良く見ると、世界は汚く美しい。
~決戦、魔王トリネマオ~
ギィィィィ…
「お邪魔しま~す…っと。居るんだろ?魔王トリネマオ。」
そこには、今までの洞窟の何十倍にも広がっている大きな空洞があった。そこには魔王城の定番とも言える、奥へと続く赤いカーペットが敷いてある。その奥に、玉座に座る小柄なゴブリンのような人物…そう、魔王トリネマオがいた。
『クックック…先程は良くも我を侮辱してくれたなぁ?此処まで来た実力と我に悪態をつくと言う度胸は誉めてやろう…だがしかし、我を侮辱したことの罪の重さ、たっぷりと味わ』
「えぇい口上が長い!御託はいいから男ならさっさとかかってこいこの野郎!」
『なっ…ど、どうやら貴様、死にたいらしいな!?良かろう!存分に相手してやるわ!……………お前の相棒がな!』
「なっ…何だと!?」
──────────
「おい、何も起きないが?」
『』
「おい、何か言えよ。」
『馬…馬鹿な!何故だ!?何故そこの銀髪はお前を襲わん!?』
『?何かしたんですか?そう言えば確かに何かお粗末な術をかけられたような…』
『おっ…お粗末!?我の固有スキルにして最強のスキル、【呪術】がお粗末だと!?』
『逆に問いますが、あれがお粗末じゃないとでも言うんですか?抵抗する間もなく消滅しましたが?』
『なっ…』
魔王トリネマオは絶句し、しばらく動くことは無かった。気になって近づいて見てみたが、どうやら気絶しているらしかった。そんなにショックだったのだろうか…まぁ、今までは術を掛けられたら死ぬまで解けないって話だったし、余程自信があったのだろう。
…あ、そう言えば抵抗ってなんだ?
「なぁマヒト、抵抗ってなんだ?」
『あ、透馬様にはお話ししていませんでしたね。抵抗とは、魔法で攻撃されたときにそれを防御することです。ステータスでは魔法防御が関係します。』
「へぇ、それって精神的な攻撃だけじゃなくて魔法の炎とかでも抵抗扱いなのか?」
『はい、どのような攻撃であっても魔法による攻撃であれば抵抗扱いです。まぁ、魔法で岩をぶつけられたりしたなら話は別ですが…』
「なるほど。ありがとな、マヒト。」
『いえ…使い魔として当然のことをしたまでです。』
本当にそう思ってる奴はそんなにニヤニヤしてないがな。
まぁそんな感じで俺達はトリネマオが起きるまでの間、律儀に待ってやっていた、って訳だ。勿論、透視も試したが、どうやら【呪術】の効果で阻害されたようで、心を読むことは出来なかった。だから、なぜニリンス森林のモンスター達にあんなことをしたのか聞くためには、待ってやるしか無かったのだ。
…まぁ、さっきのリザードマンと同じように縄でぐるぐる巻きにはさせてもらったが。
『……はっ!?』
「やっと起きたか、間抜け魔王。なんで森のモンスターにあんなことをした?」
『…フン、答えると思うか?』
「いや、思わないがな。答えないなら、答えさせるまでだ。」
そう言って俺は、奴の首筋にマヒトに作ってもらった日本刀を当てた。軽く当てただけなのに、もう血が出ている。余程の切れ味のようだ。鞘が無いし、鞘も早急に作ってもらった方が良さそうだ。なんてことを考えていると、
『わ、分かった!話す!全て話す!だから、だからそれを仕舞ってくれ!』
本当に魔王なのか疑いたくなるほど恐ろしい早さで降参してきた。まぁその方が都合は良いんだが…ともかく、
「分かった。」
と言って刀を下げると奴は、全てを語り出した。この森を支配しようと企んでいたこと、キアナ村やミリーヨ村までも勢力下に入れようとしていたこと、そして…
『だ、第一俺がここを支配しようとしてたんじゃない!俺はただあの方の言う通りに!』
「あの方?あの方って誰だ?」
