? しかも英単語なの!? この世界に来てまで英語なの!? え、通じる? 英語通じる? いや、通じなくたても言語理解あるし……え! いらない!
「……なぁ、ウタ兄、英単語帳ってなんだ?」
「ちょっと説明省くけど、とりあえず要らないと思う」
構わず侍さんは説明を続ける。
「この単語帳、もちろん普通の単語帳じゃあありません! 高校三年生のために作られた、センターにも対応した単語帳なのです!」
……ここまで聞いた時点での僕の感想は、正直、『え? あ、その程度か』くらいだった。
今まで買ったものと言えば、くっそ高い時計と睡眠学習用枕だ。それに比べると、単語帳はずいぶんとまともに見える。……感覚麻痺してるな。
「なんとお一つ銀貨一枚!」
「「「高い!!!」」」
こ、ここはあくまでそうくるのか……。単語帳一万円は高すぎやしないだろうか?
「はーい、た、単語帳が銀貨一枚……?! Oh……タカスギルゼ! ってなったあなた!」
「あ、僕のことだ」
「驚くなかれ! ただの単語帳じゃあないんだな、これが」
そうすると侍さんは単語帳をパラパラとめくりながら言う。
「みなさん、先生たちは何かにつけてテストテスト。ちょっとはゆっくりしたいと思いませんかねぇ!? くっそ、あのケチじじい……。頭ポロリさせたるぞ」
愚痴が聞こえる気がする。
「っと……こほん。この単語帳! 人件費が莫大でしてね。なんとこれ! 中に入っているすべての単語に語呂合わせがふられているのです! これで、テストもバッチリだね!
さぁ、買うかな!?」
「僕らは別に買う訳じゃ」
「そ、そうだ! 私たちはただ……」
「さぁ、君たち! この単語帳、買ってくれるかな?!」
「「「い! いいともー!」」」
……この侍さんのうまいところは、絶対に一人一冊買わされているってことかな。絶対必要ないのに……。
結局僕らは、たっかい単語帳を一人一冊手に取ることになってしまった。
手に取ってしまったら中身が気になって、そっと真ん中ほどのページをひらいてみた。
……そしたらあまりにも個性的だったので、例をあげてみようか。
dismiss 無視をする
《語呂合わせ》ディスってミスって無視をする
diminish 減少する
《語呂合わせ》で、ミニシュカートが減少する
anthropologist 人類学者
《語呂合わせ》人類学者は呟いた。「あの空パラパラジンギスカン」
……なにこの絶妙なセンス。パラパラジンギスカンってなに?! どう読んだらそうなるの!? ミニシュカートって……。そして極めつけはこれである。
attribute ~のせいにする
《語呂合わせ》アトリビュート、あんたのせいよ!
distribute 分配する
《語呂合わせ》ディストリビュート、早く分配しなさいよ!
contribute 貢献する
《語呂合わせ》コントリビュート、貢献しなさい!
こ、これは……なんだこのビュート兄弟? 姉妹? は……。
それにしても、今夜…………なにが起こるんだろう。
その前まで来ると、フローラは僕らを見て言った。
「中は狭いですし……予約しているものを買うだけなので、すぐ終わると思います。だから、ここで待っていてくれませんか?」
「うん、分かったよ。いいですよね?」
「おいらは構わないよ!」
「あぁ。店の前にもいくつか本があるし、それを眺めながら待ってるか」
「分かりました。じゃあ、待っててくださいね!」
フローラは僕に背を向け、少し小走りに店のなかに入っていった。
僕は店頭においてある本を手にとってパラパラとめくってみた。……日本語じゃない。読めるけど、やっぱり違う世界なんだなぁと実感する。
「本かぁ。おいら、あんまり読んだことないんだよな」
「そうなの?」
「少しは読んだけど、本を買うお金とかなかったし、あるものを読んでるだけだったよ。難しいのが多かったけどな。他は知らない」
ポロンくんが普通に近づいたことで、逆に、ポロンくんがそういう生い立ちだってことを忘れてしまうことが多々ある。……反省しないとなぁ。
と、そんなことを思っていたとき、不意に後ろから肩をぽんぽんと叩かれた。
「はい?」
それに振り向くとそこには……
「ちっす」
「うわぁぁぁ!?」
「ど、どうしたウ……タ……うわぁぁぁぁ!!」
「…………確認だけど、普通の人だよな? な?」
「人だよ?」
そう、そこにいたのは侍さんだ。それだけで僕とアリアさんは発狂ものだ。SAN値が削れる。
そしてそんな僕らを気にせず、侍さんはまたこんなことを言う。
「困ったときはいっそのこと、なんでも口にするのが良いと思うなぁ」
「口にする……?」
口にするといっても、何を? 確か昨日は意思を告げるとか言ってたっけ?
