Messiah

嘉禄(かろく)

A.I and former A.I



雪斗に呼び出されてチャーチに飛んで、一件落着して休んでいた時のこと。
突然俺の端末が震え、見ると番号が表示されていなかった上に何故か通話中になっている。
不審に思ったところで声が聞こえた。


『…結城怜、だよね』
「…誰だ」
『ネクロマンサー…の中の、悠里淮斗』
「…ああ、自らネクロマンサーと一つになることを望んだ白崎護のメサイア。
そのお前が俺に何か?」


問いかけると、悠里淮斗は単刀直入に切り込んできた。


『僕みたいな人工知能は世界にごまんといる。
貴方もその一人だった…弟さんいたよね、置いていった時の気分はどうだった?』
「…そうだな…」


捉え方によっては挑発とも思える言葉。
それでも、俺はそうとは思わなかった。
人工知能と一体化しても悠里淮斗が残っている証拠だ、同調を求めている。


「…悔しかった、かな。
俺は望んで組み込まれた訳ではなかった、脳を取り出されて身体は燃やされた。
戻りたくても戻れなかった…こんな俺が兄だなんて、本当は知らせたくなかった。
黒い球体の中に俺がいる、それ自体が兄だなんて」
『…身体が欲しいと思った?』


少し縋るようにも聞こえる、弱くなった口調に俺は頷いた。
何故こんなに初対面のやつと話せるか、なんて決まっていた。
俺の方も同調者を求めていたようだ、無自覚にどこかで。


「…思った。
映像で現れることが出来るとはいえ、触れるふりしか出来ない。
実際には透けて通り抜けてしまう…弟が、俺はあの中にいると理解した時…あの冷たい球体に抱きついたんだ、お兄ちゃんと呼んで。
…それが悲しかったし、また悔しかった。」
『…そっか。
皆思うことは同じなんだね…僕は、せめて手が欲しいなぁ』


俺はその呟きに微笑んだ。
笑うと思っていなかったのか、驚いた気配が伝わってくる。
きっと、他のやつなら気づかないレベルの小さな反応だ。
元人工知能故に伝わったのかもしれない。


「…人の器が欲しいか、出来ないことも無いぞ」
『…ううん、いいんだ。
身体が無いといつでも護のところに飛べるから。それに僕には一応動かせる身体あるし』
「あのテディベアか」
『そうだよ。
…話、聞かせてくれてありがとう。
気が向いたらまた来るね…その時はよろしく』


一方的にそう言うと通話は切れた。
けれど悪い気分はせず、肩を竦めて歩き出した─



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