Messiah

嘉禄(かろく)

Nightmare of the young bird



『君は俺の傍にいればいい
俺が育てた雛鳥…
君は俺が作った最高傑作だ』


声が響く。
懐かしい、聞くと胸が痛む声。
放心状態の俺を、誰かが抱きしめる。
頭を撫でるその手は、温かくて優しい。

記憶を少しずつ取り戻した、今なら分かる。

俺はお前を救えなかった。
あの時こうしていれば、ああしていればと後悔だけが募る。

何度も夢に見る。
お前と再び背中を合わせて戦う夢。
俺は、楽しんでた。
お前に背中を預け、また預けられながら共に戦うことが快感だった。


『…ああ、これだ。
守り守られる感覚、これが…!』


けれど俺たちは互いに銃を向ける。
あの時の俺もお前も、もうここにはいない。


『…俺はもう、お前とは歩かない』
『…そうか。
俺の隣であんなに目を輝かせていた雛はもういないんだね』


そう言うと、銃を撃ち互いを傷つけ合う。
俺もお前も満身創痍、お前を追い詰めた俺は堪らなくなってお前に近寄る。
そんな俺に、お前は決まってこう言う。


『…俺はお前に殺されたい』


俺は震える手でお前の頭に銃を向ける。
それでも引き金をどうしても引くことが出来ない。


『…出来ない、俺には出来ないよ…』


あいつだけに見せた、弱い俺。
こんな口調、今じゃ絶対しないのに。


『…雛』


一言そう呼んで、俺を抱きしめ自らの胸に銃口を当てる。
そしてすぐに銃声が響き倒れる。
慌てて支えても、殆ど力は無かった。
泣きながら何度呼んでも、力は戻らない。


『…雛、お前の理想の世界…俺に見せてくれ』


あいつが作りたかった、人々を正しく導く理想の世界。
俺が作りたい、手を取り合い助け合う理想の世界。
全く同じではない理想。
それでも何とか頷くと、満足そうな顔で…俺の腕の中でこと切れる。

俺はその身体を抱きしめて泣き続ける。

俺はかつてのメサイアを殺した。
確かにメサイアだった人を。

今のメサイアは、


『貴方が僕を人間にした、なのに貴方が人形になってどうする?!』


といつだか俺に怒鳴った。
ただ縛られるだけの関係は、メサイアの絆じゃないと。
それでも俺は絆があったと…今でも信じてる。

全く同じ形の絆は存在しない。
俺たちは俺たちの絆を作ればいい、今ならはっきりと言えるだろう。
お前と一緒なら-



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