Messiah

嘉禄(かろく)

今宵 月が見えずとも



─今宵 月は君に抱かれて


幸樹が人工知能になったことを知り、俺がチャーチに戻る決意をしてから数ヶ月後…肉体を元通り自在に動かせるようになった幸樹の元に俺は赴いた。

百瀬多々良から、部屋にいると聞いている。
ドアの前で立ち止まり、深呼吸をした。
この向こうに、メサイアがいる。

俺達は、任務の時でもそうでない時もずっと一緒だった。
人工知能になった幸樹は、どんな場所でも現れて俺を助けてくれた。
それでも実際に会いたくて、触れて抱きしめたくて…やっとそれが叶う時が来た。

息を吐き切ってからドアを開ける。
そこには、落ち着く見慣れた姿があった。
音に気づいたのかこっちを振り向く。


「…結月、おかえり!」
「…ただいま、幸樹」


いつものようにおかえり、と言って俺を抱きしめる。
俺も抱きしめ返す。
やっと、温もりを感じることが出来た。


「六十三日ぶりだね、でも任務中も休暇中も一緒だったからそんな感じしないかな」
「…そんなことない、確かに一緒だったけど触れられるのは特別だ」
「…そっか」


俺の返答を聞いて微笑んだ幸樹は、しかしすぐに表情を曇らせる。


「もう、体格あんまり変わってないじゃん。
ちゃんと食べて休んでって言ったよね?
僕がネクロマンサーに定着してるのを知らなかった間はまだ仕方ないとするよ?
その時だって見たらびっくりしたけど…痩せてて暗い目してて返り血塗れで…でもさ、元に戻る努力してって言ったじゃん」
「…ごめん」


幸樹の長い説教に対して、俺はその短い言葉しか返せなかった。
幸樹がいてくれて落ち着くのは、心強いのは事実だ。
…だけれど、それでも心の一部が晴れないのはこの背に背負う罪と咎のせいだ。

この背に受けた痛みは、永遠に忘れてはならない…そして忘れない、消えないもの。
俺が犯した罪の象徴。
その存在を、幸樹は知っているだろう…今や、知らないものなど有りはしないだろうから。
それでも何も言ってこないのは、受け止めてくれているからだろうか?

…いや、そう思うのは都合が良すぎるか。
幸樹を俺は傷つけたのだから。

俺が何を考えているのかを悟ったのか、幸樹は再び抱きしめてくれた。


…二度と失わない、俺が守る命。
この先どんな事があっても、どこにいてもお前は来てくれる。
背中を合わせて戦える。

─それが、俺たちメサイアの形なんだ



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