「……本日は注意勧告に来ました」
「注意勧告?」
侍さんは意味ありげにうなずく。僕らも少し真剣になる。今まで侍さんは意味不明なことをいって、なにかを売り付けて帰るだけだった。それなのに、わざわざ『注意勧告』と言ってくる。なにかあるに違いない。
「今夜、一波乱ありそうな予感がします」
「……その心は?」
「勘」
「勘ですか」
「勘か」
「勘なのかよ」
「んー、特にアリアさんは気をつけた方がいいんじゃないかな? と、侍は思うぜ米べー」
しかし、勘とは言えど、侍さんが言うことはいつもどこかで役に立ってきた。キルナンスの襲撃時間や、幹部たちの弱点とその順番。……今回も、ふいにはしない方がいいだろう。
おそらく、僕と同じようなことを思ったのか、アリアさんが侍さんの言葉にうなずき、言葉を返した。
「分かった。頭のなかに入れておこう。わざわざありがとうな。助かった」
「ま、暇潰しのいっかんでもあるしねー。それに……」
すると、侍さんは、いつもの様子に戻って笑う。
「お客さん減っちゃうとこまるからさぁ!」
「……え、あ」
「というわけでおまちかね! グットオーシャンフィールドショッピングの時間だよー! みんなー、準備はいいかなー?」
「「結局こうなる!」」
「え? え?」
動揺するポロンくんをよそ目に、侍さんはアイテムボックスから一冊の本を出した。
薄茶色の表紙に、少し濃い茶色で「English word's」と書いてある単行本よりも少し小さいものだ。
……ん? 英語なんですけど。え?
「本日ご紹介するのはー、こちら! グットオーシャンフィールドお手製英単語帳です!」
「猛烈に要らない!」
英単語!? しかも英単語なの!? この世界に来てまで英語なの!? え、通じる? 英語通じる? いや、通じなくたても言語理解あるし……え! いらない!
「……なぁ、ウタ兄、英単語帳ってなんだ?」
「ちょっと説明省くけど、とりあえず要らないと思う」
構わず侍さんは説明を続ける。
「この単語帳、もちろん普通の単語帳じゃあありません! 高校三年生のために作られた、センターにも対応した単語帳なのです!」
……ここまで聞いた時点での僕の感想は、正直、『え? あ、その程度か』くらいだった。
今まで買ったものと言えば、くっそ高い時計と睡眠学習用枕だ。それに比べると、単語帳はずいぶんとまともに見える。……感覚麻痺してるな。
「なんとお一つ銀貨一枚!」
「「「高い!!!」」」
こ、ここはあくまでそうくるのか……。単語帳一万円は高すぎやしないだろうか?
「はーい、た、単語帳が銀貨一枚……?! Oh……タカスギルゼ! ってなったあなた!」
「あ、僕のことだ」
「驚くなかれ! ただの単語帳じゃあないんだな、これが」
そうすると侍さんは単語帳をパラパラとめくりながら言う。
「みなさん、先生たちは何かにつけてテストテスト。ちょっとはゆっくりしたいと思いませんかねぇ!? くっそ、あのケチじじい……。頭ポロリさせたるぞ」
愚痴が聞こえる気がする。
「っと……こほん。この単語帳! 人件費が莫大でしてね。なんとこれ! 中に入っているすべての単語に語呂合わせがふられているのです! これで、テストもバッチリだね!
さぁ、買うかな!?」
「僕らは別に買う訳じゃ」
「そ、そうだ! 私たちはただ……」
「さぁ、君たち! この単語帳、買ってくれるかな?!」
「「「い! いいともー!」」」
……この侍さんのうまいところは、絶対に一人一冊買わされているってことかな。絶対必要ないのに……。
結局僕らは、たっかい単語帳を一人一冊手に取ることになってしまった。
手に取ってしまったら中身が気になって、そっと真ん中ほどのページをひらいてみた。
……そしたらあまりにも個性的だったので、例をあげてみようか。
dismiss 無視をする
《語呂合わせ》ディスってミスって無視をする
diminish 減少する
《語呂合わせ》で、ミニシュカートが減少する
anthropologist 人類学者
《語呂合わせ》人類学者は呟いた。「あの空パラパラジンギスカン」
……なにこの絶妙なセンス。パラパラジンギスカンってなに?! どう読んだらそうなるの!? ミニシュカートって……。そして極めつけはこれである。
attribute ~のせいにする
《語呂合わせ》アトリビュート、あんたのせいよ!
distribute 分配する
《語呂合わせ》ディストリビュート、早く分配しなさいよ!
contribute 貢献する
《語呂合わせ》コントリビュート、貢献しなさい!
こ、これは……なんだこのビュート兄弟? 姉妹? は……。
それにしても、今夜…………なにが起こるんだろう。
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