『 インパルス 』 ~宝くじで900億円当たったから、理想の国を作ることにした~
173話 鑑賞用のヤモ吉
ベッドに横になった正巳だったが、不意にしがみついて来たサナに驚いた。
恐らく、何か気配を感じて無意識の内に手を伸ばしたのだろう。
腕を掴んでくる小さな手の平に、どこか懐かしさを感じていた。
「……そうか、半年前は寝れたもんな」
以前は寝ると意識が落ちていたのだが、今の正巳は寝ていても意識は薄っすらと起きている。そんな状態でも疲れは取れるし、十分な休息となるのだ。
改めて(便利な体になったな)と思った正巳だったが、完全な寝起きサプライズが無くなってしまった事は、唯一と言っても良いほど残念な事だった。
何か危険を感じた時だけ目が覚め、それ以外の時はぐっすり眠れる。そんな状態が一番理想なのだが、生憎正巳の体はそんな風には出来ていない。
常に意識は起きている。
……恐らく普通の人であれば、体は問題無くても精神的に参ってしまうだろう。
心の中で(ぐっすりと眠れる様に"練習"してみるかな……)と考えていた正巳だったが、ふとサナは理想的な状態にある事に気が付いた。
サナは、"殺気"に敏感だ。
恐らく、今ここで殺気を放てば瞬時にサナは目を覚ますだろう。そのくせ、ちょっとやそっとの事では目を覚まさない。ぐっすり眠っているのだ。
そう言った意味では、ミューも同様な資質がある気がする。もしかすると、今サナを起こすとミューも起きて来るかも知れない。
何となくちびっ子達が羨ましくなったが、無い物ねだりしても仕方ないので、取り敢えずは現状を楽しむ事にした。
……そう、こうして常に起きている事で、子供達が無意識で行う可愛い姿が十二分に堪能できるのだ。――そう考えてみて、思わず(天才か?)と思った正巳だったが、若干思考が危ない方向に向かっているのを感じて、サナから視線を逸らした。
親馬鹿も行き過ぎれば、子供の負担になる。
視線を逸らした先には、いつの間にか移動して来ていたマムの姿があった。
何となく、マムの瞳が気になった。
「マム、言っておくが寝てる間の"記録"は禁止だからな」
すると、一瞬"ビクッ"っとして、ゆっくりと瞼を閉じた。
「……マム?」
「タダイマ、ジュウデンチュウデス」
どうやら図星だったみたいだが……誤魔化し方が下手過ぎる。
その後マムの事をじっと見ていた正巳だったが、マムが誤魔化す様子を見ているだけで大分癒された。録画して変な使い方をされては困るが、マムの事だからそれ程心配する必要はないだろう――そう結論付けて言った。
「まぁ良いが……」
そう言ってマムの手を握った。
別に催促されていた訳では無いが、先程からモジモジとして、若干こちらに手を出していたのだ。普段何方かと言うと『鈍感』と言われる正巳でも、今回は流石に分かった。
嬉しそうにして正巳の手を両手で包んだマムは、満足そうだった。
その後、正巳は二時間程動く事が出来なかった。
――と言うのも、右手をマムに左腕をサナに其々提供していたからではあったが……サナが目を覚まして、嬉しそうに頭を擦り付けて来た瞬間、忍耐が報われたと感じた。
固まってしまった筋肉を解していた正巳だったが、起きて来たサナとミュー、それにマムが真似をしてストレッチしていた。
少し遅れて起きて来た今井は、そこに並んでいる正巳達を見て言った。
「……学校でも始める気かい?」
今井に苦笑いで返した正巳だったが、(確かに学校も必要だよな)と考え始めた。その後10分程してストレッチを終えた正巳は、マムに言った。
「子供達の"学校"も必要だと思うんだが、考えておいてくれるか?」
すると、満面の笑みを浮かべたマムが言った。
「既にカリキュラムの案は出来ているので、後はパパに確認して貰うだけです!」
その後、どういう事か聞いた正巳だったが、その内容を聞いて感心していた。