『あ、あの方は、あの大魔お…グッ!?ガッ…ガハッ…』
「お、おい!?どうした!?」
『カッ…カハッ…』
「おい!?大丈夫か!?おい!?」
『ガッ…』
「お、おい…?」
『………』
『…死んでいます。生命活動そのものをを完全に停止しています。これ以上の情報は得られないでしょう。』
「な、なんでこんなに急に…?」
「…」
「…」
あまりに突然の出来事に、コシャントさんとソティアはただ呆然としているだけだ。その時、俺はあることに気がついた。
「待てよ?さっきあいつ…大魔王とか言ってたよな…。その後の名前を発音する一瞬だけ前に、あいつは急に苦しみ出したんだよな…ってことは、考えられるのは…」
『その【大魔王】とやらが黒幕、という事ですね。』
「そ、そんなこと…あり得るの?」
「コ、コシャントさん?どうしたんですか?」
「だって…魔王でも数十年に一回位しか生まれないし、ましてや大魔王なんて、数千年に一度しか生まれないとも言われてるんですよ?そんなのが黒幕だなんて…」
「そ、そうだったのか…それでも、可能性はある以上、その数千年に一度の大魔王が生まれた可能性はあるじゃないですか。」
「…おかしいよ。絶対、おかしい。」
「ソ、ソティア?今度はどうした?」
「僕が知ってる大魔王の名前…トリネマオ。大魔王トリネマオ。今の小悪党みたいな奴も、トリネマオ。同じ名前の魔王と大魔王なんて、無いはずだよ。」
「え?同名の魔王…?それって…?」
『…透馬様。トリネマオについて考えるのもよろしいですが、そろそろ引き上げた方がよろしいかと。ミラスさんへの報告なども有りますし…』
「えっ?あ、ああ。確かに、後で考えても別に良いわけだしな。とりあえず引き上げるか。」
そんなわけで、洞窟の外に出た。
幸いにも、トリネマオを倒したからか罠は解除されていて、特にスキルを使うこともなく帰還出来た。それよりも戦闘…というかあいつが起きるまでに思ったより時間が経っていて、もう空は真っ暗だった。
仕方がないので、いつものスキルを使って野宿した。
しかし、新しいスキルが一つ増えていることに、その時の俺は気付いていなかった。
「お邪魔しま~す…っと。居るんだろ?魔王トリネマオ。」
そこには、今までの洞窟の何十倍にも広がっている大きな空洞があった。そこには魔王城の定番とも言える、奥へと続く赤いカーペットが敷いてある。その奥に、玉座に座る小柄なゴブリンのような人物…そう、魔王トリネマオがいた。
『クックック…先程は良くも我を侮辱してくれたなぁ?此処まで来た実力と我に悪態をつくと言う度胸は誉めてやろう…だがしかし、我を侮辱したことの罪の重さ、たっぷりと味わ』
「えぇい口上が長い!御託はいいから男ならさっさとかかってこいこの野郎!」
『なっ…ど、どうやら貴様、死にたいらしいな!?良かろう!存分に相手してやるわ!……………お前の相棒がな!』
「なっ…何だと!?」
──────────
「おい、何も起きないが?」
『』
「おい、何か言えよ。」
『馬…馬鹿な!何故だ!?何故そこの銀髪はお前を襲わん!?』
『?何かしたんですか?そう言えば確かに何かお粗末な術をかけられたような…』
『おっ…お粗末!?我の固有スキルにして最強のスキル、【呪術】がお粗末だと!?』
『逆に問いますが、あれがお粗末じゃないとでも言うんですか?抵抗する間もなく消滅しましたが?』
『なっ…』
魔王トリネマオは絶句し、しばらく動くことは無かった。気になって近づいて見てみたが、どうやら気絶しているらしかった。そんなにショックだったのだろうか…まぁ、今までは術を掛けられたら死ぬまで解けないって話だったし、余程自信があったのだろう。
…あ、そう言えば抵抗ってなんだ?
