Messiah
滴る血は藤のように
「…いやぁ、殺し甲斐がない」
そう呟いて青年は血の海に濡れることも厭わず腰を下ろし、積み上がる死体を見つめる。
「これだけ集めても、骨のあるやつはいなかった…ここも駄目か、また新しいとこ探さなくちゃ」
殺しをした後とは思えないほどの軽い、淡白な口調。
淡白、つまりそこに込められる感情は無い。
彼の中にあるのは、どれだけ殺しを楽しめるかだけ。
返り血を浴び、その両手にある刃物諸共赤く染まった彼はしかし美しかった。
まるで血を啜って生き永らえる吸血鬼のように。
すると、彼の背後の暗闇から鴉が現れた。
「手にかけた者の滴る血が藤のようであることから、通り名がRed wisteriaとは風流ね」
「そうだろう?今日の僕はついている、かの人間シュレッダーと相見えるとは」
彼は純粋な笑みを浮かべて立ち上がり、鴉と向かい合う。
その目には、殺せる相手を見つけた喜びが溢れていた。
「ねえ、僕と殺しあってくれよ」
「残念ながら、私は君を殺しに来たわけじゃないのよ。
でも、私についてくればいくらでも殺せる相手を提供出来るわよ」
「本当かい?じゃあついて行こう、行先は?」
「警視庁警備局五係」
「チャーチか、僕には打って付けの場所だ!」
二人がいる空間に月明かりが射し込み、彼の榛色の目が輝いた。
こうして、伊集院藤はチャーチの一員になったのである-
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