カリキュラムの内容は、全員必修の『基本科目』と、これ迄其々が別れて行っていた"訓練"の内容を考慮して設定した『選択科目』この二つがメインだった。
基本科目と言うのは、マムが其々の"先生"から聞いた『生きる為に必要な基礎教養』をまとめた物で、選択科目と言うのは、其々が専門職として"選択"した職種に必要な"専門知識"を学ぶ内容――らしい。
詳しく確認しようかとも思ったが、時間が掛かると思ったのと、関わっているのがザイやハク爺、今井さんだったので任せておく事にした。
その後、チャイムが鳴って給仕の子供達がやって来たので、朝食にした。
ユミルは『綾香と一緒に今日は一日子供達と移動する』という事だった。同様に、先輩もデウと共に『子供達のサポートをする』という事だったので、久し振りに一日を今井さんとサナとマムで過ごす事になりそうだった。
朝食を持って来た子供達は、三人一組が二班……つまり六人だったが、其々と話すのは初めてだったので、折角だからと言う事で一緒に朝食を摂りながら話をした。
六人中五人が女の子だったが、一人居た男の子は『僕はぶきようですけど、"ありがとう"って言ってもらうのが嬉しくて……』と話していた。
どうやら、雑用として動き回る事の方が多いみたいだったが、キラキラとした瞳を見て(この純粋さを以ってそのまま育って欲しいな)と思った。
朝食を摂り終わると、子供達が綺麗に片づけて下がって行った。
その後、『忘れてた!』と言った今井さんによる、新調した微細型情報収集機器――通称"ヤモ吉"の取扱説明を受けていた正巳は、その向上した性能に驚くと同時に『早く使いたい!』と興奮していた。しかし――
「パパ、最初の班が出発しました!」
どうやら、引っ越しが始まったらしかった。気が付いたらミューが居なくなっていたが、どうやら移動の準備をしに行っていたらしい。
手伝いに行こうかとも思ったが、今井さんが『これも一つの"発表会"――これ迄の成果を発揮する機会なんだ。僕達はここで見守って居ようじゃないか』と言ったので、そういう事なら……と思った正巳は、先程レクチャーを受けた機器を、早速使ってみる事にした。
「それじゃあ、ヤモ吉――出番だぞ!」
そう言って付けていた腕輪の一つ、ヤモリの形をした腕輪を持ち上げた。
すると、ヤモリの形をしていた腕輪が徐々に形を崩し始めた。
話を聞いてはいたが、実際に目にすると驚くべき光景だ。
――鼻の先端から始まり、尻尾の先までが徐々に小さな独立した機械となって飛んでいる。
その様子を見ながら、説明された内容を思い返していた。
『自立型情報収集機器で、その躯体は無数の小さな情報収集装置で構成されている。その監視範囲は直径1㎞程で、其々は中央処理システム"マム-シグマ"とも連携されている為……――』
ヤモ吉を起動した後で、その重要な点に気が付いた。
「……あれ? 『監視範囲は直径1㎞』?」
既に準備態勢に入っていたヤモ吉を前にショックを受けていた正巳だったが、その様子を見ていた今井が言った。
「一応ポイントを指定すれば、マムを通してピンポイントで運用出来るんだけど、今回は別の子を運用した方が良いかも知れないね」
そう言った今井は何やらマムに指示していたが、再び形を取り始めたヤモ吉に目を奪われていた正巳には、その内容は聞こえていなかった。
無事、分散していたヤモ吉が元のヤモリとなったので、その様子を堪能しながら腕に乗せた。ヤモ吉を腕に乗せると、再び自動で腕輪の形に変形した。その一部始終をじっと見ていた正巳は、暇な時はヤモ吉で遊ぼうと決めた。
何となく、マムが『パパに見つめられてるですね』と呟いているのが聞こえて来て、そう言えばヤモ吉はマムの操作によって運用されているのだと思いだした。
「ゴホン……それで、今回はヤモ吉は使えないという事ですがどうするつもり――」
途中まで言いかけた正巳だったが、今井の前に写し出されているモニターを見て言葉を失った。今井の目の前には、何処かの広い空間とそこに並んだ塔、それに、塔から絶え間なく飛び出して来る無数の物体が映っていた。
