人外転生、いきなりテイム!? 〜黒の狼と白い少女と【強い】意味〜

カイリ

14話 黒い狼と少女が見た【強さ】

「なかなかいい線を行っていたぞ」

 クレーターからズンズンと登りながら俺たちに話しかけてくるオーク。
 大きな傷を追いながら淡々と進んでくる。

 奴が近づくにつれ恐怖、死が近づいてくるような感覚に身を包まれる。

 やばい、やばい、やばい! ここで終わるのか? こんなとこで! 俺はまだ知らないのに……【強い】意味を!

「さらばだ、貴様らの事は覚えておこう……【デットインパクト】」

 オークの持つ木槌が黒く光る。俺たちはこの一撃を食らえば死ぬ。
 悔しい……ただただ悔しい。恐怖よりもそんな感情が湧き上がってくる。
 見る事を諦め死を覚悟し目を閉じる。

「さらばd「ちょっとまったー」……ぬ?」

 オークの俺たちを殺すための動きがある一つの声で動きが止まった。
 声のする方へ意識を向けると、そこには。

「今から選手交代でいいかな?」

 装備、髪、肌、全てが白い女性。
 20代前半の若々しさに髪は後ろで止めてあり、ポニーテールになっていた。もっとも特徴的なのが、顔と雰囲気がセラの限りなく近く。セラを10歳年を重ねたらこうなるんだな、っと思ってしまうほどに似ていた。
 彼女の肩の周辺には女性の顔より少し大きな鳥がいた。
 その鳥も全体的に白く、目が黄色。何より存在感が物凄かった。

「なんだ貴様ら!」

「セロです」
『バーンだ』

 オークの問いに答えた二人の名前を聞いて俺は大きく目を見開いた。俺達の前に立っている彼女達は、三強の中の二人なのだから。
 そして彼女の使い魔が知識を持っている事にも遅れて理解しておどろいた。

「そうか、邪魔をするなら殺すぞ?」

 オークが木槌をセロ、バーンの方へ向けそう言い放つ。

「【ファイヤボール】」
『【真空切り】』

 二人は何も言わずに、その場が静寂に包まれる。この均衡を破るように二人の魔法がオークに向かって放たれる。
 方やタダの炎の玉。方やスキル名は聞こえたが何も見えない。

「グビューー!」

 オークは受け切れると思ったのか、二人の攻撃を無防備で受けた。だが、体は炎に包まれ全身火傷、何かに切られ胴体真っ二つ……おそらく真空切りだろう。

「す……すごい」

 あの炎魔法一つどんな工夫がされているのだろうか。セラは目を見開き、今起きている事を目に焼き付けるように見ていた。そしてその目にはどこか懐かしむよにかつ、憧れを感じた。

「ふぅ……大丈夫?」
「は、はい!」
「ふふ、そんな訳ないでしょ? 【グレーターヒール】」

 俺たちの方へ来たセロと言う女性から回復魔法をしてもらい、俺たちの傷は一瞬で治った。

「じゃ、私達もう行くね?」
「待ってください! あなたは……」
「大丈夫! また会うから」

 どこか急いでいるように彼女達はそう言い、その場から立ち去ろうとする。

『おい、鳥』

 俺はバーンという魔物が気になり、念話を彼だけの向けて話しかける。

『なんだ犬』

 ぶっきらぼうな返しが来た。彼と俺はどこか似ているように思えた。

『転生者か?』
『……そうだ、だが俺は2回目だがな』

 バーンはそう言い、その場で転移魔法を掛けたのか、その場から消えて行った。




 俺たちは無事に宿に帰還した。セラは泥のように眠っている。

(2回目)

 バーン言った言葉……気になる。彼とはもっと話しがしたい。それに彼女らのあの戦い。一瞬だったが、実力の差を見せつけられた。

(この経験を忘れてはいけないな、あの時助けられた恩も、オークに勝てなかった悔しさ、死の恐怖。絶対に忘れてはいけない。)

 俺は眠るセラの顔を見る。その顔は涙で腫れていた。この気持ちを味わったのは俺だけじゃない、そう思った。




『セロ、妹に挨拶しなくてよかったのか?』
「んーー、セラは気づいていると思うけど、まだ話すわけにはいかないかな。もっと強くなって私達の方に来れたら教えようと思ってる……それよりバーンもあれだけでよかったの?」
『いいんだよ、男は』

 二人の英雄は腰の高さくらいの岩に腰掛けながら喋っていた。その周りに、オークの死体が転がっておりオークロードの死体もあった。

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