「 」

鳩の唐揚げ

同情

朝になった。

昨日、佳子母が乾かしてくれたおかげで、制服を着て学校に行けた。

昨日の、佳子母の悲しい笑顔が頭から離れない。

こいつも、悲しいだろうに。
また、今日もいじめられるんだろうか、

いや、違う。

今日までだ。
人の体で好き勝手やるのは、ちょっとどうかとも思うが、こいつの父親が死んで、まだ心の整理とかもできてないだろうに、いじめられるなんて酷すぎる。

同情って奴なのかな、
同情するなら金を...
いやふざけている時間はなさそうだ。

「よぉ、佳子。あれ?制服乾いたんだぁ!お母さんが乾かしてくれたの?それともお父さんかなぁ?」

チッ、ムカつく。
この如何にも見下してますよぉ~みたいな顔!
このまま、机に叩きつけてやりたくなる。
こいつはガングロの手下みたいな奴かな、
ギャルっぽいが、どうやら今が2016年なのは知っているらしい。
肌は黒くない。
ギャルとでも呼んでおくか。

「ねぇ、何とか言ったらどうなの?いつもいつも無言でさぁ!そういうところがムカつくんだよねぇ!」

そう言ってギャルは私の...佳子の頭を机に叩きつけた。

クソ痛い。畜生、私がやってやりたかったのに。

駄目だ。
いじめられるのは今日までだ!
とか言ったのに何をどうすればいいかわからない。

そのまま、時間だけが過ぎて行く。

結局、午前中は何も出来なかった。
これじゃあ、いつもの佳子と同じじゃないか。
そうだよな、佳子がいなければ私が標的だったんだ。何も出来なくて当然か、

そういうことを考えながら、私は鞄から佳子母が作ってくれた弁当を出した。
この学校は給食を頼むのだが、佳子の家庭ではお金が無く頼めないらしい。でも、牛乳だけは頼んでいる。佳子母は佳子の背が低いことを気にしているんだろうか。

「あれぇ?珍しいね、教室で食べてるなんて!佳子ちゃん弁当なんだぁ?何?お母さんが作ってくれたの?」

あ、やべ、佳子はトイレで弁当食べてるんだった。

「でも、なんか少ないねぇ。私の牛乳あげようか!」

そう言ってギャルは牛乳を佳子の弁当にかけた。
佳子の母が作ってくれた、弁当に。

弁当に牛乳とはなんとベタな、
そう思って少し笑いそうになった。
そう、笑いそうになったんだ。
なのに、私は、自分の牛乳に手を伸ばし、
ギャルの頭に向かってかけていた。

なぜなのだろう。勝手に体が動いていた...






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