Messiah

嘉禄(かろく)

意思と遺志



僕は、肘をついてとある人を見ていた。
僕の視線の先には、置いていったメサイア。
僕は霊体が見えたけど、こいつには見えないみたい。
隣に、いやすぐ傍にいつもいるのに。
いや、本当はすぐ輪廻に加わるつもりだったよ?
でも今のお前見たら無理だって。


『…なんて、聞こえてないんだけどねぇ』


傍に腰掛けて沈みゆく夕日を眺める。
生きていなくても、美しい世界を見ることは出来る。
例えお前には僕が見えなくても。

何故僕が何も言わずにいなくなったのか。
そんなの決まってる、僕は神様なんかじゃないからだ。
こうでもしないと、チャーチを…お前を守れなかった。
これが、僕が考えた…僕が死んでもお前を守ることが出来る、唯一の方法だ。


『別に怒る気は無いよ、メサイアを受け入れなくてもね。
死ななければそれでいい、でもお前も人間だ…いつかは死ぬ、僕と同じように。
だから僕はお前に少しでも長く生きて欲しくて力を与えた。
メサイアを受け入れないというならそれは、生きることも否むことだと僕は思うけどね。
馬鹿だとか僕にお前がかけた命を無駄にしたとかは、そう思うなら思えばいいんじゃない?
それで死んで、僕がした事を無駄にしてこっちに来るのも意趣返しだと思うよ。
好きに使えばいいんじゃない?
でもその時には僕はもう空にはいないと思うよ』


この伝えたいような独り言も、虚しく砂漠の風に流されていく。

これからお前がどうなっていくのか、僕が与えた力で見えているかどうかは僕にはもう知る由もない。
僕の死を無駄にするな、とは言わない。
僕がしたくてしたことだ、お前も好きにするといいよ。


『…僕如きが指図するなんて高慢だからね、もうそんなことはしない』


お前の意思と僕の遺志、それは決して交わることの無いものだと知っているから-



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