Messiah

嘉禄(かろく)

HINA in the mirror



全ての傷がやっと完治し、まともに動けるようになって部屋に戻された頃。

俺は鏡の前に立っていた。


「…見るからに増えたな、傷痕。
流石に無茶したからな、見られないようにしねーと」


上の服を脱いで傷痕を確認すると、そこら中にあった。
白い割に目立つから、見られたら驚かせることになる。


「一、二、三…数え切れねーな」


この身体に残る傷は、どれも深くて時には命に関わるものばかり。
死線を潜り抜けてきた百戦錬磨、と言えば聞こえはいい。
けど、サクラとしては如何に負傷を防ぐかが大事だから誇れない。

溜息をついて服を着ようと手に取ると、運悪くドアが開いた。
勿論入ってきたのはメサイア。


「ただいま、疲れた…雪、それ…まさかだけど、今回の…?」
「…見せたくなかったんだけどな。
今回のだけじゃねーよ、過去のも残ってる。
そう簡単には消えねーよ」


目に入るのは、俺を死に至らしめる傷痕ばかりだろう。

さっと服を着ると、後ろから抱きしめられた。


「…悪い、思い出させたか」
「…うん…」
「大丈夫だ、俺は生きてる」
「うん…」


それから暫く、尋は俺から離れなかった。
…百瀬にもどやされて、二度と見せないように気をつけようと誓った。



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