Messiah

嘉禄(かろく)

The mask which came off



私は鏡を見ていつも思う。
顔を変えたくて、見たくなくて…仮面のようにつけたこの眼鏡は、もういらないのではないかと。

これがあるからあの男に見えてしまうのではないか?
これがあるから逃げのように感じるのではないか?

─これのせいで変われないのか

外してみると世界がぼやける。
顔が見えない代わりに、何も見えない。
守るべきメサイアの顔も。


「…これではいけないな…」


それから数日後、私はコンタクトに変えた。
誰かに会う度に驚かれた。


『伊織くん、眼鏡…いいじゃない、私はそっちも好きよ』
『へえ、イメチェン?
いいんじゃないか』


百瀬係長代理と雛森さんは同じことを言っていた、流石同期だ。


『草薙くんコンタクトにしたの?
へー、いいじゃん!前よりいいと思う、ねーエレン』
『うん、前よりなんか吹っ切ったって感じする!明るくなった!』
『…それ、暗に前暗かったって言ってるようなもんだからね』
『あ、わりーな先輩!』


…神代さんと松原くんは相変わらず賑やかだ、言葉が何乗にもなって返ってきた。

衛はというと、そこまで気にしていない様子だった。


『伊織、眼鏡無くしたの?
…外してコンタクトにした?
そうなんだ…』


これで終わりだった。
まあ、特に感想は求めていないので問題ない。
チャーチにいる人達が例外なだけなのだ。

改めて鏡を見る。
そこには私がいる。
仮面をつけていない、逃げていない私。
…一嶋晴海ではない私。


「…これが私…草薙伊織の顔か…
私はいつか、貴方に近くなるのでしょうか…もう一人の私」


そう呟いて鏡に背を向けた。
鏡の向こうの私が私を見ていることには気づかずに─


─ずっと、窮屈だと思っていた。

顔を変えるための眼鏡かめん
固い口調
不器用なその振る舞い

全てが窮屈だ。
…なあ、もう一人の俺。
油断すんなよ、じゃないと俺が─


『奪っちまうからな』



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