閃光の勇者 〜転生したら伝説の竜になってました〜
第1話 竜になりました
「お、出てきた出てきた」
俺が今体験していることを、なるべく語弊のないように皆様に伝えようと思う。
「なんだ?そんなじっと見て。外の世界が怖いのか?」
戦争で首を落として確かに死んだはずの俺は、今目の前で伝説の竜に喋りかけられている。
しかもめっちゃ流暢。なんか威厳もクソもない、いいお兄さんみたいな感じ。
返事したいんだが、声の出し方が分からん。
てかコイツ、口開けてないけどなんで声が聞こえるんだ?
『説明してあげよう!』
誰だ!?今度は女の声が聞こえる。
『僕?僕は神様だよ〜!実は君は運がいいタイミングで死んだのさ。100年に1度、僕らはこの世界の為に死んだ人間を転生させる義務があるんだ。それも、伝説の竜にね』
伝説の竜に転生・・・?
『まあパパッと理解されても驚くけどね〜。君にはこの世界で英雄になる為に竜として人生をやり直してもらうよ』
いやいやいや、理解できるわけねえ。
俺って人間は死んだのに、竜としてこの世界の英雄になる?訳がわからん。
『あ、竜として、とは言ったけど、君がもう少し成長すれば人間になれるよ』
は??
『伝説の竜は魔力があり得ないほど強力でね、人間に体を変えることなんて容易いんだよ。じゃあなんで転生してない竜にそれが出来ないかと言うと、人間の体を理解してないから。でも君は前世であろうと元人間。知り尽くしている人間の体に変えてしまうことは無理じゃないんだ』
なるほど・・・。なんとなく理解した。
じゃあ俺は今竜で、だからコイツらの言葉も聞こえるわけだな?
『まあそんなとこ!伝説の竜たちは元々人間とも話せるよ!人間が警戒しすぎて話そうとしないだけで、彼らはテレパシーで思ってる事を伝えられるんだ!』
そうか、だから口を開けてないのに奴らの声が聞こえるんだな。
『ふふふ、一応彼はお父さんなんだから奴呼ばわりは悲しむよ〜?』
知るか。勝手に転生させたくせに。
それで、もう少し成長って何歳くらいになれば人間になれるんだ?
『そうだね〜、10年くらい竜に育ててもらいなさいな。竜として生活するだけで君自身かなりの鍛錬になるからね。そしたら、今度はサポート係として君の旅に付き添おう』
10年でいいのか。竜って何百年とか生きるだろうから少し安心した・・・。
取り敢えずコイツと話せるようになるのはどうしたらいいんだ。
『それは成長と共に勝手に覚えるよ〜。赤ん坊が喋るなんて普通変だろ?』
クッソ遠回しだな・・・。
まあいい。こうなったもんは変えられねえ。
なってやるよ、英雄ってやつに。
◇
そして俺の竜としての人生が始まった。
本で見た威厳溢れる伝説の竜、ではなく、謎に愉快な父ゲゼルと、同時に生まれた妹リーゼルと共に。
そして、10年の月日が流れた。
俺は、竜としての魔力を駆使して流暢に喋れるようになっていた。
「おいクソ親父!また巨大魚かよ。たまには鶏肉が食いてえ鶏肉!」
「うるせえバカ息子!誰が狩猟して来てやってると思ってんだ!ありがたく食え!」
「だから俺はお前の息子であって息子じゃねえ!転生して竜になったんだよ!」
「知ってるよ!俺ら竜の間じゃ有名な話だ!でもお前は俺の子だ!」
「二人ともいい加減にしないと怒るよ!」
と言った具合に、俺は伝説の竜とバカみたいに口喧嘩をしては妹に怒られていた。
親父も俺が転生して竜になった事を理解していて、竜の間じゃ有名な話で、俺の子がまさかな〜とか、そんな反応しか示さなかった。
「つーか、10年経ったけどあの神を名乗る女はいつ現れるんだ・・・」
「ハッハッハ、僕を呼ぶ声がする」
俺の背後から聞き覚えのある常に能天気そうな声が聞こえた。
「やっと来たか。普通の人間の姿してんじゃねえか。早く俺も人間にしてくれ」
「いいの?家族と楽しそうだけど」
「いい。俺は早く人間の女と遊びたい」
神を名乗る女は腹を抱えて笑った。
「そうかそうか。まあ人間になるってより君が変わるんだ。だからいつでも本来の竜の姿にも戻れる。自由自在ってことさ」
「じゃあ早くその変化魔法を教えてくれ」
焦るな焦るな、と俺を制止した神を名乗る女は、俺に拳を突き出した。
「ヘイ、希望の光よ。英雄になる覚悟は出来てる?過酷な旅が待ってるぜ?」
なんだコイツ。気の抜ける奴だ。
「ヘイ、神よ。今言われたってよく分かんねえ。でも、英雄になる覚悟は出来てるぜ」
俺はほくそ笑みながら、人間の拳に合わないサイズの拳を突き出した。
「いい返事だ。じゃあ人間の姿や人間だった時の感覚を思い出しながら、僕の後に続けて同じ言葉を言ってくれ」
「了解」
「へんしーーん!!」
「へ、へんしーーーん!!」
すると、俺の体はみるみるうちに人間へと変わっていった。
「す、すげえ・・・!」
神を名乗る女はまた腹抱えて笑ってる。
「な、なんだよ・・・」
「いや、すまんな。へんしーーん!とか本当は言わなくていいんだ」
「は???」
「いやごめん、からかいたくて。本当は姿形を念じただけで変身は可能だ」
そしてまた笑い出した。
クッソ舐めやがってこのエセゴッド・・・!
内面はクソほど恥ずかしい俺だった。
そんなこんなで、俺はようやく人間になれた。
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