Messiah

嘉禄(かろく)

Heart of a broken piece



最近になって、気づいたことがある。
いや、見て見ぬ振りをしていただけかもしれない。
分かろうとする意味を感じなかったからかもしれない。
彼の世話係を任じられて一年経つ。
藤瀬結月のいない日は、多くの時間を傍で過ごした。
調子のいい日は他愛ない話を聞き、動けない日は食事等必要なものを運び時には手ずから食べさせることもした。
その過程で気づいた、心の一部が騒ぐことに。
いつでも俺の中の誰かが問いかけてくる。


『大切なことを、人を忘れてないかい?
記憶を消されたことに甘んじて、これでいいと思っていないか?
相手がどんな事を思って君の世話を受けているか分かるかい?
きちんと向き合い、顔を見てあげたかい?』


大切なこと、人?
俺は鴉、大切などとは無縁。
一人で生き、一人で死ぬ。
記憶を取り戻すことに意味は感じない。
消されるべくして消されたことは、何も知らなくても感じ取れた。
ならば逆らうことは無い。
俺が共にいる時間はごく僅か、向き合う意味は無い。

そう思っているのに、心は問いかけを止めない。


-お前は誰だ
   俺の中にいる、お前は



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