「ああ、正巳君。ようやく戻って来たみたいだね」
「……今井さん、ソレは何ですか?」
正巳の驚いた様子を見て『やっぱい聞いてなかったみたいだね』と言った後で、説明してくれた。
「これは、"高度立体監視システム"の一つでね。長時間広い範囲に渡って"偵察・監視"する為の機器なんだ。最初の型だから色々欠点は有るんだけど、取り敢えずは単独でも丸二日は問題無く動作するから安心してくれて大丈夫だよ!」
そう言って胸を張った今井さんに、『どの程度"遠方"から視れるんですか?』と聞いた正巳だったが、今井さんの『そうだねぇ、消費電力を考えなければ大体15~16㎞離れてても大丈夫だね』と言った言葉に、呆れて言葉を失っていた。
しかし、そんな正巳に対して今井は言った。
「正巳君、今は上空500~600㎞を周回する"監視衛星"すら、地上の10~20cmの映像を取得できるんだよ。そんな中に在って、このサイズ感で運用するドローンは大して凄くも無いのさ」
どうやら、情報戦と言うのは正巳の理解の範囲外にあるらしい。
「それじゃあ"普通"なんですね」
何となく言った正巳の言葉に対して、微妙な反応をしていた今井だったが、どうやらドローンの出来がいまいち気に入っていない様子だった。
「そうだね……唯一ずば抜けているとしたら、マムが運用をしている事だね」
「マムが運用している事ですか?」
正巳の言葉に頷いて続ける。
「そう、マムが運用する事で情報処理が大幅に向上するし、途切れることなく運用が出来るんだ。普通は交替させなきゃいけないだろ? でも、マムがエネルギーが切れる前に交替させる事で、それが可能になるんだ。実はこの子は他にも色々な用途に使えて、例えば自動配達なんかにも……――」
その後も話を聞いていた正巳だったが、映像の中で子供達の乗った車両が動き出したのを見て、一先ずそちらに集中する事にした。
恐らく、何か気配を感じて無意識の内に手を伸ばしたのだろう。
腕を掴んでくる小さな手の平に、どこか懐かしさを感じていた。
「……そうか、半年前は寝れたもんな」
以前は寝ると意識が落ちていたのだが、今の正巳は寝ていても意識は薄っすらと起きている。そんな状態でも疲れは取れるし、十分な休息となるのだ。
改めて(便利な体になったな)と思った正巳だったが、完全な寝起きサプライズが無くなってしまった事は、唯一と言っても良いほど残念な事だった。
何か危険を感じた時だけ目が覚め、それ以外の時はぐっすり眠れる。そんな状態が一番理想なのだが、生憎正巳の体はそんな風には出来ていない。
常に意識は起きている。
……恐らく普通の人であれば、体は問題無くても精神的に参ってしまうだろう。
心の中で(ぐっすりと眠れる様に"練習"してみるかな……)と考えていた正巳だったが、ふとサナは理想的な状態にある事に気が付いた。
サナは、"殺気"に敏感だ。
恐らく、今ここで殺気を放てば瞬時にサナは目を覚ますだろう。そのくせ、ちょっとやそっとの事では目を覚まさない。ぐっすり眠っているのだ。
そう言った意味では、ミューも同様な資質がある気がする。もしかすると、今サナを起こすとミューも起きて来るかも知れない。
何となくちびっ子達が羨ましくなったが、無い物ねだりしても仕方ないので、取り敢えずは現状を楽しむ事にした。
……そう、こうして常に起きている事で、子供達が無意識で行う可愛い姿が十二分に堪能できるのだ。――そう考えてみて、思わず(天才か?)と思った正巳だったが、若干思考が危ない方向に向かっているのを感じて、サナから視線を逸らした。
親馬鹿も行き過ぎれば、子供の負担になる。
視線を逸らした先には、いつの間にか移動して来ていたマムの姿があった。
何となく、マムの瞳が気になった。
「マム、言っておくが寝てる間の"記録"は禁止だからな」