「なぁマヒト、抵抗ってなんだ?」
『あ、透馬様にはお話ししていませんでしたね。抵抗とは、魔法で攻撃されたときにそれを防御することです。ステータスでは魔法防御が関係します。』
「へぇ、それって精神的な攻撃だけじゃなくて魔法の炎とかでも抵抗扱いなのか?」
『はい、どのような攻撃であっても魔法による攻撃であれば抵抗扱いです。まぁ、魔法で岩をぶつけられたりしたなら話は別ですが…』
「なるほど。ありがとな、マヒト。」
『いえ…使い魔として当然のことをしたまでです。』
本当にそう思ってる奴はそんなにニヤニヤしてないがな。
まぁそんな感じで俺達はトリネマオが起きるまでの間、律儀に待ってやっていた、って訳だ。勿論、透視も試したが、どうやら【呪術】の効果で阻害されたようで、心を読むことは出来なかった。だから、なぜニリンス森林のモンスター達にあんなことをしたのか聞くためには、待ってやるしか無かったのだ。
…まぁ、さっきのリザードマンと同じように縄でぐるぐる巻きにはさせてもらったが。
『……はっ!?』
「やっと起きたか、間抜け魔王。なんで森のモンスターにあんなことをした?」
『…フン、答えると思うか?』
「いや、思わないがな。答えないなら、答えさせるまでだ。」
そう言って俺は、奴の首筋にマヒトに作ってもらった日本刀を当てた。軽く当てただけなのに、もう血が出ている。余程の切れ味のようだ。鞘が無いし、鞘も早急に作ってもらった方が良さそうだ。なんてことを考えていると、
『わ、分かった!話す!全て話す!だから、だからそれを仕舞ってくれ!』
本当に魔王なのか疑いたくなるほど恐ろしい早さで降参してきた。まぁその方が都合は良いんだが…ともかく、
「分かった。」
と言って刀を下げると奴は、全てを語り出した。この森を支配しようと企んでいたこと、キアナ村やミリーヨ村までも勢力下に入れようとしていたこと、そして…
『だ、第一俺がここを支配しようとしてたんじゃない!俺はただあの方の言う通りに!』
「あの方?あの方って誰だ?」
『あ、あの方は、あの大魔お…グッ!?ガッ…ガハッ…』
「お、おい!?どうした!?」
『カッ…カハッ…』
「おい!?大丈夫か!?おい!?」
『ガッ…』
「お、おい…?」
『………』
『…死んでいます。生命活動そのものをを完全に停止しています。これ以上の情報は得られないでしょう。』
「な、なんでこんなに急に…?」
「…」
「…」
あまりに突然の出来事に、コシャントさんとソティアはただ呆然としているだけだ。その時、俺はあることに気がついた。
「待てよ?さっきあいつ…大魔王とか言ってたよな…。その後の名前を発音する一瞬だけ前に、あいつは急に苦しみ出したんだよな…ってことは、考えられるのは…」
『その【大魔王】とやらが黒幕、という事ですね。』
「そ、そんなこと…あり得るの?」
「コ、コシャントさん?どうしたんですか?」
「だって…魔王でも数十年に一回位しか生まれないし、ましてや大魔王なんて、数千年に一度しか生まれないとも言われてるんですよ?そんなのが黒幕だなんて…」
「そ、そうだったのか…それでも、可能性はある以上、その数千年に一度の大魔王が生まれた可能性はあるじゃないですか。」
「…おかしいよ。絶対、おかしい。」
「ソ、ソティア?今度はどうした?」
「僕が知ってる大魔王の名前…トリネマオ。大魔王トリネマオ。今の小悪党みたいな奴も、トリネマオ。同じ名前の魔王と大魔王なんて、無いはずだよ。」
「え?同名の魔王…?それって…?」
『…透馬様。トリネマオについて考えるのもよろしいですが、そろそろ引き上げた方がよろしいかと。ミラスさんへの報告なども有りますし…』
「えっ?あ、ああ。確かに、後で考えても別に良いわけだしな。とりあえず引き上げるか。」
そんなわけで、洞窟の外に出た。
幸いにも、トリネマオを倒したからか罠は解除されていて、特にスキルを使うこともなく帰還出来た。それよりも戦闘…というかあいつが起きるまでに思ったより時間が経っていて、もう空は真っ暗だった。
仕方がないので、いつものスキルを使って野宿した。
しかし、新しいスキルが一つ増えていることに、その時の俺は気付いていなかった。
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