Messiah

嘉禄(かろく)

The only warmth



-声が聞こえる
俺を、呼ぶ声がする
この酷く寒い、暗闇から俺を引き上げる声が


『…!…つ!!!』


誰かに抱きしめられている。
とても暖かい、落ち着く体温。
俺はこれを覚えている。
つい擦り寄ると、また声が聞こえた。


「雪…?」


より鮮明に耳に届く。
少し高いが、落ち着く声。
何度も隣で聞いた声。
なんとか答えたくて、開こうとしない重い瞼と唇を開こうとする。
けれど身体は思うようには動いてくれない。

そんな中、声が聞こえ続けている。


「…したの、-くん?」
「…今、動いたんです」
「…有り得ないわ、ドクター10が二度とその身体では動けないって」
「でも、動いたんです!」


…二度と動けない?
…俺は自分の状態が分からない、でもんなのくそくらえだ。
声が誰なのか、俺が誰なのかもはっきりしない。
それでも、俺は答えなければならないと何故か強く思っていた。

動け、動け…!

そう強く願っていると、どこかを動かせた感覚が微かにあった。
続いて光が飛び込んでくる。
恐らく目の前には、ただ白い光があった。


「目が開いた、雪が起きた…!」


さっきより鮮明に聞こえる声。
その声は、震えていると俺は思った。
何も見えない、それでも自然とやるべき事は分かっていた。

声を探ってその方を向く。
そこには俺を抱きしめる、誰かがいた。


「…あ、ったか…い」


誰かの声が聞こえた。
それが俺自身の声だと分かるのにそう時間はいらなかった。


「よ、かった…よかった、雪…!」


俺の頬を何かが伝う。
それすらも暖かく感じた。

生きている、生きるとは…こんなにも嬉しいことなんだと…思い出した。
お前のことも、俺の事も…全て思い出したら、今度は俺がお前の名前を呼ぼう。

お前が必死に呼んでくれたように-



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