すると、一瞬"ビクッ"っとして、ゆっくりと瞼を閉じた。
「……マム?」
「タダイマ、ジュウデンチュウデス」
どうやら図星だったみたいだが……誤魔化し方が下手過ぎる。
その後マムの事をじっと見ていた正巳だったが、マムが誤魔化す様子を見ているだけで大分癒された。録画して変な使い方をされては困るが、マムの事だからそれ程心配する必要はないだろう――そう結論付けて言った。
「まぁ良いが……」
そう言ってマムの手を握った。
別に催促されていた訳では無いが、先程からモジモジとして、若干こちらに手を出していたのだ。普段何方かと言うと『鈍感』と言われる正巳でも、今回は流石に分かった。
嬉しそうにして正巳の手を両手で包んだマムは、満足そうだった。
その後、正巳は二時間程動く事が出来なかった。
――と言うのも、右手をマムに左腕をサナに其々提供していたからではあったが……サナが目を覚まして、嬉しそうに頭を擦り付けて来た瞬間、忍耐が報われたと感じた。
固まってしまった筋肉を解していた正巳だったが、起きて来たサナとミュー、それにマムが真似をしてストレッチしていた。
少し遅れて起きて来た今井は、そこに並んでいる正巳達を見て言った。
「……学校でも始める気かい?」
今井に苦笑いで返した正巳だったが、(確かに学校も必要だよな)と考え始めた。その後10分程してストレッチを終えた正巳は、マムに言った。
「子供達の"学校"も必要だと思うんだが、考えておいてくれるか?」
すると、満面の笑みを浮かべたマムが言った。
「既にカリキュラムの案は出来ているので、後はパパに確認して貰うだけです!」
その後、どういう事か聞いた正巳だったが、その内容を聞いて感心していた。
カリキュラムの内容は、全員必修の『基本科目』と、これ迄其々が別れて行っていた"訓練"の内容を考慮して設定した『選択科目』この二つがメインだった。
基本科目と言うのは、マムが其々の"先生"から聞いた『生きる為に必要な基礎教養』をまとめた物で、選択科目と言うのは、其々が専門職として"選択"した職種に必要な"専門知識"を学ぶ内容――らしい。
詳しく確認しようかとも思ったが、時間が掛かると思ったのと、関わっているのがザイやハク爺、今井さんだったので任せておく事にした。
その後、チャイムが鳴って給仕の子供達がやって来たので、朝食にした。
ユミルは『綾香と一緒に今日は一日子供達と移動する』という事だった。同様に、先輩もデウと共に『子供達のサポートをする』という事だったので、久し振りに一日を今井さんとサナとマムで過ごす事になりそうだった。
朝食を持って来た子供達は、三人一組が二班……つまり六人だったが、其々と話すのは初めてだったので、折角だからと言う事で一緒に朝食を摂りながら話をした。
六人中五人が女の子だったが、一人居た男の子は『僕はぶきようですけど、"ありがとう"って言ってもらうのが嬉しくて……』と話していた。
どうやら、雑用として動き回る事の方が多いみたいだったが、キラキラとした瞳を見て(この純粋さを以ってそのまま育って欲しいな)と思った。
朝食を摂り終わると、子供達が綺麗に片づけて下がって行った。
その後、『忘れてた!』と言った今井さんによる、新調した微細型情報収集機器――通称"ヤモ吉"の取扱説明を受けていた正巳は、その向上した性能に驚くと同時に『早く使いたい!』と興奮していた。しかし――
「パパ、最初の班が出発しました!」
どうやら、引っ越しが始まったらしかった。気が付いたらミューが居なくなっていたが、どうやら移動の準備をしに行っていたらしい。
手伝いに行こうかとも思ったが、今井さんが『これも一つの"発表会"――これ迄の成果を発揮する機会なんだ。僕達はここで見守って居ようじゃないか』と言ったので、そういう事なら……と思った正巳は、先程レクチャーを受けた機器を、早速使ってみる事にした。
「それじゃあ、ヤモ吉――出番だぞ!」
