貧乏少女

...

「う、うわぁぁぁぁぁあああああ！！！怖い怖い怖いぃぃぃぃぃ！！！！」

意識が戻ったと思ったら、屋上のフェンスの向こう！

ま、まぁ、今にも自殺しようとしてた奴の身体になったんだから当然と言えば当然なんだけど、ちょっと動いただけで落ちるぞこれ！

なんとかフェンスを登り、一面は取り止めた。
あ、危なかったぁ...
っと言うか、これはまたずいぶんと目線が低い。
さてと、どうするか...てか、寒！
そうだったこいつ濡れてるんだった！
しかも、もう結構暗い！
こいつの体育着拾ってくるかぁ...
こんな事になるなら捨てなきゃ良かった...

私は拾って来た体育着を着て学校を出た。

「佳子！良かった、また虐められてるんじゃないかと思って...」

え、えと、誰だろう...こいつのお母さんかなぁ...
というか、こいつ佳子っていう名前だったんだ...
なんか、ださい名前だな。

リカの時みたいにならないように、とりあえずクラスでのこいつを演じてみる。

「....」

とりあえず黙る。
そう、こいつはいつもこんなもんだ。
何されても黙りこくって無反応。

「そうか、佳子。また、やられちゃったのね。ほら、体育着じゃ寒いでしょ。」

そういうと佳子母は上着を着せてくれて、家へと歩き出した。

.....

なんだか、変な気持ちになった。
こう、胸が苦しくなるような。

家に着いた...？
？？
これ、家なのか？？？
なんかすごいボロいけど。

「どうしたの佳子、早く入りなさい。」

どうやら家で間違っていないようだ...

なんだろう、ボロくて寒いはずなのに、この家は暖かかく感じた。

「じゃあ、ご飯の用意してくるわね」

そう言って佳子母は台所の方に歩いて行った。

佳子の部屋を探してみたが、見当たらなかった。

貧乏にもほどがあるだろ。

「どうしたの？早く着替えなさい。」

やばい、部屋着ってどこ？
どうしよう、このまま無言でやり過ごすか！？

「あ、そう言えば洗濯したんだった！ごめんね、今持ってくるね。」

お、おお、助かった。

その後無事に着替えることができ、夕食を食べることになった。

味噌汁、焼き魚、ご飯、漬け物...
...
少ないな！
ま、まぁ、せっかく用意してくれたんだし、文句言わずに食べるか、

「！、おいし...」

やべ、声でちゃった。
でも、余りにもおいしいんだもの、しょうがない。

「おいしいか、よかったよかった」

そう言って佳子母はにこにこと、笑顔を浮
かべた。
普通に少ない夕食を食べただけなのに、すごく暖かかった。

夕食が終わった後、佳子母は制服を乾かしてくれた。
しかも、制服に開いた穴も縫ってくれた。

「ごめんね、ちゃんとした直し方できなくて...」

制服を縫いながら、佳子母はそんな事を呟いた。
周りを見回していると、写真を見つけた。
家族みんなで笑っている。
ん？そう言えば佳子父が見当たらない。
何だか、父が住んでいる形跡もない気がする。
そんな事を考えながら周りを見回していると、仏壇を見つけた。

そうか、死んでしまっているのか。

仏壇を見た事に気づいたのか、

「あの人が逝ってしまってから、まだ1年もたってないのね。まだ、直ぐそこにいる気がするわ。もしかしたらそのうち酔ってふらふらしながら帰って来るかもね、」

そう言って、ふふっと笑った。

やめてくれよ、そんな悲しい笑い方。

自分の親でも無いのに、すごく...すごく胸が苦しくなった。