「 」

鳩の唐揚げ

「 」

私は力を使い続けて逃げているうちに学校に着いた。
そうだ、学校であったあの少年なら助けてくれるだろう。
僕はまだ開いていない、学校に入った。
当然ながら昇降口は開いていない。
ど、どうしよう。
悩んだ結果、窓を割って入る事にした。
これで、俺は助かる。
逃げられるんだ!

私は階段を走って、自分の教室へ向かった。


『やぁ、そろそろ来るんじゃないかと思ってたよ。』

「よかった、いた。」

『で、何の用?』

「そう、なんか変なんだよ、最初に乗り移った時はこんなじゃなかったのに、佳子に乗り移った後から、なんか別人が動いているような感じになって。」

『当然でしょ、その体は元々君の体じゃないんだから、元々の持ち主の方に所有権があるに決まってる。まぁ、君は結構精神力があるから、一人ぐらいまでなら所有権なんて関係なく乗り移れるだろうけど、2人目、3人目ってなると難しいだろうね。」

「そうなんだ、ていうかそういう話は最初にしてよ!」

『ごめんごめん、悪かったよ。』

「それで、そろそろ元の体に戻りたいんだけど…」

『元の体って?』

「そんなの聞かなくてもわかるでしょ、僕の体だよ!」

『僕の体?』

「え、違うよ、あたしの…あれ、私の…」

『君ははっちゃけ過ぎだよ、力を貰ったからってそんな使い続けてたらそうなるって。』

「で、でもわかるでしょ!最初の体だよ!」

『最初の体なんてもうないよ?』

「え、それってどういう…」

『最初に言ったでしょ、それなりの対価が必要になるって。』

少年が言うには、体を乗り移るにはそれと同等の対価が必要になるらしい。
その対価というのは、元々の体。
対価として払った私の体は、もう何処にもないらしい。リカの体も佳子の体もギャルの体も…

「え、じゃあどうすれば…」

『まぁ、1つだけ方法はあるよ。』

「そうなの!その方法って?」

『その力って他の人に乗り移るだけじゃなくて、他の能力もあるんだ。』

「どんな?」

『自分の思い浮かべた体に乗り移る能力。乗り移るっていうのは変か。まぁ、元の体に戻れる能力だよ。』

「そうなんだ。でも、これでやっと元に戻れる。」

私は自分の元の姿を思い浮かべた。
まず、顔はどんなだったっけ?
えっと、髪の毛は長くて…違う短かったっけ?
えっと…

思い出せない。
元々のあたしの体が。
違う、だから、私は私なんだ。
だから、僕の体は…

『まぁ、そうなるよね。他の人の体に乗り移るってことは、全身丸ごと別人の体に意思だけ乗り移るってこと。脳は元々の体の持ち主の物なんだから、少なくとも元々の体の持ち主の記憶が受け継がれる。性格とかその人の意思も。君は力を乱用して暴走した結果、元々の自分の意思や記憶が薄れて行った訳だね。自分のだけじゃないか、他の人のもね。』

『だから、今の君はもう、誰でもない。リカっていう人でも佳子っていう人でもない。いろんな物が混ざり合った…、』

『異物だよ。』

「え、そんな、私は…」

そんなに力は使っていないつもりでいた。
私はふと教室の時計に目をやった。
時間は8時を過ぎている。
もう他の生徒が教室に入ってもいい頃だ。
でも、この教室には誰も入ってこない。
いや、入っているのか、

私が、

あたしが、

僕が、

俺が…

そして、       は、


飛んだ。



コメント

コメントを書く

「ホラー」の人気作品

書籍化作品