Messiah

嘉禄(かろく)

A shadow and shadow



声が聞こえる。
初めてではない、幾度も私の中から問いかけてきた声。


『俺はお前の一部だ、なのにどうして消そうとする?』
『消したい訳ではありません。
ただ、貴方を受け入れるだけです…一部なのですから、私の中に戻っても構わないのでは?』


問いを返すと、もう一人の私は明らかに怒ったようだった。
気配が変わる。
苛烈で、燃え盛る炎のように。


『お前の中に戻るということは、俺の意思は消えるんだぞ!
お前の中の過激な部分、それが俺だ!
戻ったって、お前が持て余して苦しむのは変わらない!』
『だったら!
…だったら、私は尚更貴方を受け入れる。
貴方を受け入れて、認めて…前に進む。
だから、戻ってきてください』


それを聞いたもう一人の私は、深く溜息をつくと私に近づいた。


『…後悔しても知らないからな?
きっと、お前はもう一度俺を呼ぶ』
『…そうならないように気をつけますよ』


近づいた彼を抱きしめると、彼は私に体を預けた。
そのまま私の腕の中で消えた…いや、戻ってきた彼に私は声をかけた。


『…おかえりなさい。
これからは、辛いことも私が引き受けます』


-声が聞こえる
    私を必死に呼ぶ、ともすれば泣きそうな声が。


「…おり、伊織!
起きて、伊織!」


…衛?
どうしてそんな声なんですか?


「…泣かないで、ください…衛…」
「伊織…?伊織!」


目を開けると、泣いている衛がいた。
奥に百瀬さんがいて、誰かに連絡しているようだ。
私は何があったのか分からず、目を白黒させた。


「…何があったんですか、どうして泣いているんですか…?」
「…覚えてないの?
伊織、ずっと寝たままだったんだよ?」
「…ずっと?」
「何ヶ月も…突然のことで何が起きたのか分からなくて、ドクターたちも原因不明でお手上げで…」
「…そう、だったんですね…私は、彼と一つに戻ったんです」
「…もう一人の伊織?」


衛の問いかけに私は軽く頷いた。
すると、衛は微かに笑って私の頭を撫でた。

数ヶ月眠っていたという私の体はかなり衰弱していて、戻るのに時間がかかったがなんとか戻せた。

そして、来るべき日が来た。


「おめでとう、卒業です」


私は衛と歩む。
これから先も、ずっと-



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