そう言って付けていた腕輪の一つ、ヤモリの形をした腕輪を持ち上げた。
すると、ヤモリの形をしていた腕輪が徐々に形を崩し始めた。
話を聞いてはいたが、実際に目にすると驚くべき光景だ。
――鼻の先端から始まり、尻尾の先までが徐々に小さな独立した機械となって飛んでいる。
その様子を見ながら、説明された内容を思い返していた。
『自立型情報収集機器で、その躯体は無数の小さな情報収集装置で構成されている。その監視範囲は直径1㎞程で、其々は中央処理システム"マム-シグマ"とも連携されている為……――』
ヤモ吉を起動した後で、その重要な点に気が付いた。
「……あれ? 『監視範囲は直径1㎞』?」
既に準備態勢に入っていたヤモ吉を前にショックを受けていた正巳だったが、その様子を見ていた今井が言った。
「一応ポイントを指定すれば、マムを通してピンポイントで運用出来るんだけど、今回は別の子を運用した方が良いかも知れないね」
そう言った今井は何やらマムに指示していたが、再び形を取り始めたヤモ吉に目を奪われていた正巳には、その内容は聞こえていなかった。
無事、分散していたヤモ吉が元のヤモリとなったので、その様子を堪能しながら腕に乗せた。ヤモ吉を腕に乗せると、再び自動で腕輪の形に変形した。その一部始終をじっと見ていた正巳は、暇な時はヤモ吉で遊ぼうと決めた。
何となく、マムが『パパに見つめられてるですね』と呟いているのが聞こえて来て、そう言えばヤモ吉はマムの操作によって運用されているのだと思いだした。
「ゴホン……それで、今回はヤモ吉は使えないという事ですがどうするつもり――」
途中まで言いかけた正巳だったが、今井の前に写し出されているモニターを見て言葉を失った。今井の目の前には、何処かの広い空間とそこに並んだ塔、それに、塔から絶え間なく飛び出して来る無数の物体が映っていた。
「ああ、正巳君。ようやく戻って来たみたいだね」
「……今井さん、ソレは何ですか?」
正巳の驚いた様子を見て『やっぱい聞いてなかったみたいだね』と言った後で、説明してくれた。
「これは、"高度立体監視システム"の一つでね。長時間広い範囲に渡って"偵察・監視"する為の機器なんだ。最初の型だから色々欠点は有るんだけど、取り敢えずは単独でも丸二日は問題無く動作するから安心してくれて大丈夫だよ!」
そう言って胸を張った今井さんに、『どの程度"遠方"から視れるんですか?』と聞いた正巳だったが、今井さんの『そうだねぇ、消費電力を考えなければ大体15~16㎞離れてても大丈夫だね』と言った言葉に、呆れて言葉を失っていた。
しかし、そんな正巳に対して今井は言った。
「正巳君、今は上空500~600㎞を周回する"監視衛星"すら、地上の10~20cmの映像を取得できるんだよ。そんな中に在って、このサイズ感で運用するドローンは大して凄くも無いのさ」
どうやら、情報戦と言うのは正巳の理解の範囲外にあるらしい。
「それじゃあ"普通"なんですね」
何となく言った正巳の言葉に対して、微妙な反応をしていた今井だったが、どうやらドローンの出来がいまいち気に入っていない様子だった。
「そうだね……唯一ずば抜けているとしたら、マムが運用をしている事だね」
「マムが運用している事ですか?」
正巳の言葉に頷いて続ける。
「そう、マムが運用する事で情報処理が大幅に向上するし、途切れることなく運用が出来るんだ。普通は交替させなきゃいけないだろ? でも、マムがエネルギーが切れる前に交替させる事で、それが可能になるんだ。実はこの子は他にも色々な用途に使えて、例えば自動配達なんかにも……――」
その後も話を聞いていた正巳だったが、映像の中で子供達の乗った車両が動き出したのを見て、一先ずそちらに集中する事にした。
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