Messiah

嘉禄(かろく)

The person with a cherry tree



その人の出現は突然だった。
白い、薄手の服は風になびいて太陽に輝く。


「…貴方は、誰?」


チャーチの庭の桜の木に乗るその人は、僕の問いかけに振り向いた。


「…やあ、前谷尋」


白い肌に薄い唇、折れそうなほど細い四肢に鈴を転がしたような清らかな声。
その人は何故か素足で、人間ではないような雰囲気だった。
一際強い風が吹き、片目を閉じつつ腕で庇うと季節でもないのに桜の花吹雪が見えた。
その中で、その人は桜の木からふわっと降りてきた。
まるで重力がないみたいに。

風が止み、桜の花吹雪は消える。
白い少し長めの髪を舞わせて、その人は微笑んだ-


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